皆さま、こんにちは!らぶばなです。アッシュのタイムワープ話の続きです。英二の天然ぶりが相当ひどいです(笑)
〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜
「俺が叶えたかった望み」
第五話:英二の恋愛事情
白い湯気と共に香辛料の香りが俺の部屋に漂っている。
俺は英二に案内されたスーパーで買ったインスタントラーメンが出来上がった。これはアメリカでも売っている某有名メーカーの商品で、現実の英二が好きなものだ。
今日も夕食を食べに来ないかと英二に誘われたが、連日だと迷惑だろうし今日の出来事にかなり動揺していたので頭を整理したくて断った。
ズズっと音をたてて麺をすする動作は現実の英二から教えてもらった。”こう食べた方が美味い”と言うものだから、いつの間にか俺も麺をすすれるようになっていた。
このラーメンの味は俺も好きなのに、残念ながら今日は味があまりしない。それは俺の心理状況が原因なのだが。
「。。。ふぅ、もういいや」
俺は割り箸を麺に刺したまま、テーブルに置いた。
「。。。。。」
なぜか泣きたいような、心細い気持ちでいっぱいだった。
(なんだよ、英二。。。彼女がいただなんて聞いていないぞ。。。)
英二に元カノがいたという衝撃の事実に、俺は勝手に傷つき落ちこんでいた。そして自分の浅はかさに自己嫌悪した。
「。。。はぁー」
長く深いため息をついた。もう何回目だろうか。俺はどこかで英二は恋愛に疎いと思い込んでいたのだ。それはあいつがとってもシャイで、俺の仲間達が際どい雑誌を見ていても顔を真っ赤にしてそっぽを向くようなやつだからだ。
だが、今日のリホの態度をみて、クラスの女子の英二への反応をみて何となくわかった。
”英二は意外とモテる”
物腰が柔らかく、可愛らしい顔をしている。それに陸上部の期待の星とくればリホのように応援したくなるものだ。リホ以外にも英二をチラチラと見ている女子生徒が何人もいたのだ。
分からないのは英二の気持ちだ。リホへの態度が不自然だった。それは別れたことへの後悔なのか気まずさからなのか、それとも未練があるのだろうか。。。
気がつけば、抱えていたクッションが押しつぶされそうになっていた。
「いや、元カノがいたっていいじゃないか。普通だろ?それに俺がどうこう言う問題じゃない。。。」
ガールフレンドという固定枠は設けなかったものの、経験だけは無駄に積んできた身だ。英二がまともな恋愛をしたことがあるのなら良いことだ。
子供っぽい独占欲から嫉妬するだなんてあってはならないことだ。しかも過去のことだ。
(だけどもしまた付き合ったら?新しい彼女ができたら?)
今は隣人で同じクラスメイトということで仲良くしてくれているが、彼女ができれば俺との時間は減るだろう。そう思うと何とも言えないほどもどかしく、心が暗くなっていく。
ーコンコンー
再び俺の窓から音がして、俺はハッと窓辺にかけよった。
「英二! なんだよ、もう22時だぜ?」
「電気ついてるからまだ起きてるかなって。。。ごめん、もう寝るところだった?」
「いや、まだ眠くない」
英二は鼻をクンクン嗅いだ。
「良い匂いするなぁー僕もラーメン食べたくなってきたよ」
「こんな時間に食うと豚になるぜ。陸上部のエースさん」
「エースかどうかは分からないけど、確かに次の日に影響がでそうだね」
「どうしたんだよ?」
「ん?ちょっとどうしているかなって。。。すぐそばにいるんだなって思うと話しかけたくなっちゃって。迷惑だったらやめるよ」
「いや、それは構わないんだ。別に用事がなくたって。。。誰かと話したい気持ちの時もあるだろう?」
そして今の俺にとって、その相手は英二だった。
「アッシュ、今日はちょっと元気なかったね。みんなに質問攻めにあうから疲れたのかい?」
「。。。。」
前から思ったことだが、英二は天然そうに見えて人の機微に敏感だ。俺にはもちろん、友人たちにも細かい配慮をしながら人の気持ちに寄り添ってくれるのだ。その優しさが伝わるからこそ、英二の人気は男女ともに高い。
