新・極楽日記 第27話~第29話 まとめ読み | ちょっと笑えるお話@しゅんちの極楽日記

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第27話 「カプセルホテル2018」

 

サラリーマンの醍醐味といえば泊まり出張である。
旅行が好きなしゅんちはホテルを選ぶのが楽しみで、時間も忘れてインターネットで宿探しに没頭してしまうのだ。
いつも選ぶホテルはビジネスホテルが多いのだが、カプセルホテルも捨てがたい。
カプセルホテルはたまに泊まるのが楽しいのである。


ここでカプセルホテルを説明しておこう。


カプセルホテルとは穴ぐらのようなカプセルに簡易ベッドだけが用意された特殊なホテルである。
値段も1泊3,000円程度でリーズナブルなのも特徴である。

部屋で過ごすのがメインではなく、大半は大広間や大浴場で過ごし、寝る段階になってカプセルにに戻るという、滞在時間のほとんどが他のお客や従業員がいるところで過ごすので
プライバシーもへったくれもない所なのである。

そしてカプセルホテルには大きく分けて2種類あると思われる。

1つは新世代のカプセルホテルである。
設備は新しく、高級ホテルの雰囲気を出していたり、アジアンテイストの雰囲気を出していたりとスタイリッシュなのが特徴である。
よりシンプルに、より快適に、必要な物だけを揃えたという効率的な考え方で出来たカプセルホテルである。


広告のキャッチフレーズは大体こうである。


「全室エアウィーブ搭載!」


「テンピュール枕をご用意!」


「全室大型21インチモニターVOD見放題!」


「まるでビジネスホテルのように広々した快適な空間を実現!」

 

 

 

 

むしろビジネスホテルに泊まればいいのでは?

 

 

 

最近、徐々に増えつつあるタイプの近代的なカプセルホテルである。


もう1つは昔ながらの昭和的なカプセルホテルである。
各所が
昭和時代が満載な時代錯誤なカプセルホテルである。

 

赤じゅうたんと派手なシャンデリアで飾られた物々しいフロント。
大浴場とサウナ室は無駄に広く、浴室の各所に女神像などが飾られ異国情緒あふれる雰囲気。

館内にはうどん、ラーメン、かつ丼、各種おつまみ群、そして生ビールと何でも揃っちゃいそうな食堂を完備。
寝る場所であるカプセルの設備は古く、閉塞感満載で「火事が起きたらまず助からないだろうな」と絶望感を漂わせる。

脇に備え付けられている電気や音響の操作パネルは既にサビ付いていて、大昔のオーディオのような出っ張ったボタンが付いていて、下手したらボタンを押したら感電しそうな勢いである。


すでにおっさん化したしゅんちは・・・



昭和的カプセルホテル派である。
 

 

 

・・ある日、大阪に出張する事になったしゅんち。
都会には必ず老舗の昭和的カプセルホテルがあるものである。
しゅんちは大阪の老舗の「カプセルホテル大東洋」を発見し予約したのだった。


・・その夜。

大阪グルメを楽しみ、ほろ酔い状態で今夜泊まるホテルを目指す。

大阪駅から徒歩10分・・・
雑居ビル風の建物がカプセルホテル大東洋であるらしく、「サウナ・カプセル」と赤文字のネオンサインが見えて来た。今時ネオンサインとは珍しい。
昭和レトロな雰囲気に胸が高まるしゅんちであった。

・・玄関に入ると古めかしい木の下駄箱が立ち並んでいた。
下駄箱に靴をしまいカギをフロントに預けチェックイン。
そして緑のゴムのキーカバーに番号とバーコードが書かれたロッカーキーを渡される。
お風呂などにも腕に付けて持ち込めるタイプのやつである。



ちなみにこれは部屋の鍵ではない。



カプセルホテルは部屋に鍵などは付いておらず、カーテンだけで仕切られているだけなのである。
荷物や着替えや貴重品は全てロッカーに預け、館内のあらゆるものはロッカーキーの番号でチェックされ後で清算するシステムなのである。

しゅんちはまずロッカーで館内着(作務衣)に着替え、荷物は全てロッカーにしまった。
これで準備完了。カプセルホテルの醍醐味というと大浴場である。
食事は済ませてあるのでまずは大浴場に向かうしゅんち。


(大浴場は・・・6階か)


まずは手ぶらでエレベーターで6階へ。


女性従業員「いらっしゃいませ」


エレベーターを出るとマッサージの受付があり、カウンターには女性達が並んでいた。
お風呂の位置はわからない。


しゅ「す、すみません。大浴場はどこでしょうか?」


従業員「まずはこちらで衣服を脱いでいただいて、階段で5階へお願いします。」



こ、ここで脱ぐの・・・?


