明日124()より、Gallery Seekにて1年ぶりの個展を開催される森下麻子先生。

お話をお聞きしました!

 

今回の個展のテーマを教えてください。

"ささめごと"

「ひそひそと話す声のこと」です。小さな動物たちの話声や独り言をイメージしています。

動物たちのそれぞれの物語を想像し、彼らが約束の場所に向かう場面や、お気に入りの物たちに囲まれている場面を描いています。

また、小動物の小さな世界を表現するために、より細かく繊細なモチーフと組み合わせ、動物の世界に引き込まれるような作品を目指しました。

-以前のインタビューで制作のコンセプトについて、「小作品では小さな生き物たちをテーマに彼らの愛らしさと、凛とした命の美しさを私なりの視点で表現しています」とお聞きしました。

「愛らしさ」と「凛とした命の美しさ」はどのような工夫(またはこだわり)をすることで表現しているのでしょうか。

細かなこだわりですが、動物の表情や仕草には愛らしさを込めています。

命の美しさは「つややかさ」だと思っておりますので、瞳の潤いを瞳孔に光を入れる事で表現したり、毛並みを実物よりほんの少し整然と描くことで美しさを強調したいと思っております。

 

-動物そのものにも興味があるとのことですが、森下先生がこれまで観察してきたからこそ

知っている動物の特徴はございますか?

私だけが知っている特徴ではありませんが、動物の個体差はいつ見ても面白く感じます。

リスでしたら、耳がかじられていたり、しっぽが短くなっていたりしますが、これは彼らの生きてきた歴史の象徴です。

猫の耳やしっぽも同様で、傷の入り方で性格の特徴が読み取れたりと、興味が尽きません。

スズメは顔つきにバラつきがあるように感じます。

面長、丸顔などそれぞれ違っていて、そういった所から彼らの内面を垣間見れたような嬉しい気持ちになります。

絵のテーマに沿わなければ個体差を表現することはありませんが、顔つきに関しては私なりにこだわりがあります。

面長な顔の子には、凛とした表情をとってもらい、幼い顔つきの子には愛らしい表情をとってもらいます。

群像の動物の絵をご覧いただき、顔の特徴を楽しんで頂きたいです。

 

-森下先生の作品は様々な動物が登場しますが、動物の種類によって描く時の意識の違いなどはあるのでしょうか。

動物たちをモチーフの一部として扱うのではなく、愛情込めて表現したいと思っております。

特に意識分けをしているわけではないのですが、作品を描く上で“小さいもの”の価値観を大切にしたいと

思っていて、木の実や枝なんかを持っている様子を表現するのに、リスや鳥が自然と多く、描くようになりました。

 

リスは元々ビジュアルがとても好きなのですが、手がとても小さいので、そんな手で一生懸命木の実をつかんで食べたり木に登ったりしている様子を見ると愛らしさを感じます。

例えば、今回の出品作「冬支度」も三匹のシマリスの表情に変化を付けました。

一匹ずつの性格を想像しながら鑑賞して頂けたらと思います。


森下麻子M6冬支度-min
「冬支度」M6 

秋のリスは冬の為に沢山食べ物を蓄えたり、大変神経質です。

松ぼっくりを拾って煮沸して乾燥させたら、綺麗な松ぼっくり
になります。

松ぼっくりを中心に冬支度の準備のお手伝いをした場面です。

 

鳥も個体差がありますが、体が小さいと手足も柔らかいんです
よね。
そういった部分も表現できたらと思っています。

 

また、普段人間が動物や自然から受けている恩恵を恩返し
する意味合いで、
瓶や籠などの人工のモチーフをとり入れ「贈り物」をしたり、
廃墟に住まう
者たちを描いたりしています。

動物への感謝の気持ちや慈しみを一番大切にしています。


森下麻子F6おくりもの-min
「おくりもの」F6 

-今回初めて挑戦された動物はいますか?

数回描いてはいますが、フクロウの作品を今回seekさんで初めて出品しています。

この子は静岡にある掛川花鳥園で取材したアメリカワシミミズクです。

フクロウは夜行性なので昼間は寝ている事が多いんですね。

でもこの時は片目をつぶって、ウィンクしているような可愛い瞬間を見ることが

できて。

動物のめずらしい表情に出会った時、自分にだけ見せてくれたような気持ちになり

描きたいなと思います。


森下麻子P8涼月の頃-min
「涼月の頃」P8

-制作過程を教えて下さい。

①「下図」

画用紙に鉛筆で下図を描き、薄い紙にコピーします。上からボールペンでなぞり、

転写します。

やはり下図に持っていくまでが大変な事が多いです。

例えばリスのポーズを変えたり、配置を入れ替えたりします。

お人形さんごっこをしているような感覚ですね。


制作過程1

② 「骨描き(こつがき)」 

転写した線を、墨と焦げ茶の混色で骨描きしていきます。

私の作品の場合、動物の毛や手足の細かい部分の描写を大切にしている為、

しっかりと描いていきます。

輪郭を残せないとぼんやりとした印象になってしまいます。

制作過程2

③胡粉で「毛描き」

ふわっとした毛の柔らかさ、色合いを出す為重要な作業です。

先ほどより立体感が出ました。

制作過程3 ④モチーフに岩絵の具で彩色。 制作過程4 ⑤全体にグラデーションを入れ、金泥で装飾して完成。 森下麻子M6冬支度-min

最近は、壁に飾ったらどんな感じだろうと意識的に考えて描くようになりました。

大作になると、大きな画面の中でいかに魅せ所を作るかが大切になってきます。

小品でもワンポイントで少し色をいれてみたりと、以前より変化した部分があります。

 

-今回の作品の中で、特に見てほしいという作品はありますか?

個人的に気に入っているのは「ふくふく」でしょうか。

全体の配色が爽やかにできました。

また、寒さでふくらんだスズメたちが体を寄せ合っている様子や、

顔の表情なども是非見て頂きたいです。

F4「ふくふく」-min
「ふくふく」F4

-今後挑戦していきたい事などはありますか?

コロナ前から行けていないので、スケッチに行きたいです。

動物がいる場所だけでなく、苔や木、廃墟も興味があり、面白いなと思っています。

何でもない、さり気ない場所を描きたいですね。

 

-最後に、個展を観に来て下さる皆様に一言お願いいたします。

小さな動物たちの声に耳を傾け、物語を自由に想像してみてください。

彼らを愛おしく大切に思う気持ちは、心癒されるものだと思います。

森下先生、ありがとうございました! 個展は12月4日(金)~12月13日(日)まで開催いたします。 この機会に是非ご覧くださいませ。
前回のインタビューはこちら↓ http://blog.livedoor.jp/soratobu_penguin/archives/9450714.html 「森下麻子 日本画展 -ささめごと-」 12月4日(金)~12月13日(日) 会場:Gallery Seek 出品作家:森下麻子 愛知県立芸術大学時代より動物画を描き続け、現在は日本美術院でも活動を続ける森下麻子。 身近な動物たちを繊細かつ、愛くるしいタッチで表現しています。 今回の個展のテーマは“ささめごと”。小さな動物たちの話声や独り言をイメージしています。 それぞれの物語を想像し、彼らが約束の場所に向かう場面や、お気に入りの物たちに囲まれて いる場面を描いています。 彼女がいつ見ても面白いと語る動物たちの個体差は、例えばリスだと耳がかじられていたり、 しっぽが短くなっています。 これは彼らの生きてきた歴史の象徴です。そういったところから内面を覗きこめたようで嬉 しくなるのだといいます。 動物たちへの感謝の気持ち、慈しみが込められた新作10余点を是非お楽しみくださいませ。