米大統領選もいよいよ大詰めを迎え、バイデン候補優勢で展開していますが、史上まれにみる大接戦となっています。(2020年11月5月現在)。
さて、後半戦、トランプ候補がやや勢いを取り戻した原因として「バイデン候補はフラッキング禁止を提案している。それでは石油産業をは破壊される」というトランプ候補の攻撃があるとされています。
では、フラッキングとは何でしょうか。これは大量の水・化学薬品を高圧でシェール層(頁岩層)に流し込み、シェールガス・オイルを取り出す技術です。
それではシェールガスとはなんでしょうか?クロネコ先生に教わりましょう。
シェールガスとは、2000年代よりアメリカ合衆国を中心に開発が進んでいる地中の頁岩を破砕して得られるガスです。同じようにして得られる液体をシェールオイルというのです。
これは今までの石油とは違うものですね。
品物は同じですが、採掘の方法が違います。今までは頁岩の細かい隙間に石油や天然ガスがあることはわかっていたのですが、採掘する技術がなかったのです。ところが、技術革新により、採掘可能になりました。2008年ごろからアメリカ合衆国での生産が急増し、2011年にはロシアを抜き、アメリカ合衆国が世界最大の天然ガス産出国になりました。また、2013年にはサウジアラビアを抜き、アメリカ合衆国が世界最大の産油国になりました。
現在、天然ガスの産出も石油の産出もアメリカ合衆国が第一位になったのですね。
そうです。石油輸入国だったアメリカ合衆国は今や輸出国です。天然ガスの輸出も近々始まるでしょう。実はアメリカ合衆国では2001年当時、「アメリカの原油は2016年で枯渇する」と予測されていました。だから、石油が豊富な西アジア、つまり中東の政治に積極的に介入していました。
自国の石油がもうすぐ無くなるのだから、中東の石油を確保したいということですね。
そうです。例えば、2003年にアメリカ合衆国の主導で行われたイラク戦争の目的は、イラクの石油を確保することだったといわれています。ところが、もう自国に石油や天然ガスが十二分にあることが分かりました。一説にはあと400年は大丈夫だそうです。だから、中東の情勢に無関心になったといわれています。
なるほど。資源は一国の政治の姿勢にも影響するのですね。
そのとおりです。アメリカ合衆国は今後発展しそうです。
先生、これまで資源の輸出により利益を上げてきた中東諸国やロシアはどうなるのですか?
はい。シェールオイル・ガスといういわば新たな石油や天然ガスの出現で、自国の資源が売れなくなったり、値段が下がったりするでしょうね。だから、今後は苦しくなるでしょう。資源の輸出に頼らない国造りが必要です。
資源って、世界の情勢にも大きく影響するんですね。
ちなみにシェールオイル・ガスの埋蔵量は世界の1位と2位の経済大国であるアメリカと中国の埋蔵量が際立っています。推定値によりますと中国が36兆立方メートルでトップの埋蔵量を誇り、アメリカが24兆立方メートルで続いています。
中国もますます発展しそうですね。ところで、我が日本の埋蔵量はどうなのです?
それが、ほとんどないんです。なぜならシェールオイル・ガスはおよそ一億年前の地層にあるのですが、一億年前といえば、日本列島は、まだありませんでしたから。
う~ん、残念!
さて、上の情勢は変わってしまいました。
その後原油価格が下落し、原油より価格が高いシェールガスは、原油に対抗できず、シェールガスを採掘する会社は次々と倒産しています。
なぜそんなことが起きたのでしょう?やはり、産油国によるシェールガス・オイル潰しですか?
そういう意見もたくさんありますね。また、ロシアのプーチン大統領は「原油安は、ロシアを滅ぼそうとする米国とアラブ共同の陰謀だ」と言っています。
確かにロシアは原油や天然ガスの輸出で成り立っている国ですものね。
しかし、違う考えもあります。国際政治学者の浜田和幸氏の見解は以下の通りです
以下、簡単に要約すると
①石油メジャー(大手6社のうち3社が米企業)は、自ら巨額のマネーを運用しながら、原油の投機筋と一体となって市場を動かしている。原油安は石油メジャーと投機マネーが資金を引き揚げたことだ。
↓
②彼らの狙いはどこにあるのか。今、彼らは、破綻が相次いでいるシェールガスの会社や生産設備を二束三文で買い叩いている。
また、
スーパータンカー(超大型石油タンカー)を仕立て、原油を安値で買い漁って満載し、価格が再び上昇するのを待ち受けている。
↓
③そして、彼らは原油価格の下落でロシアが窮地に陥るだろう。ルーブル安によるインフレで国民生活は苦しくなり、プーチンに対する支持率は低下しつつある。支持率回復のため、新たな戦争を始める可能性は十分ある。
また、
サウジの「20ドルまで下がっても減産しない」というが、現実にそこまで下がると、余裕のあるサウジと違い、他の産油国は経済的に困窮する。だから、たとえば、イランで、サウジとの間で紛争が起きても不思議ではない。
そして、戦争が起こる→原油価格が高騰する。
↓
④紛争により原油価格が上昇すれば、石油メジャーが傘下に収めたシェール企業は再び利益を出し、投機筋も安く買った原油を売りに出し、ぼろ儲けできる。
恐ろしいです。国際情勢がそのように動いているなんて、、、。
別に意外な話ではありません。似たようなシナリオは過去に何度も繰り返されてきたのですから。
さて、シェールガスについてわかっていただけたところで、フラッキングの是非について論争点を示しましょう。
肯定派(トランプ候補など)
①石油の安定供給
②米国石油産業の保護
否定派(バイデン候補など)
①化石燃料使用による地球温暖化などの地球規模の環境破壊
②地下水の枯渇、化学薬品の地下への投入などによる地域の環境破壊
③化石燃料ではなく、風力、地熱、太陽光、水素など新エネルギーに転換していくべきだ。
以上です。当事者意識をもって考えて欲しいです。
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