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2019.06.15
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カテゴリ:小説


 悪をもって善を行えば、悪もまた善なりか 善をもって悪を行えば、善もまた悪なりか
 善の裏には悪が住み、悪の裏には善が住む、
 悪が住んでいなけりゃ善はできねえもんなのかねえ、
 善人に悪をやらしちゃいけえねえよ、悪人が善をしちゃいけねえよ、

 北町奉行の名奉行、遠山の金四郎こと、遠山左衛門尉影元は、奉行部屋に本所見廻り同心の内藤帯刀を呼びつけていた。
 「このところ、本所が騒がしいのう、吉田町の夜鷹、荒井町の比丘尼の売女、堅川の饅頭売りの売女と立て続けに襲われ、遊女を縛っていた借金の証文を焼き捨て、売女に銭まで与えて自由にしてるって話しじゃねえか、御法度の遊女屋商売、本来は奉行所が取り締まらなくちゃいけねえことよな、な、内藤よ、奉行所の面目丸つぶれよな、」
 「はっ、左様で、本所の町はこの話でもちきりでございまして、貧乏人の男どもは安女郎がいなくなって、股が暇で暇でスースーしやがると、文句を言ってる始末でございまして」

 「義賊の真似事までしやがって、ふざけた野郎だ、なあ、内藤よ、売女に落ちた人間に帰るところがあると思うかい?ご自由ですといわれても、遊女には迷惑な話しなんじゃねえかい。おめえだって、奉行所務めをやめて自由だと言われても、行くところがあるめえよ、人間、自由がいいなんて、思い違い見当違いもいいところだ、人間は生まれながらにして、宿命(さだめ)めは決まっているのだ、武士は武士、町人は町人、百姓は百姓、そいつが身分制度というもの、えっ、どんなに時代が変わったって、じめじめした日陰の貧乏草の女はなくならねえよ、いなくちゃならねえのよ、こいつが崩れちゃ、幕府は成り立たねえよ、売女は売女になるために産まれてきたのよ、」

 「はっ、身分制度のお陰でわれら旗本も飯が食えるのです」
 「ところで、おいっ、内藤、下手人の目鼻はつているのか?」
 「下手人は遊女に恨みを持つ女で軟な男なんぞは相手にならぬ女の強者だと、瓦版が書き立てております。本所のお助け桜だと、、」
 「んんんっ、、、内藤、川越藩でおきた『いろは店』炎上事件を聞いてるかい?なんでも、60人を超える遊女が消え、鬼政、越後屋の甚五郎、代官所の役人、内藤式部が殺された事件だ。まさか、随分と離れているが本所の事件と関係があるとも思えぬが、なにか臭わぬか?いずれにしても愚かな女よ、そんなことで、世の中の仕組みが変えられるとでもおもっているのか」

 そう、強気の口の裏で、遠山影元は嫌な予感がしていた。遠山は「本所のお助け桜」が気になって仕方がなかった。甲斐の重蔵と狐目の風葉に大名屋敷から証文と金を盗ませ、その金の一部を貧しい長屋に配っていた。天保の鼠小僧は『夜桜小僧』だと町の者は喝采を送っている。貧乏人が騒ぎ立てぬようにという配慮も遠山にはあった。
 いま本所を騒がしている、遊女を解放し金を与えている『本所のお助け桜』とは元が違うのだ。善いことをするために悪をするのと、やくざが騙した女に優しい言葉をかけるような、悪人が善をすのとはまるで違うのだ、似ているようだが月とすっぱんだ。そこが気分が悪かった。本所の『お助け桜』と『夜桜小僧』じゃ紛らわしくていけねえや、「よいな、内藤、岡っ引き、密偵、総動員して捜索にあたれ、事件解決には褒美を取らすぞ、、」

(つづく)

作:朽木一空


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最終更新日  2019.06.15 15:06:38
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