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2020.02.21
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 小学校4年生になると、ローマ字の授業が始まった。まずアルファベットから習う。ひろし君は、急に英語を覚えたようで、初めはなんとなく楽しかった。だがいい加減に授業を聞いていたつけが回り、だんだん理解できなくなってしまった。
 家に帰って両親に聞いても、「俺らは学歴がないから英語は分からない」と尻込みされてしまう。挙句の果てに「お婆ちゃんちの喜三郎に教えてもらえ」と逃げられてしまった。

 喜三郎とは、祖母たねの住んでいる実家で新婚生活を送っている父・紘一郎の末弟である。彼は学力優秀だったので、紘一郎が働いて高校にまで行かせてやった。だが会社では大卒の陰に隠れてしまい、未だに大学に行けなかったことに不満を持っているのだと、母みつ子がぼやいていたのを聞いたことがある。
 だがひろし君にとっては、いろいろなことを知っている叔父さんであり、彼と話をするのは楽しみであった。それでさっそく次の日曜日に、ローマ字の教科書を携えて、たねの住んでいる代田橋まで自転車を走らせた。

 ところが残念ながら喜三郎は、決算のため忙しくて休日出勤をしていたのである。がっかりしているひろし君に、たねが「二階に喜三郎のお嫁さんがいるから、彼女に聞けば教えてくれるかもしれないよ」と言うのだ。
 それを聞いたひろし君は、急いで階段を駆け上がり、いきなり二階の部屋の扉を開けた。その瞬間、嫁の妙子が「キャッ」と言う声をあげて、開いていた胸に手を当てていた。

 そう妙子は産まれたばかりの赤ちゃんに、母乳をあげていたのである。それでおっぱいをひろし君に見られて恥かしかったのだ。だがひろし君は全く意に介さない。当時は電車の中で母乳をあげているお母さんは大勢いたし、母親のみつ子も近所のおばさんたちも、子供におっぱいを見られても全く気にしていなかった。ところが妙子はまだ若くて、ひろし君の知っているおばさんたちとは世代が違っていたのである。

 だがおっぱいには全く興味のなさそうなひろし君を見て、いつの間にか妙子も気にせず胸を開いていた。そして授乳している娘を「可愛いね!」と褒めてくれたひろし君が急に可愛い弟のようにみえたようだ。
「ひろちゃん今日はどうしたの?」
「うん、喜三郎叔父さんにローマ字を教えてもらいたくて来たんだけど、叔父さんはお仕事みたいだね」
「じゃあ私でよかったら教えてあげましょうか?」
 
 と言うことになって、ひろし君は妙子からローマ字の基本的な考え方を教えてもらうことになった。彼女の教え方は懇切丁寧で分かり易く楽しかった。またローマ字は英語ではなく日本語に近く、基本さえ理解すれば意外と易しかった。だからその後ローマ字はひろし君の得意科目になってしまったくらいである。

 さて夕方になると喜三郎叔父さんが帰ってきて、テレビニュースの『皇太子ご成婚パレード』を見ながら、「俺と妙子のほうがずっとかっこいいだろう?」と笑いながらひろし君に尋ねたものだ。確かに日本人離れして彫りの深い叔父と、あの優しい妙子さんはお似合いのカップルかもしれない、とひろし君は頷かざるを得なかった。

作:五林寺隆


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最終更新日  2020.02.22 10:54:07
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