どうやら
女性従業員がいる前で脱衣するシステムらしい。
確かにおじさん達は女性従業員がいるにも関わらず、全く気にすることなく裸でうろちょろしている。

この女性たちも何にも気にならないのだろう。


半分裸でウロウロしているおじさん。


でっぷりとマッサージ台の上で寝そべるおじさん。


扇風機の前で前をはだけさせて涼むおじさん。


その生態に動じない女性従業員。

 

 

 

もはや飼育係のお姉さんに見えてきた。


 

しゅんちは思春期のプールの時間のごとく、部屋の端っこで服を脱ぎ、タオルを腰に巻いてそっと大浴場へと向かうのだった。

 

・・大浴場とサウナも一通り楽しみ、食堂で生ビールも楽しんだしゅんち。
もうすっかりここの住人のようなくつろぎっぷりである。

 

部屋に戻る途中のラウンジではソファーに寝そべる人達が大画面でお笑い番組を観ていた。
さすがは大阪。テレビを付ければお笑い番組をやっているらしい。
しゅんちも少しくつろいで行こうと、自動販売機で缶ビールを買い、おじさん達にならってソファーに寝そべってみた。

横には完全にうたた寝しているおじさん。これはテレビを消したりすると「今見てたのに」と起きるパターンのおじさんである。まるで自宅に居る時のようなくつろぎ感である。

 

しゅんちもウトウトと缶ビール片手に深夜番組を楽しむ。

まるで自宅のリビングのソファーでテレビを見ているような気分である。

 

すると遠くから聞こえてくる音が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ぷ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、くつろぎすぎやん。


まるで自分家で過ごすようなくつろぎ感。

もはやここにいる人達は家族のような存在なのだろうか。

そのままうたた寝しそうになるのをグッと堪えラウンジを後にしたしゅんち。
カプセルに戻り、さあ寝ようと布団を被るが、カーテンだけで仕切られている向こう側から
イビキが轟々と聞こえてくる。
まるで猛獣の住むジャングルでキャンプしたようである。



しかし、なぜか心地良い。



いつもそばに誰かの気配がする。



しゅんちはいびきの音はさほど気にならず直ぐに眠りに落ちたのだった。


カプセルホテル・・・
都会の喧騒に疲れた人恋しいおじさん達の憩いの場である。

 

・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

第28話「お呼ばれ結婚式の準備」

 

親戚の結婚式に招かれたしゅんち一家。
しかしその親戚は全然親しくなく間柄である。
幼少の頃に会ったことがあったかもしれないのだが、もう言ってしまえば
式場で初対面のようなものである。

そんな関係なのだが他に参加できるちょうどいい親戚筋がおらずしゅんち一家に白羽の矢が立ったというわけなのである。

カホマオは結婚式に出席するのは初めてで、憧れの披露宴に参加できるとあってはしゃいでいるのだが大人は準備が大変である。
友人でも知り合いでも無く、初対面の親戚の結婚式となると
相当の覚悟が必要である。
親しくない親戚のお呼ばれ結婚式では一体何を着たらよいのだろうか。

今回の結婚式の主はなかなか良いところの家系であるらしく式場の格式もかなり高いらしい。
格好ひとつで親戚筋から何を言われるかわかったもんじゃない。
こうして結婚式の装備に悩むしゅんち一家であった。

 

 

まずはしゅんちの装備である。
やはり、一番無難なのは礼服だと思われるので洋服の青山に向かった。
洋服の青山で礼服と黒いスーツでは違うのか?と質問し、黒さが違うとか高い物ほど黒いレベルが違うだとか黒の深みが違うだとか電気屋の店員が4Kテレビの新製品を説明しているかのようにクドクドと説明してくれた。
こうして、しゅんちの装備が揃った。
しゅんちの装備を紹介していこう。



しゅんち LV41

あたま    そうびなし
からだうえ Eしっこくのれいふく
からだした Eしっこくのズボン
あし     Eクロびかりのれいクツ
アクセサリ Eじゅんぱくのハンカチ



