ミッドサマー | 毎日がメメント・モリ

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ホラー映画メインですが、ほとんどの映画は美味しく拝見いたしております。
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やっと来ましたー!!劇場へ観に行こうと思ってたらコロナで休館、明けてからのは期間が短過ぎて行けなくて、レンタル予約してもなかなか来なくて、いやー、新作でこんなになかなか観れなかったのは初めてかも。

 

で、観ましたよ。まあね、よくもまあこんな気持ち悪い映画撮ったわねと言うのが一番の感想。前作の「ヘレディタリー」は嫌な映画だと思った、今回のは気持ち悪い。怖いと言うよりも嫌とか気持ち悪いとかの方が先に来る感じでね、この人の映画。だけど「じゃあ、観なかったらいいんじゃない?」とはよく言いますが、そう言うのともまた違うんですよね。例えばグロいからとか痛そうだからとか犬が死ぬからとか観たくない理由って色々あると思うんだけど、そんな表に出て来るモノじゃなくて、もっと深い所にある「嫌」とか「気持ち悪い」に訴えかけて来る感じ。多分、アリ・アスターは嫌がらせの天才だ。

 

 

またこう言う絵面だけ観てると全然そんな感じに観えないのが余計に気持ち悪い。物語は、精神疾患のあるダニーと彼氏クリスチャン、その友人のマーク、ジョシュがスウェーデンからの留学生ペレに誘われてペレの故郷ホルガの夏至祭を訪れるんですが、一見豊かな大自然の中で行われる牧歌的な美しいお祭りが実はとんでもない一種のぺイガニズム的な祝祭イベントだったと言う話です。

 

牧歌的に始まって、いきなりアッテストゥパン(スウェーデン語で絶壁、崖の意味)の儀式で度肝を抜かれるんですが、ここで「何で止めないんだ!」と大騒ぎをするサイモンは流石に賢いとは言い難い。まあ、ショックを受けるのはわかりますが。元々北欧には大昔、これに似た儀式と言うか習慣があった様です。つまり土着の習慣、風習を現代でも守っている村だったんですね。昔からずっとやってるんだからやってる方としては不思議でも何でも無いんでしょうが、流石に現代では受け入れ難いですよなあ。

 

でもってこのアッテストゥパンの主役がなんと御歳65歳のあのビョルン・アンドレセンなのでありまして、「ロード・オブ・ザ・リング」みたいなファンタジー映画に出て欲しいと思ってたらまさかのホラーw スウェーデン舞台だからか、何と言う人選。またね、その散々「美しい」と称賛された彼の顔をドカン!てやっちゃうとかね、なんて事すんだよアリ・アスター(褒めてる)

 

 

65歳にしてはちーと老けてますかね。

 

 

ダニーの妹も同様に精神疾患があり、冒頭で両親を道連れに自殺してしまうんですね、その時のダニーとクリスチャンのやり取りからダニーは強い依存症である事、クリスチャンはそれを重荷に感じていて別れたいけどなかなか切り出せないでいる、と言うのがわかります。スウェーデンに行くのでもクリスチャンは進んでダニーを誘ったわけではありませんでした。そしてダニーもまたそれを薄々感じてはいるんですが、何せ彼女は一人では生きて行けないタイプなんです、誰かに何かに精神的に依存していないといけない。

 

 

 

そして外部から訪れた若者が一人、また一人と姿を消して行きます。これがまた、過剰な演出は無いものの「血のワシ」だの「スキン・ザ・フール(愚か者の皮剥ぎ)」だの生贄だの如何にも土着にはアリアリな要素が出て来るんですけど、これも描き方としてはかなりアッサリしてます。多分、それ自体を見せたいだけなんじゃ無いんだろうなあと言うのはその辺りから読み取れます。

 

村の神官を担っているのは、近親婚で故意に障害者としてつくられたルビン。障害のある者が神に仕える者として選ばれる、もしくは神として崇められると言うのはこれもキリスト教以前の話にはちょくちょく出て来るもので、すぐ思いつくものとしては「サテリコン」のアルビノの少年ですかね。彼は、村人にとって聖書の様な書物「ルビー・ラダー」を書き、またヘンリー・ダーガーの絵の様なフォークロアでイノセントな壁画も村中に描いています。

 

 

 

私が思うに、このホルガの村は村人一人一人が細胞である一つの人体の様な感じで個々は無いんじゃないかと。だから村人は必ず72歳になると生涯を終え、その後産まれて来た子供に亡くなった者の名前をつける、悲しみも快楽も痛みも共有する、泣き崩れるダニーに共鳴した村の女性たちが彼女と一緒に号泣する(もちろん真似でしょうが)、村の処女マヤと交わる儀式に参加させられたクリスチャン、この2人の周りを裸の女性たちが取り囲み一緒に声を荒げる、ありとあらゆる事の共有。

 

 

 

 もう無理っすー滝汗

 

 

 

 

 

お願いだから私を一人にしてー!!w

 

だから今年のメイ・クイーンに選ばれ、祝福され、権利を与えられたダニーは新たな依存先を見つけたと感じ、不安定なクリスチャンとの関係に終止符を打つ決心がついたんじゃないでしょうかね?

 

 

 

 

抜ける様な青空の元でギリギリと万力に締め付けられる様な感じのする映画でした。

失恋したからってこんな映画撮らないで欲しい。

 

 

 

因みに似た題材の映画で「ウィッカーマン」と言うのがありますが、これは胡散臭さ満載のクリストファー・リー御大の女装に全部持って行かれた映画でした。

 

 

 

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アリ・アスター監督作品

 

ダニー・アーダー:フローレンス・ピュー

クリスチャン・ヒューズ:ジャック・レイナー

ジョシュ:ウィリアム・ジャクソン・ハーパー

マーク:ウィル・ポールター

ペレ:ヴィルヘルム・ブロングレン

サイモン:アーチー・マデクウィ

コニー:エローラ・トルキア

ダン:ビョルン・アンドレセン


†††2019年 アメリカ・スウェーデン
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