日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「第2回世界遺産入門講座 イタリアの世界遺産 - 南イタリア・シチリア編 - 」の開催リポート 前半(2018.7.22&8.5)@サークル日伊文化交流会

2018年08月13日 | 活動の報告

「第2回世界遺産入門講座 イタリアの世界遺産 - 南イタリア・シチリア編 - 」の開催リポート 前半(2018.7.22&8.5)@サークル日伊文化交流会



当サークル主催の「第2回世界遺産入門講座 イタリアの世界遺産 - 南イタリア・シチリア編 - 」を2018年7月22日(日) 8月5日(日)に 板橋区立グリーンホールで開催しました(19名, 23名)

 ← 開会の挨拶

1. 今年決まった日本の世界遺産

まずはホットな話題から...

2018年7月
にバーレーンのマナーマで開催された第42回世界遺産委員会で 新たに19件が登録され(文化遺産13 自然遺産3 複合遺産3) 現在 1,092件が登録されています 
ちなみに世界第1位はイタリア 54件 第2位は中国 53件 日本は22件で 12位です

世界遺産の数が増えすぎると言われる中 登録することが目的ではなく 登録後の保存が問題であるとのお話をいただきました 来年からは一ヶ国につき1カ所となるそうです 
世界遺産の理念 経緯 国立公園を作ったアメリカ(自然遺産の発端)についてなど...

今年新たに日本の世界遺産となった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(文化遺産)について

日本におけるキリスト教の伝来後250年もの禁教期における潜伏信仰と復活は 世界宗教史上類例のない歴史を物語る資産として登録されましたが 2度目のチャレンジで 推薦後4年かかったこと 外海(そとめ)や五島列島の 教会群から潜伏キリシタン集落へと対象を変えての登録でした 


ちなみに「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(自然遺産)は 登録延期を受けて日本は申請を事前に取り下げました なので今年は1件です

  ← 長崎の紹介


2. 今年決まったイタリアの世界遺産

次は イタリアの新しい世界遺産について:

イタリアの54番目の世界遺産「20世紀の産業都市イヴレーア Ivrea, industrial city of the 20th century/Ivrea città industriale del XX secolo」の登録が決まりました!!

イヴレーアはオリベッティ社発祥の地であり オリベッティ社の施設群(complesso Olivetti/コンプレッソ・オリヴェッティ)などが残っています ← でも実は2月の「オレンジ祭りBattaglia delle arance)」の方が有名かも?

ICOMOSはその顕著な普遍的価値は認めたものの 保護体制の不備などから情報照会を勧告しましたが 無事登録となりました
イタリアの産業関連遺産に「クレスピ・ダッダの企業都市」(より人間的な労働環境の実現を目指した紡績工場の町)がありますが 他にもイギリスの「ニューラナーク」「ソルテア」「ダーウィン峡谷の工場群」等 同じ系統の産業関連遺産があるのですね 

実は 今年一番もめたのはイタリアのもうひとつの物件とのことで 不登録勧告から情報照会になった「コネリアーノとヴァルドッビアーデネのプロセッコ栽培丘陵群(Le Colline del Prosecco di Conegliano a Valdobbiadene)」について ご紹介いただきました ← ここの人たちはシャンパンではなくプロセッコを飲みます♡ 


ICOMOSは 特に他のブドウ畑を差別化できる物件ではないとして「不登録」勧告を出しましたが イタリアが異議を主張し もめにもめて とうとう投票の結果「情報照会」とし 来年の再度審議することとなったのです
世界遺産委員会で「不登録」の審議結果が出ると 二度と申請できなくなってしまうので 普通当事国は 日本のように審議前に取り下げますが イタリアはがんばりました

因みに ワイン畑は7か所が登録されています 

  ← プロセッコは情報照会に!


     *     *     *

3. シチリアの歴史について

さていよいよ7つの世界遺産があるシチリアに入ります!! 食べ物のことから入りました

  ← シチリアの料理

  ← シチリアの7つの世界遺産


まずは地中海文明の交差路であるシチリアの歴史から...