続いてカホとマオはイオンでドレスを購入することに。
2人はディズニープリンセスにでもなったつもりでうっとりしながら試着を繰り返しドレスを選んだ。

2人の装備はこんな感じある。



カホ LV10

あたま   Eやすもののかみかざり
からだうえ Eみずいろドレス
からだした Eしろタイツ
あし     Eぎんいろのパンプス
アクセサリ Eめっきのネックレス

 

 

マオ LV8

あたま   Eやすもののかみかざり
からだうえ Eクリームいろのドレス
からだした Eしろタイツ
あし     Eしろのパンプス
アクセサリ Eめっきのネックレス



一番難関なのは嫁タカコである。
大人女性の装備が一番難しいと思われる。
地味すぎず派手過ぎず豪華すぎず貧相過ぎず。
年相応と生活レベルに合わせた絶妙なバランスが難しそうである。

タカコはある日の美容室でその悩みを告白し、結婚式で1番無難なのは着物だとアドバイスをもらい、散々悩んだ末にその着物案を採用することにした。
そして慣れない着物レンタル屋で何とか予約を取り付けてきたのだった。


タカ「一応、着物のレンタル予約できたんだけど・・・」

しゅ「おお!すげーじゃん!よく行動したね!」


タカ「私も必死だよ・・・」


その必死な表情からいかに着物レンタルが大変だったかを物語っていた。
どうもあまり親切ではないレンタル屋さんで伝統を守る業界ガラなのか相当お高くとまり、そんなの知らない方が常識知らずとあまり詳しく説明もしてくれなかったらしい。

しゅ「でもこれで一安心じゃん」

タカ「ううん・・・まだ足りないものいっぱいあるみたいなの」

しゅ「え?いっぱい!?どんなの?」


タカ「肌じゅばん、すそよけ、おびまくら、半えり・・・」



1個もわからん。


しゅ「・・・今の日本語か?もう1回言って」

タカ「肌じゅばん」

 

 

しゅ「ハダジュバン?」

 

 

 

 

 

フランス語か?



そういえば昔タモリさんがフランス語に聞こえる日本語にアザブジュウバン(麻布十番)と言っていたことを思い出した。

・・こうして、さらなる着物グッズを探し求め、着物屋にやってきたしゅんち達。
この店は最近オープンしたらしく、きっと親切に対応してくれるだろうと狙っていたからである。


店員「いらっしゃいまセー!」


やはりオープンしたてとあって接客に積極的な雰囲気である。
駆け寄ってきてくれた店員は金髪のリーゼントで銀座辺りのホストクラブのオーナーだったかのようなチャラ系で往年のアイドル
諸星和己似の店員である。
名札にはチームリーダーと書かれていたので本部から応援に来たという感じだろうか。


タカ「肌じゅばんはありますか・・・?」

 

 

店員「肌じゅばんスね!もちろんありますヨー!」


普通に知ってんのか?


店員「最近のは
ワンピースタイプスリップタイプがありますが?」




もうわけわかんね。


 

店員「こちらでいかがですか?」

諸星店員に割烹着のようなものを紹介される。


しゅ「肌じゅばんって何なんですかね?」


店員「そうっすよね!普通は知らないですよねぇ。ちょっとこっちに来てもらえます?」


しゅんちは着物を着ているマネキンの横に案内された。

店員「着物は直接着ないんですね。下着みたいのを着るんです。」

しゅ「ほうほう」

店員「肌じゅばんってのは
着物用の下着みたいなもんですかね。」

しゅ「あー!武士が切腹するときに着てるやつですか!?」

店員「んーーまぁ、そうですね」

しゅんちの戯言をよそに黙々と装備を手にとるタカコ。
こうしてアイテムを買い揃え、装備が決まった。



タカコ LV41

あたま    Eわふうのかみかざり
からだうえ1 Eレンタルのきもの
からだうえ2 Eはだじゅばん
からだした  Eすそよけ
あし      Eたび
アクセサリ  Eおびまくら



・・こうしてなんとか家族全員の装備が整ったのだった。

 

あとは当日を迎えるのを待つだけなのだが、大人の不安をよそにカホマオだけはうっとりしながら指折り当日を楽しみにしているのだった。

 

