経理・経理・経理マンの巣窟

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大相撲の経済学

2019-11-11 13:24:57 | 一口メモ

著者:中島隆信

 大相撲について記された書籍は山ほどあるが、経済学的な見地から綴られた書籍は本書が初めてではないだろうか。著者の中島隆信氏は、慶應義塾大学の商学部教授で商学博士である。だからと言って決して堅苦しい書籍ではなく、誰が読んでも分かり易く平易な文章で綴られている。また若かりし頃に大の相撲ファンだったこともあり、大相撲に対するひたむきな愛情がひしひしと感じられたのも清々しい。

 その内容については、12項目に整理され次のような構成となっている。

 第1章 力士は会社人間  第2章 力士は能力給か   第3章 年寄株は年金証書   第4章 力士をやめたら何になる?   第5章 相撲部屋の経済学   第6章 いわゆる「八百長」について   第7章 一代年寄は損か得か   第8章 外国人力士の問題    第9章 横綱審議委員会の謎   第10章 特殊なチケット販売制度   第11章 角界の構造改革   終 章 大相撲から見る日本経済

 まず著者は大相撲を純粋なスポーツとは切り離して、どちらかと言えば歌舞伎などの「伝統芸能」と同列にみなしている。従って伝統的文化を維持するためには、大胆な改革をしたり全てをオープンにすべきではない、さらに場合によっては八百長も必要悪であると考えているようだ。

 そう考えれば、かつて大相撲改革を唱えていた貴乃花親方が、協会内部で支持されなかった理由も理解できる。また最近は八百長全面撤退の見返りで、毎場所怪我人が多発し休場者頻発の現状をみると、八百長とは言わないが、ある程度の馴れ合いは必要悪なのかもしれない。

 さて力士たちは、厳しい鍛錬を続けなくてはならない割に、他のスポーツと比べて報酬が少ないようである。これは横綱から十両までの報酬が他のスポーツほど極端に差別化されておらず、引退後も年寄株を取得することにより生活の保障が担保されている、などのサラリーマン的システムとして保護されているからだという。

 ただ厳しい修行を押し付けられる割には、アメリカンドリームのような一攫千金的な夢がない。従って運動能力のある日本人は、別のスポーツに吸収されてしまうようだ。

 ところがモンゴルなどの開発途上国の所得水準は日本に比べて遥かに低いため、大相撲の報酬でも自国で運用すれば、天文学的な金額となる。だから有能な人材が続々と日本の大相撲に流れ込んでくるのだ。

 と言うようなことを、分かり易くかつ論理的に説明してくれるので、なるほどと感心してしまうし、読み物としても実に面白いのである。少しでも大相撲に興味のあるサラリーマンなら決して損がないので、是非一読してみようではないか。

作:蔵研人

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