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カテゴリ:小説
北町奉行の名奉行、遠山の金四郎こと、遠山左衛門尉影元は、奉行部屋に本所見廻り同心の内藤帯刀を呼びつけていた。 「義賊の真似事までしやがって、ふざけた野郎だ、なあ、内藤よ、売女に落ちた人間に帰るところがあると思うかい?ご自由ですといわれても、遊女には迷惑な話しなんじゃねえかい。おめえだって、奉行所務めをやめて自由だと言われても、行くところがあるめえよ、人間、自由がいいなんて、思い違い見当違いもいいところだ、人間は生まれながらにして、宿命(さだめ)めは決まっているのだ、武士は武士、町人は町人、百姓は百姓、そいつが身分制度というもの、えっ、どんなに時代が変わったって、じめじめした日陰の貧乏草の女はなくならねえよ、いなくちゃならねえのよ、こいつが崩れちゃ、幕府は成り立たねえよ、売女は売女になるために産まれてきたのよ、」 「はっ、身分制度のお陰でわれら旗本も飯が食えるのです」 そう、強気の口の裏で、遠山影元は嫌な予感がしていた。遠山は「本所のお助け桜」が気になって仕方がなかった。甲斐の重蔵と狐目の風葉に大名屋敷から証文と金を盗ませ、その金の一部を貧しい長屋に配っていた。天保の鼠小僧は『夜桜小僧』だと町の者は喝采を送っている。貧乏人が騒ぎ立てぬようにという配慮も遠山にはあった。 (つづく) 作:朽木一空 ※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。 またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.06.15 15:06:38
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