お呼ばれ結婚式の準備とはなかなか大変な事である。

 

・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

第29話「子供のサプライズ作戦」

 

・・ある日、カホとマオが何やらヒソヒソと話していた。

 

マオ「おねーちゃん・・・今度の日曜日お願いね」(ヒソヒソ)

カホ「うん・・・ちゃんとお父さんにお願いするね」(ヒソヒソ)


ヒソヒソ話の内容にあからさまに「お父さん」という単語が聞こえた。
そこで父しゅんちも2人に合わせてヒソヒソ話で話に加わった。


しゅ「どしたー?何話してんのー?」(ヒソヒソ)


カホ「う、ううん!ちょっと内緒!」

マオ「まだおとーにも言えない!」

しゅ「ふぅ~ん あっそう・・・」


恐らく2人は何かのサプライズを仕掛けようとしているのだろう。
おもむろにカレンダーを眺め推理するしゅんち。


10月・・・か。



10月は・・・タカコの誕生日だな。


どうやら2人は今度の日曜日に母タカコに何やらサプライズを仕掛けようとしているらしい。
実際の誕生日は平日なので、父しゅんちに手伝ってもらえる日曜日に仕掛けたいのだろう。
何かプレゼントでも用意するのだろうか。

しかし、過去に2人がサプライズを仕掛けようとして成功した試しは一度も無い。

 

 

過去の事例を紹介しよう・・


 

・サプライズ相手に「今日はビックリする事するから楽しみにしててね」と言ってしまった。

 

・しゅんちの誕生日にサプライズプレゼントをする予定だったのに事前に「プレゼント楽しみ?」と質問してしまった。

 

・バレンタインの時に内緒のはずの手作りチョコを母タカコに台所で叱られながら作ってるところが丸聞こえだった。

 

 

・もはやサプライズをバラしちゃった事をみんなに内緒にしてねと言われた

 

 

しゅんちは友蔵じいさんのごとく

 

「サプライズ 子供にさせたら すぐバレる しゅんち心の俳句」

 

と一句でも読んでしまえる勢いなのだ。

しかし、母の為に一生懸命に用意している姿が可愛らしく思え、2人のやり取りを微笑ましく眺めるしゅんちであった。


・・こうして特に何も触れることなく日曜日を迎えるのだった。


・・日曜日。
今日はマオの習い事があり、タカコとマオが10時から13時まで出掛ける予定である。
しゅんちは朝から自分の部屋を大掃除をしていた。
ほとんど使われず物置状態だった自分の部屋を朝早くから大掛かりに掃除していたのだった。


時刻は10時頃・・・


タカ「じゃあ、そろそろ行ってくるね」

しゅ「ん?おう。いってらっしゃーい」

マオは出掛けにカホに駆け寄り何やらヒソヒソと話しかけた。


・・・


マオ「行ってきまーす」

しゅ「はーい 頑張ってねー」


バタン・・・ シーン


しゅ「さて、掃除の続きをするか・・・」

 

 

 

 

カホ「お父さん!お願いがあるの!」

 

 

しゅ「ん?」


カホ「お母さんにね、誕生日のプレゼントを考えてるんだけどね」


やっぱりそう来たか。


カホ「お花を買いに行きたいの」

しゅ「ほう いいじゃん」

カホ「だからお花屋さんに連れて行って欲しいの」


カホから1,000円を手渡される。
2人のお小遣い感漂う
500円玉2枚である。


カホ「あとはこれなんだけど・・・」


ハンカチを見せるカホ。


カホ「お母さんへのプレゼントなんだよね」

しゅ「あれ?ラッピングはしてないのか?」

カホ「うん・・・お店の人に頼めなくて」

しゅ「ふ~む・・・じゃあ、100円ショップにラッピングも買いに行くか」

カホ「うん!」


こうして1,000円の花束とラッピングを買いに出掛けることになった。

またもや部屋の片づけが進まない状況である。

 

しゅんちの運転で花屋と100円ショップに向かう2人であった。


・・・



カホ「あ!お父さんあと
20分で家に帰らないと!」

しゅ「え?まだ11時40分だぞ?」

カホ「お母さんに12時にはごはん炊いておいてって言われてるの!」

しゅ「でも、2人が帰ってくるの1時でしょ?大丈夫でしょ」

カホ「そっか・・・」


そう言いながらも多少早めに帰る事に。


・・家に着くと駐車場にはあるはずの無いタカコの車が停まっていた・・・!


