よく聴かれるのですが、

何が一番難しいですか、と。

 

私が難しいと思っている事は、

オーケストラには初心者マークが無い事。

でも仕事内容が同じなんですね。

大学を出たばかりのバイオリンTuttiと

40年働いているバイオリンTutti、

求められている仕事、譜面、全く同じです。

弾く所が少ないわけでもなく、

弾く曲が少ないわけでもなく、

間違えても許されるわけでもなく、

少しずつ慣れるという段階がありません。

 

絶対に無い過程を妄想してみましょう。

新人さんに向かって

「じゃぁ今週はまず、ここの一段を

 お客様の前で一緒に弾いてみようか」

一般の会社ならありそうじゃないですか?

 

かといって新人さんが「自分はまだまだ」

と思っているかというと、

おそらくそんな人は一人も居ない。笑。

私自身も13年前、自信満々の新人でした。

実力ではとても敵わない先輩方が多いけど、

オーディション受かったし私は私、みたいな。

子供の頃からアマオケで弾いてきた経験と、

大学や院、フリー時代の様々な経験を活かして

それなりに末席の仕事が出来ているつもり。

口ではどんなに謙虚でも新人とはそんなもの。

しかも私は謙虚でも無かったな…

当時20代の女性は私一人でチヤホヤされ、

黒歴史を思うと同僚達への感謝しか無いです。

なんかもう、すごく恥ずかしい。

オケの20代は多分皆忘れたい時代。

 

勿論、注意して貰うと有り難く受け取るし、

ハッと気付き善処する、他にも無いか考える、

皆良かれと思って懸命に努力していますが

何年も経って新人時代が黒歴史だと知る訳で。

本当に沢山の事を教えて頂きました、

それも自信を失わないよう、常に前向きに。

先輩方が暖かく見守ってくれていたので、

自分もそうしようと、守りたいと思うのです。

特に首席クラスの新人さんになると

期待が大きくて批判の的になったりもする、、

本当は慣れるまで見守って欲しいと思う、

でも。

舞台に立ってお客様の前に出る以上、

新人さんだから何かあっても許してね、

と堂々と言うわけにはいかないんですよね。

 

一般の会社で考えてみて下さい。

新卒が入社した4月、研修も無し、

年上のベテラン達を部下にして部長、

会議まとめて来週プレゼン行ってきてね!

仕事取れなかったらキミ、批判の的だよ!

・・えっと無理ゲー?ってなりませんか。

これが、オーケストラの新人さんだと、

優しい先輩方が軌道修正はしてくれるし、

会議の資料をまとめてくれて、お膳立て、

素晴らしいチームワークでまとまった、

プレゼンなんてした事ないけど

学校でやったスピーチ大会と同じよね、

得意だったしなんとかなるっしょ!

これくらいのメンタルが必要だと思います。

 

一番厳しい職業、コンサートマスター。

あの位置に座る人は大抵、

最初からコンサートマスターなんです。

2nd首席からコンマスになる人もいますが

Tuttiでオケの経験がある人はあまり無く、

オケをまとめるコンマスが新人さんだと

オーケストラの経験が最も浅いというわけで。

後ろのベテラン達から期待の眼差しを受け

バイオリンが上手ければ良いだけではなく

コンマスとしての仕事もする必要がある、

仲間の中にも厳しい人が少なからずいる、

お客様にも厳しい方々が沢山いらっしゃる、

そう、コンマスだから。

新人のコンマスって、一般で例えると、

22歳新卒で縁故無く常務取締役に就任とか、

そんな妄想も言い過ぎでは無いと思うのです、

そう考えると物凄く仕事が出来るでしょう?

 

某コンマスに聞いたことがあります。

最初に行ったオーケストラについて尋ねると

「あそこに居た時の自分は黒歴史しかない」

あー、コンマスもそう思ってるんだ、、、

と思って少し安堵。

 

プロのオーケストラに入る前に、

ユースオケや学生オケで弾いてるよね、

そこで経験積んでるよね、と思った方へ。

経験は自信になるし、ある程度役立ちますが

実際プロオケに入ってみるとわかるのです。

そこは今までの続きでは無い、という事を。

 

研修中、という腕章や名札を見ると

「だから許してね」と見えなくも無い、

それは出来ないのがオーケストラ。

これが難しい所、私も黒歴史を思い出します。

未来には"中堅の今"も黒歴史かもしれません。

勿論、最初からものすごーく出来る人もいます。

類稀な新人さんを見て「凄いなこの子」と思う、

自分の黒歴史を思い出すアラフォー。

 

とにもかくにも、

新人でもベテランでも仕事内容が同じ、

これが、最も難しい事だと思います。

 


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