経理・経理・経理マンの巣窟

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公認会計士vs特捜検察

2019-02-16 16:35:26 | 一口メモ

著者:細野祐二

 凄い本である。小説ではなく、ドキュメンタリーなのだが、大長編の告白文といってもよいだろう。
 一部上場会社だったシロアリ駆除会社「キャッツ」の役員三人による、株価操縦・粉飾決算などの特別背任罪が、いつのまにか著者である公認会計士の、有価証券虚偽記載罪にすり替えられてしまう。
 とにかく逮捕された公認会計士自身が、冤罪に怒り、全精力を注ぎ込んで無罪主張文を書いたのだから迫力がある。だが専門用語や金融・会計の仕組みを知らない人にはかなり読み難いだろう。
 初めこの分厚い本を読むのはかなりしんどかったが、中盤を過ぎた頃からは、裁判の成行きが気になり、むさぼるように一気に読み込んでしまった。

 一番ショックだったのは、検察の独善的かつ封建的な取り調べ方法である。 
 これがもし本当なら、こんな恐ろしいことはない。検察側に不都合な証人や証拠は全て無視し、陰で証人を脅迫しながら、検察に都合のよい証言書に無理やり署名させるのだから…。
 今時まだこんな野蛮な国家権力乱用を続けているのかと、信じられない気分で一杯だ。さらには、それら検察の横暴ぶりを承知しながらも、99.9%の有罪判決しか出さない裁判官にも憤りを禁じ得ない。これでは裁判所の独立性など全くないではないか。

 だが、本書が摘発されていないこと、また映画『それでもボクはやってない』でも同様の状況だったことを考えると、検察の横暴と検察ベったり裁判官の存在は嘘ではないのだろう。
 ただ一方通行の話なので、ここに書かれていること全てを、鵜呑みにするわけにもゆかない。それに本書中には、どうしても納得しかねることが三点ある。それをまとめると次の通りになる。

1)そもそもこの裁判の発端となった「村上専務詐欺事件」について、余り詳しく書き込まれていないのが不思議である。なぜ村上専務は、8億円もの個人資産を、いとも簡単に手渡したり、あっさり高利貸しの保証人になったりしたのか、全く合点がゆかない。
2)正義感に溢れる著者が、どうして大友社長から1000万円の裏金を受取ったのか。あとで返す積もりだったと弁解しているが、一時的にせよ受取った事実は歯切れが悪過ぎる。
3)株の買占めに対坑するためとはいえ、なぜ大友社長は60億円もの大金を使う気になったのか。そもそも自分が大株主なのだし、それほどの金を使うほど買占めに狼狽する必要があったとは思えない。

 この三点について、著者の書いた事が真実かもしれないが、余りにもその経緯や背景についての説明が少な過ぎるし、心理描写なども全く描かれていないのだ。なにか、嫌な臭いがする。もしかすると、検察同様、自分に都合の悪い部分を隠しているのではないだろうか…。
 裁判のほうは最高裁まで控訴され、未だに著者は1人で国家権力と戦い続けているという。とにかくもの凄いエネルギーである。私も含めて普通の人ならば、とっくに諦めているだろう。

 なんだか映画『不撓不屈』のモデルになったTKC創設者の飯塚税理士を思い出してしまった。今の時代にも、細野会計土のようなサムライが残っていたとは驚愕の限りであり、さすがの私も脱帽せざるを得ない。だが前述の三つの疑問だけは、いつまでも私の心にくすぶり続けている。

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