カホ「えええぇぇえええ!!お母さん帰ってる!?なんで??」

しゅ「ちょちょちょ・・・1時に帰るって言ってたよな」

花束を手に慌てふためくカホとしゅんち。
こんなに派手な花束を手に持ってるところを見られたらサプライズは一目瞭然である。

それにしても花束とは目立つ物だと再認識。キザな男はこんなもの持ち歩いてどいういうつもりだろうか。

 

 

しゅ「お、落ち着け・・・俺が様子を伺ってくる!カホは花束を座席の下に隠しとけ!」

カホ「う、うん・・・」


何食わぬ顔で玄関のドアを開けタカコの様子を伺うしゅんち。
リビングを覗くとタカコはソファーで雑誌を読みながらくつろいでいた。

 

 

しゅ「ただいま~・・・どうしたん?帰り早いじゃん?」

タカ「あ、おかえりー 駐車場混んでたから、私だけ帰ってきちゃった」

しゅ「あー、そうなんだ。また迎えに行くの?」

タカ「うん。あれ?カホは?」

しゅ「あ、いや・・・ちょっと車に居るみたい」

タカ「ふうん」

そういうと特に怪しむ雰囲気も無く、雑誌を読み続けるタカコ。

しゅんちはそそくさと車に戻り、カホに状況を伝える。

 

・・・

 

しゅ「何か1人で帰ってきちゃったらしいぞ・・・!」

カホ「えーと えーと 花束どうしよう・・・」

しゅ「俺が何とかわからないようにクローゼットにでも隠しておくからカホはお母さんの気を引いといてくれ」

カホ「わ、わかったー・・・大丈夫かな?」


カホを先頭に再び家に戻る2人。

もうすでに色々怪しい雰囲気が出てしまっている。

カホ「お母さんただいまー。ご飯これから炊くねー」

タカ「あれ?まだやってないの?」

カホ「うん。す、すぐやるねー」

タカ「あっそう・・・お願いねー」

プレゼントを用意してたから準備が遅れたと言い訳もできず米洗いを始めるカホ。
そんなやり取りを2人が話している隙を見計らい花束を背中に隠し、
カニ歩きステップで一気にクローゼットに押し込んだ。
普段は扉がだらしなく常に空いているようなクローゼットが今はきっちり扉が閉められ
かなり不自然ではある。

 

プレゼントと花束を隠し終え、カホをフォローしようとタカコの元へ行くしゅんち。

しゅ「あー・・・ごめんごめん。ちょっと出掛けててさ」

タカ「1時からお昼だからいいけど・・・ご飯が炊けるのギリギリになっちゃうかな」

しゅ「炊き立てごはんって事でいいんじゃない?」

 

タカ「まあいいけど・・・ところで」

 

しゅ「うん?」

 

 

タカ「どこに出掛けてたの?」

 

 

 

しゅ(ビクッ!!)

 

 

 

しゅ「か・・・買い物」
 

 

タカ「ふうん」

あまり深く追求せずに再び雑誌を眺め始めたタカコ。

しゅんちは何とかその場をごまかして部屋に戻り掃除を続けることにした。
するとカホが部屋にやってきた。

カホ「お父さん!花束は!?」(ヒソヒソ)

しゅ「そこのクローゼットの中だよ・・・」(ヒソヒソ)


こっそり覗くカホ。


カホ「お父さんナイス!」

しゅ「ささ、不自然にならないように普段通りにしとこうぜ・・・」

カホは部屋を出て行き、しゅんちはなかなか進まない部屋掃除続けることにした。


コンコン・・・


タカ「掃除はかどってる~?」

 

 

雑誌を読み終えたタカコが暇になったのかしゅんちの掃除の進捗をからかいに来たらしい。

しゅ「いやーなかなか進まんのよ」

タカ「でもだいぶ片付いてきたんじゃない?」

しゅ「この荷物がしまう所無いかなーと迷ってるんだよね」

タカ「あー・・・そうだね。物置もいっぱいだしね」

しゅ「この荷物かさばるんだよな」


タカ「じゃあ・・・

 

 

 

そこのクローゼットにしまえば?」





しゅ(ビクッ!!)



