大三島「喜船」 瀬戸内しまなみ海道でタモリを肴にお昼酒。

大三島「喜船」 瀬戸内しまなみ海道でタモリを肴にお昼酒。

1999年に開通した本州と四国を結ぶ3本目の自動車道路、瀬戸内しまなみ海道。2014年には、CNNから世界7大サイクリングルートのひとつとして選ばれ、多くのサイクリストが訪ねる聖地としても知られています。

サイクリングと飲酒の両立はできませんが、橋梁から眺める瀬戸内海の眺めは絶景であり、お酒も一層美味しく感じるに違いありません。絶景を路線バスで楽しみ、そのあとは「大三島」にある大衆割烹「喜船」で、地魚をつまみに地酒で一献楽しみたいと思います。

 

瀬戸内しまなみ海道の四国側の起点は、愛媛県今治市。岡山駅で山陽新幹線から、JR予讃線に直通する特急列車「しおかぜ」に乗車し、2時間10分。愛媛の県庁所在地・松山からならば約30分でアクセス可能です。瀬戸内海ぎりぎりを走る区間も多く、変化に富んだ車窓を眺めて、のんびり缶酎ハイを飲むのはなかなかに楽しいものです。

 

人口約15万の今治。今治タオルやかまぼこが特産品です。飲み歩き好きの間では、四国を代表する「焼鳥の町」としても知られています。

今治駅前から瀬戸内しまなみ海道を渡る路線バスが発着していますので、乗り換えはとっても簡単。

 

しばらく今治市内を走ると、バスはやがてインターチェンジに入り、高度をあげた車窓からは今治の昔ながらの産業である造船所を眺めることになります。

 

穏やかな海に、点在する島々、青と緑、そして瀬戸内しまなみ海道の構造物のホワイトが織りなす、美しいコントラストが続きます。

途中の島々を経由しながら、バスは尾道や福山を目指します。そのまま乗り通してしまっては、ちょっぴりもったいない気がしますので、途中にある瀬戸内しまなみ海道沿いで最も大きな島「大三島」で一旦バスを降りてみます。

 

愛媛県最北の島、芸予諸島の「大三島」。別名「神の島」。伊予国の一宮である大山祇神社(おおやまづみ)があり、大三島神社とも呼ばれていたことから、島の名前も「大三島」となったといいます。

 

全国にある三島神社の総本社です。

 

瀬戸内周辺の酒蔵から奉納されている菰樽の数は圧巻。しまなみ海道の開通で交通の便は良くなったとこともあり、島という立地にありながら多くの観光客が訪れています。

 

有力な神社ゆえ、周辺には立派な門前町が広がっています。今回訪ねる大衆割烹「喜船」もそのうちの一軒です。

 

今風の華やかで威勢のよい海鮮料理店にはない、どっしり構えた落ち着きある雰囲気。筆者はこういうお店が好きでたまりません。ピカピカに磨かれた調理器具などが並ぶ厨房、そちらに向いた10席ほどのカウンター席をはじめ、小上がりや座敷が用意されています。

営業時間は11:30~15:00・17:00~21:00と、中休みの時間が少し遅めに設定されているので、お昼時を逃してしまったとしてもゆっくりお昼酒を楽しむことができます。

 

まずは、なにはともあれビールから。岡山でつくられたキリンラガー(大ビン700円)をもらって、では乾杯!

 

生ビール(中は600円)、酎ハイ(500円)、日本酒は地元の銘柄を置いています。

 

刺身、煮魚、焼き魚、天ぷらなど、おもに瀬戸内の食材をつかった鮮魚料理が揃っています。セットで頼むもよし、単品とビール、日本酒とすすめるものよし。

 

お刺身盛り合わせ(単品1,300円税込)。名物は地物のタコ、そして瀬戸内のタイ、メバル、イナダやソウダなど。鯛白子も添えられた風土感じる内容です。

 

そして、今回の瀬戸内の飲食店取材で最も美味しいと思った魚がこちら。地元では「タモリ」や「ムクダイ」と呼ばれる魚で、全国的には「セトダイ」なんて呼ばれているとお店の方。

「とももり」が「たもり」になったようで、愛媛の鮮魚店で聞いた話によると平家の「平知盛」が由来ではないか、とのこと。(諸説あります)

 

脂がのった、というよりも、ゼラチン質のような身質は、プルプルとしていて、これにみりんや醤油の味が混ざると、ほっぺが落ちそうなほど美味。瀬戸内固有ともいえる魚で、東京ではまず食べることができないもの。この味は一度食べれば忘れられません。

 

日本酒は愛媛の銘柄をいくつか用意されているので、甘口、辛口、好みにあわせて頼んでみては。まだ外は明るいですが、「タモリ」の美味しさを知ると、日本酒に手を伸ばさずにはいられなくなります。

 

煮魚定食(1,400円)は、小鉢やサワラ焼、お椀などがついています。もちろん単品でも注文可能ですが、これだけいろいろあれば、おつまみセット感覚で頼んでみてはいかがでしょう。

季節や天候、仕入の状況でなどで水揚げの内容が変わりますので、「タモリ」がないことも。ですが、ここの魚は観光地の食堂だからとあなどれません。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

喜船
0897-82-0058
愛媛県今治市大三島町宮浦9119-9
11:30~15:00・17:00~21:00(不定休)
予算3,000円