2億年前に海底から隆起してできた島であり 60万年前にエトナ山が海底から噴き出し
二万年前に人類が住み始め 西にエミリ族 中部にシカニ族 東部にシクリ族が住み シケリア(古典ギリシャ語)がシチリアとなったこと 国旗のトリナクリア(Trinacria)(三つの角の意味)のことなど 

  ← シチリアの国旗トリナクリア

旅行に行く前には色々調べて 世界遺産も見逃すことのないように!とのアドバイスをいただきました♪ 
特に文化遺産の選ばれた理由や背景 建築様式 歴史などを知ってから行くと 旅行がより有意義になります♡

地中海の中心に位置するシチリアには さまざまな文明や民族が交差しました: フェニキア ギリシャ ローマ支配(ポエニ戦争はシチリアが原因でした) ゲルマン民族 ビザンティン帝国 アラブ人の支配

そして1130年にノルマン人によるシチリア王国が誕生し(ルッジェーロ2世) 1194年ドイツ王国のホーエンシュタウフェン朝がシチリア王国を継承し(神聖ローマ帝国ハインリヒ6世、フリードリヒ2世)  1268年ナポリ王国を建国(フランス王国: ルイ9世の弟シャルル・ダンジュー) そして 1282年アラゴン王国が支配し アラゴン王フェルナンド2世がナポリ王国を征服して ナポリとシチリアを再統一します

1734年にハプスブルク家が両シチリア王国を支配し 1860年にガリバルディによりイタリア半島が統一され イタリア王国が誕生しました(1861年) 
このように支配者がころころと変わったことを背景に 実はマフィアが生まれたということも伺いました (シチリアの晩鐘/Vepres Siciliennes)

 ← 講師の先生がシチリアで買ってくださったマグネット(その街の問題が出されました!)


4. アグリジェント(シチリア)

次は 「アグリジェントの遺跡地域/Valle dei Templi - Area archeologica di Agrigento -」(1997年登録/シチリア州)です

  ← アグリジェントの遺跡地域

8a.C.にギリシャ人がシチリアに入り 580a.C.頃に 古代ギリシアの植民都市アクラガスという名前のアグリジェントに ドーリア式のギリシャ神殿を建てたのですね 中でもコンコルディア(和解の意味)神殿は保存状態がよく 「神殿の谷」が残っています 

また他にも マルサラ モツィア セリヌンテ セジェスタ (Tindari)ティンダリ(Tindari) カターニャ シラクサ メッシーナなどの街にも ギリシャ時代の神殿 または野外劇場が残っているのですね



5. パエストゥム(カンパーニャ州)

さてそこで ギリシャ神殿といえばイタリア本土で有名なものが カンパーニャ州パエストゥムにあるのです:

  ← パエストゥムとヴェーリアの考古遺跡群やパドゥーラのカルトゥジオ修道院を含む チレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ国立公園

講師の先生がサレルノに行かれた時に 偶然パエストゥムを訪れた話も伺いました
この地は古代ギリシャ植民地として 古代ギリシャ文化が入ってきており 大きなギリシャ神殿(3つ)が残っており イタリア半島の先住民族であったエトルリア人の居住地との境界地であったことが窺われます


「パエストゥムとヴェーリアの考古遺跡群やパドゥーラのカルトゥジオ修道院を含む チレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ国立公園/
Parco nazionale del Cilento, Vallo di Diano e Alburni, con i siti archeologici di Paestum e Velia, e la Certosa di San Lorenzo - 」(1998年登録/カンパーニャ州) は こちら

詳しくは こちら
 

6. シラクサ(シチリア)

もう一つ ギリシャ人の遺跡といえば シラクサですね:

733a.C.
にギリシャ人が入植して建設した都市で 「シラクサとパンターリカの岩壁墓地遺跡/Siracusa e la Necropoli Rupestre di Pantalica」(2005年/シチリア州)として世界遺産に登録されています

  ← シラクサとパンターリカの岩壁墓地遺跡
 
シチリアの一番のリゾート地といえば タオルミーナ(観光地なので物価が高い) 次がシラクサとのこと
また パンターリカはシチリアの巨大なネクロポリスで 5000基もの墓があり圧巻です
ネアポリス考古学公園の中のディオニシオスの耳という洞窟の古代遺跡があります

そしてシラクサにある「アレトゥーサの泉」は 海のすぐそばに湧いている泉で 真水だそうです 
妖精アレトゥーサを 見初めた川の神アルフェイオスがしつこく言い寄るが 逃げまわるアレトゥーサを 彼女の主アルテミスが泉の姿に変えて逃げさせた というギリシャ神話があります 