だからといって決して優しいだけの優男ではない。棒高跳びに関してはストイックで練習を欠かさず、試合では優勝を狙っている。
”大和魂をみせてやる”と言っていた現実の英二のセリフが懐かしく思い出された。あの時、俺とスキップを助けるために水道管を手に命がけで壁を飛んだ英二はまさに立派な漢(おとこ)だった。
「なぁ、英二。おまえ、リホと付き合っていたのか?」
英二はギョッとして困ったように顔をくしゃくしゃにして笑った。
「困ったなぁ。。。クラスの女子が君に余計なことを話したんだね?」
俺はドキドキしながら英二をまっすぐに見て聞いた。
「今も好きなのか?」
「えっと。。。なんて言ったらいいかな。。。皆なぜかそう思っているんだよね。。。」
ポリポリと頭を掻きながら英二は眉を八の字に下げた。
「どうみても、リホはおまえのことが好きだろう!?」
「リホちゃんは優しい子だから、僕のことを放っておけないだけだよ。僕が一年の時、同じ塾に通っていて、よく勉強を教えてもらっていたんだ。今は陸上に専念したいからもう塾は辞めちゃったんだけどね」
「おまえの気持ちはどうなんだ?」
「僕?うーん、よく分からないよ。だって僕、陸上に忙しくて。。。そんな風に考えたことがないから。。。」
英二の言葉を聞いて俺は心底安堵した。これで今夜はぐっすりと眠れる。だがまだ心配は尽きない。
(ひょっとしてリホの片思いなのか。その割に元カノ感を出していた気がするが。。。)
「おまえ、思わせぶりな態度とっちまったんじゃねぇの?断れずに相手のペースに巻き込まれたから変な噂が流れたんだろう?」
額から妙な汗を流しながら、英二は固まった。
「僕、本当にそういうの疎くて。。。。去年、リホちゃんがとつぜん”付き合ってくれる?”と聞いてきたんだ」
「ほら、やっぱり告白されたんじゃないか」
「部活の後だったからとにかく眠くて、ちゃんと聞いていなかったんだよ。リホちゃんがどこかに行きたいとか話してたから、そこに一緒に行けばいいのかなと思って”うん”って答えたんだ」
「。。。。は?」
俺は英二の言葉に絶句した。お気楽天然野郎だとは思っていたが、これほどまでにひどいとは思っていなかった。
「おいおい、相手は勘違いしちまっただろう?」
「うん。。。どこに行くのかと思ったら地元の遊園地でさ。それをクラスメイトに見られたからすっかり誤解されちゃって。変な噂たてられてリホちゃんに悪かったなーって思ってる」
「相手はその噂に喜んだんじゃねぇの?ライバルが減るから」
「何言ってるんだよ、リホちゃんが僕を好きだなんてあり得ないよ。あはは。その後、大事な試合が控えてたからずーっと朝から晩までトレーニングしていたんだ。そしたら、ある日リホちゃんが泣きそうな顔で ”もういいわ、終わりよ!” って言うんだよ。。。」
「あーぁ。。。」
(放ったらかしにされてプライドが傷ついたんだろうな。。。思わず別れの言葉を告げちまったってところか。。。)
「それで僕、もうリホちゃんの行きたい場所に付き合わなくても良いんだってわかったから余計に部活に専念できたよ。お陰でその時は優勝できた。」
「。。。。。」
(ヤバイ。。。すごくズレてるぞ。。。こいつ。。。)
いつの間にか押し切られて付き合うカタチになり、棒高跳びに夢中になっているうちに、呆れられて一方的に振られたカタチになった英二のことを哀れに思うべきか、自業自得だと思うべきか判断の難しいところだった。
ただの天然では済まされないレベルの英二に当分恋愛は難しいだろう。気兼ねなく付き合える男友達の方が良いはずだ。
少々リホに同情しながらも、きっとまだ英二を諦めていないであろう彼女にどう対策をとるべきかアッシュは考えていた。
*続*
お読みいただきありがとうございました。 自分の知らないところで勝手に付き合ったことになって勝手に振られたことになっている英二です(涙)この話のアッシュの英二への気持ちは恋愛よりは独占欲に近いかな。。。とにかく英二に甘えたいアッシュです。
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