三連休の最終日となった小春日和の昼下がり、

黄土色の岩を踏みしめながら絶景を堪能します。
六甲山にはロックガーデンと呼ばれる人気の登山コースがあります。
個性的な形をした岩をよじ登っていくと、
山の中腹にある風吹岩に到達します。
ここは天然の展望台と言ったようなポイントで、
神戸から大阪までを一望できるのです。

そのような空想を、家のベランダでしていました。
ただ空想と言ってもまったくの想像ではありません。
双眼鏡で風吹岩を眺めながらの空想です。
実物を視界に入れ、天候も同じなかでの空想は、
もはや実際に山を登ったと言っても過言ではありません。
風も程よく感じますから、その辺のVRより余程に精度は高いでしょう。

山登りをモチーフにした小説を読み終わり、
無性に山登りがしたくなりました。
ネットで調べてみると、
目の前にある六甲山は初心者でも山登りを楽しめる、と紹介されています。
しかしながら僕は山登りに関して素人です。
「そこに山があるから」と言っても、簡単には登れるはずもありません。

そこで代替案として、双眼鏡を使う方法を思いつきました。
六甲山登山のポイントとして紹介されている場所は、
双眼鏡を覗けばベランダからハッキリと見えるのです。
やる前は“余計に生きたくなるのでは?”と危惧しましたが、
まったくの杞憂でした。
双眼鏡を覗きながら空想するくらいで充分満足することができたのです。
所詮はそれくらいの熱量だったのかもしれません。


山との間にあるマンションから怪しまれないうちに、早々と“下山”しました。