  ← アレトゥーサの泉

シラクサの大聖堂(Duomo di Siracusa)はもともとギリシャ神殿だったそうで それをキリスト教の大聖堂に建て替えたのですね 

聖堂内の柱 外壁にギリシャ神殿時代の柱がそのまま利用されており ギリシャ時代の影響が見られます

カルタゴ(フェニキア人)がシチリアに入り 264a.C. ポエニ戦争が始まります 
そして西ローマ帝国が476d.C.に滅亡するまで シチリアはローマ帝国の属州となり 今度はローマの遺跡ができてくるのですね 



7. ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ(シチリア)


ローマ帝政時代の3~4世紀に 大土地所有貴族(latifondista)の別荘跡として作られたとされる ピアッツァアルメリーナの「ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ/Villa romana del Casale」(1997年/シチリア州)は足の便が悪いそうです 
なので タクシーを頼んで一日親切に案内してくれたエピソードも伺いました💛 
床のモザイクは実に美しく古代ローマ時代最高と言われます この時代に水着姿の女性がボール遊びをするモザイクがあったとは!!  異民族の侵入の歴史を知りました

  ← ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ 

     *     *     *

8. シチリアへの異民族の侵入

シチリアは文明の十字路といわれており 他民族に次々と支配された歴史の中で 様々な文明がモザイクのように残っているのですね 

ローマ帝国は東西に分裂後(395年) 100年も持たずして西ローマ帝国が滅亡し(476年) 
ゲルマン人傭兵オドアケルによって 西ローマ帝国最後の幼帝ロムルス・アウグストゥルスが退位させられます  ← この後、南イタリアへの異民族の侵入が盛んになります

このロムルスに聞き覚えありませんか? そう ローマを作った ロムルスとレムスのロムルスと同じです 
また アウグストゥルスも 帝政ローマの初代皇帝のアウグストゥスに似ていて 何かの偶然を感じますね

そしてコンスタンティヌス大帝が313年ミラノの勅令によりキリスト教を公認(392年にキリスト教はテオドシウス帝により国教となる)したことが 今日の西洋世界(キリスト教世界)の形の基礎となりました
 
  ← 440年~1130年までのイタリア半島 異民族の支配とビザンティン帝国の支配

  ← 文明の十字路 ラテン・カトリック文化(ランゴバルド王国) ギリシャ・東方正教文化 (ビザンティン帝国) アラブ・イスラム文化 (イスラム帝国)


こうしてシチリアでは 440年のゲルマン民族(ヴァンダル族や東ゴート族)による  535年の東ローマ帝国(ビザンティン帝国)による そして830年の パレルモを首都として(パレルモ陥落) アラブ人(イスラム)によるシチリア支配が始まります


そして1130年 ノルマン人であるシチリア伯ルッジェーロ2世がシチリア王となり 「ノルマン・シチリア王国/Regno di Sicilia(オートヴィル朝)」が成立します

実は同じ人のことでも 本によって呼び方が変わり少々厄介ではあります フェデリコ2世(Federico II/イタリア語読み)は フリードリヒ2世(Friedrich II/ドイツ語読み)等...ここで塩野七生の本のことが!! 彼女はドイツ語名で書いているそうですね

北欧のバイキングがフランス北部に住みついたといわれるノルマン人が イタリア半島を南下してランゴバルドの傭兵となり シチリア王国をつくるきっかけとなります (バイキングだったので体も大きく兵に向いていた) 
ノルマン人による南イタリア征服ですね

当時は教皇が皇帝の戴冠式を司どっており 教皇vs皇帝の争いがありました 

とりわけ中世のイタリア半島においては 北イタリアの都市国家 (教皇派or皇帝派)を挟んで「神聖ローマ帝国 vs. ローマ教皇庁」 という図式が背景にあったので、教皇庁の南に位置するシチリア王国を味方にすることが教皇庁にとっては不可欠のことでした(下の写真参照)

 ← 中世のイタリア半島の勢力分布 

西ローマ帝国崩壊後 ルネサンス時代までの間は 「西欧の暗黒時代」と言われていますが 
この間にもスペインルート(レコンキスタ後) シチリアルート(異文化の接触・交流) 
北イタリアルート(ヴェネツィア商人など)による アラビア語圏やギリシャ語圏からラテン語圏への文化の移入がありました

最近 この時代は「12世紀ルネサンス(Rinascimento del XII secolo)」と言われています
つまり 12Cのシチリアが 西欧に ビザンチン文化・イスラム文化を輸入する窓口となっていたのです

...と このようなシチリアの歴史をご紹介いただきました
後半に続く♪


開催のお知らせは こちら

開催速報1 7/22は こちら
開催速報2 8/5は こちら



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