【読書】カササギ殺人事件 上 アンソニー・ホロヴィッツ著【感想】
クリスティに畏敬を払う名作サマセットの郊外にある村の屋敷で、使用人の女性が鍵の占められた屋敷の階段で死んでいた。掃除機のコードで引っかかっただけかと思われたがその死の周囲には危うい人間関係が存在していた。カササギ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)Amazon(アマゾン)このミス翻訳部門の常連、アンソニー・ホロヴィッツ先生。前にホームズの続編やスパイ少年ものは読みましたが今回は一段と面白いと思いました。どこにでも首を突っ込むちょっと困ったおせっかいおばさんが死んでしまっただけかと思いきや徐々に村民達の心の奥に今まで降り積もっていた不満、不遜、不安が徐々に表に出てきます。関わった人間全てに対しての愚痴やら悪口やらが細々と書かれたノートとか。支配的な母に対する息子の気持ちとか自分が得られるべき財産を奪った兄への複雑な感情とかそういった様々な視点が村の空気を立体的な闇に包んでいきます。いい人もいるんだけど悪意が濃い。しかもそんな直接的な暴力とかじゃなくって嫌味、愚痴、鬱陶しさ、面倒臭さ…普通にすぐそばで生まれていく感情が妙な薄寒さを感じさせます。そして風変わりで(定番)余命わずかの探偵、アティカス・ピュント。彼はこの巻のラストで決定的なことを言います。・・・え?!って思いましたが。・・・このお話、そんな推理小説を読んでいる人間がいる、二重構造。推理小説の謎と二重構造がこの物語の下巻でどんな展開を迎えどんな顛末となるのか。下巻、俄然楽しみです!やっぱり売れてる本ってのは面白い!!