2020年7月4日

1万人が検査を拒否した理由

新型コロナの感染が拡大しているメルボルン北西部の36の町では、大規模な検査が行われています。全住民を検査するという目標で、住宅地の中や公共施設の駐車場など各地に仮設の検査場を作って検査をおこなっているだけではなく、一軒一軒ドアをノックして訪問しているんですよ。

オーストラリア軍の兵士も動員していますが、福祉給付金の管理を行うセンターリンク(Centrelink)のスタッフや税務署のスタッフも動員するそうです。

検査員が玄関までやって来てくれるんですからね、「検査を受けてください」と言われたら「はい」と答えて綿棒で粘液を取ってもらう。それだけのことです。

ところが、これまでの1週間で1万人以上が検査を拒否したそうなんです。

どうしてなの?

人権を重視するオーストラリアですから、検査を拒否する人に強制したりしません。それにしても、この地域だけで、しかも1週間だけで、1万人も拒否というのはどういうこと?

州政府は、これらの人達が検査を拒否した理由の統計をとって詳しく調べているところだそうです。中には、すでに別の場所で自主的に検査を受けたからという理由で拒否する人もいるそうですが、それが本当かどうかは分かりません。

問題視されているのは、新型コロナのパンデミックというのは「陰謀」であるから自分には関係ないと考えている人が大勢いるということです。

陰謀じゃあなくて実際に起きていることなんですよ!
このウイルスは非常に感染しやすく貴方が感染する可能性も大きいのです!
貴方が感染すれば貴方の家族や貴方の大切な人が感染する可能性も大きいのですよ!

ジェニー・ミカコス保健相が会見でそう訴えていましたけど、ヴィクトリア州は精神衛生事業に追加の予算を支出するとも発表しました。それを聞いて、私は心の病気のせいで「陰謀」であるとか信じている人も大勢いるのだと気づきました。

ミカコス保健相は、ロックダウン中であっても医者に会いに行くために家を出ることはできるのですと繰り返し念を押していました。心の病気の治療やメンタルヘルスのサポートを提供する場所には行っても良いのだと。

一軒ずつ訪問することで、検査員達がそうした問題を目にしているのでしょう。

検査を拒否する人達とメンタルヘルスの問題を関連付けずに、「またバカモノがあ!」と思ってしまった自分を反省しました。


検査を拒否する理由の一つに、感染していることが分かると生活に困るということがあります。

有給病気休暇制度とは無縁の状況で働いている人は、仕事を休むと収入が無くなってたちまち困窮します。その様な場合には、州政府から給付金がもらえるので心配しないで検査を受けてくださいとのことです。

頼れる人が近くにいないなど孤立して暮らしている人の中には、感染していることが分かって家から出られなくなると生活必需品を手に入れられなくなって困るから検査を受けたくないという人もいるそうです。その様な場合は、買い物代行などの支援を利用できるので心配しないで検査を受けてくださいとのことです。

検査を受けない理由はいろいろあるということで、検査を強制するのではなく検査を受けない理由の原因になっている問題に取り組むというところは評価したいです。


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