メディアでは報道されないイギリスの状況 | 絆ソムリエ ブログ

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リゾートオペレーション勤務にて、ゴルフ、プロスポーツ(J1大分トリニータ)、ブライダルに携わる。その経験を元に、「将来性のある起業女性を育成し、海外に輩出したい」と、『Co-creation』を立ち上げる。

8月のイギリス「3か月以上ぶり外食解禁、来月には5か月ぶりに学校再開」

ボッティング大田 朋子

 

ロックダウンが段階的に緩和されながら迎えた夏休みも残すところあとわずかのイギリス。ロックダウン解除以降のイギリスでこの夏一番大きなステップは、3か月以上もの間、通常営業を停止していたレストランやパブが再開したことだろう。ソーシャルディスタンス(社会距離)をとるといった「新しいルール」を導入しながら、厳格に止められていた社会の流れが少しずつ動き始めているのを感じる。

 

  あるレストランでは接触を減らすためスマホを使って会計するシステムを導入

 

・3か月以上ぶりに外食解禁

 

外食産業は3月20日から営業停止になっていた。ロックダウン中でもテイクアウトやデリバリーのサービスは続いていたが、多くの人々はそれをかなり注意深く利用していたから、7月4日に営業が再開してもイートインをして感染リスクを高めてまで人々は外食したいと思っているのかが懸念されていた。デリバリーでさえ、「容器にウィルスが付着しているかもしれないから配達後2分経ってからドアを開けて。」「中の食べ物を移したら容器はすぐに捨てて手を洗って。」などと神経質になっていた人も少なくなかった。多くの人にとって3月中旬以降外出が禁止されて隔離に近い状態が数か月も続いていた後に、いきなり外に出て誰が作ったかわからないものを他人と同じ空間で食べてもよいといわれても、人々は外食に対してかなり慎重なんじゃないかと思われていた。

 

・外食半額キャンペーン

 

イギリス政府はそんな人間心理を見越し、外食産業を促進するために「Eat Out to Help Outキャンペーン」を打ち出した。8月3日から31日の月・火・水曜日に限り、登録された飲食店での食事代の半分を政府が負担するという政策。1人につき上限10英ポンド(約1385円、2020年8月23日時点)という制限はあるものの期間中の外食は半額になり、割引を受けられる回数に制限がない。加えて、レストランやパブでは2020年7月15日から2021年1月12日までVATが20%から5%に減税される政策も試行されている。

 

というわけで、8月中のイギリスでは外食50%オフと減税が並行して適用されていて外食をしたい人にはこの上なく「お得」なキャンペーン中なのだ。この政策は大当たりで、多くの店では「Eat Out to Help Out」該当の曜日にはお客さんで溢れている。

 

・慎重さと気晴らしの共存

 

とはいえ、外食することや外に出る不安が消えたわけではない。ロックダウンが解除されたとはいえ制約や不安の消えない生活は今でも続いていて、わたしたちは先が見えない状況に疲れを感じている。世界中の多くの人と同じようにイギリスの人々も夏休みの旅行がキャンセルになった。今、安全に気晴らしができる選択肢として外食をし、それが小さな楽しみになっているといえる。

 

わたしの話で恐縮だが8月に入ってすぐはまだ外食することには消極的だった。わたしは決して神経質な方ではないが、衛生概念が低くみえるイギリスで、「30分おきに20秒以上の手洗いを徹底」、「店内では表面を30分ごとに消毒」といった新しいルールが打ち出されているのを見てもどこか懐疑的だったし、美味しい料理が半額で食べられるとはいっても、コロナにかかるかもしれないリスクを冒してまで感じる「お得感」はないと感じていた。それが、ある仕事でレストランに行かなければいけない日があって以来一度外食をしてしまえば、なんてことはない、外食が怖くなくなり今は外食が楽しみの一つにさえなっている。屋外席に座るとか、屋外テラスがないところなら窓側に座るといった自分なりの安全ルールはあるのだが。

 

周りを見ていても、同じような感じで「元の生活」に戻っていっている気がする。できるだけソーシャルディスタンスを取っているし、マスクをするようになったし、在宅勤務が続いている友達もたくさんいるし、通勤しなければいけない場合バスや電車は止めてマイカーや自転車で、などとその人なりに予防しながら、それでも終わりのない制限ばかり続けていられない、夏休みなのだから楽しみたいし友達とも会いたい……、そんな葛藤を抱えながら毎日を過ごしているように思う。

 

・5か月ぶりの学校再開を控える今

 

イギリスにとって次の大きなステップは来月9月からの学校再開だろう。3月23日からイギリス全土で学校が閉鎖されて以来ほとんどの子どもたちにとっては5か月以上ぶりに学校に戻ることになる。子どもたちはもちろん、その間ホームスクーリングで踏ん張ってきた保護者にとっても、「そろそろ学校が始まってくれないと……」といった思いに達している。これ以上子どもたちの教育機会を奪えないし、これ以上閉じ込めておけない。コロナと同じように目には見えないけれど「メンタルヘルス」も懸念されている。

 

というわけで、まだまだ不安も制約も消えないとはいえ、数か月前の友達とも会えない状態から抜けているだけでも正直ありがたいと思う。今は屋外だと6人まで出会うことができる。屋内では2家族までといった条件はあっても誰かと対面で話ができる。先が見えない不安定さも相変わらずだけれど、今は人と会えるおかげでみんなの顔が随分明るくなっている気がする。これに安心が加わる日が一日でも早く来てほしいと切望している。

 


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 

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