・・・



・・・




しゅ「クローゼットはいいや」



タカ「?」




しゅ「また考えるわ」




タカ「あ、あ、そう・・・」

まさか「置けるかどうかクローゼットを開けて確かめてみよう」などという展開にならぬよう不愛想に対応し何とかこの場をごまかしたしゅんち。
まさに危機一髪である。


・・時刻は1時前になり、タカコがマオを迎えに行く時間になった。


タカ「じゃあ、マオ迎えに行ってくるね」

しゅ「ほーい。いってらっしゃ~い」


タカコが玄関を出るタイミングを見計らって、すぐにカホを呼び出す。


しゅ「カホ!ちょっと来い!ラッピングしよう!」

カホ「うん!今のうちにやっちゃおう」


クローゼットからプレゼントとラッピング袋を取り出す。

と、その時リビングの扉が開く音が聞こえた。

 

カホ「あ!?あれ!?お母さん帰って来たよ!」

しゅ「え!?なんで!?隠せ隠せ!早くっ!」

 

部屋に飛び込んできたタカコ。
しゅんちは後ろで慌てふためくカホが見えないように平静を装いながらタカコの前に立ちはだかった。


しゅ「え、えーっと・・ど、どうしたのかな?」

タカ「車のキー持ってない?」

ふとポケットを探ると確かにキーがあった。
いつもは玄関のキー置き場に置くと決まっているのだが、焦って持ってきてしまったらしい。

しゅ「あ、ごめん・・・俺が持ってた」

タカ「んもーっ」


キーを渡しタカコが部屋を出て行った。

そして慌ててカホを呼ぶしゅんち。


しゅ「カホカホ!ちょっと来い!」

カホ「な、何?」

しゅ「あのな・・」

カホ「うん?」



しゅ「たぶんな・・・」

カホ「たぶん?」





しゅ「もうバレてると思う」




カホ「えーーーなんで!?」

しゅ「だってさ、さっきから俺たち
挙動不審すぎるもん」

 

カホ「・・きょどうふしんって何?」

 

しゅ「あー・・・えーと、怪しい行動ってか雰囲気って意味だよ」

 

カホ「そうかなー?」

しゅ「とにかく、どちらにしてもお昼食べたらすぐにプレゼントしちゃおう・・・。もう持ちこたえられんわ」

カホ「うん、わかったー・・・」

何かサプライズ的な事を仕掛けてる雰囲気はもう感じてしまっているのではないだろうか。

 

勘の良いタカコに対しこれ以上引っ張るのは無理だと判断した。

そこでお昼を食べたら即決行することにしたのだった。

 

こうしてマオが帰ってきて、ご飯も炊きあがり、みんなでお昼を食べた。

カホ「ごちそうさまー・・・」

カホは食後にYoutubeをのんびり見始めた。

しゅ「ちょちょちょっ カホ!カホ!」

カホ「なぁに?」

しゅ「もうプレゼントするんだろ!?」

カホ「あ、そうか」

1人で焦ってるしゅんち。


しゅ「マオ!ちょっと来て!」

マオ「どうしたの~?」

しゅんちはマオにサプライズプレゼントを今することを説明した。

カホ・マオ「うん!わかった!やろう!」

しゅ「よし!頼むぞ!」

バレてるかバレてないかは定かではないが、もう決行である。


カホ・マオ「お母さん~!」



せーーーのっ





カホ・マオ「ハッピーバーースデー!」


タカ「えー・・・?」

 

カホ・マオ「お誕生日おめでと~~!」

 

タカ「何か用意してくれてたんだ?」

リアクションからは何も知らなかった様子である。
サプライズはうまくいったのだろう・・・か?

タカ「可愛いラッピングだね。開けてもいい?」

カホ「うん!」

プレゼントを開けるとカホの用意したハンカチが出て来た。

カホ「お母さん最近ね、持ってるハンカチ少ないと思ったんだよね」

タカ「あー よくわかってたね」


どうやらカホはタカコが手持ちのハンカチが少ないと知っていてこのプレゼントを選んだらしいのだ。
ただの思いつきで手に取ったプレゼントではなかったらしい。

 

タカ「こっちの袋は?」

マオ「開けてみて!」

袋を開けると手作りのキーホルダーとお手製のバースデーカードが出て来た。

タカ「えー?こんなのいつの間に作ってたの?」

マオ「お母さんにバレないように毎日少しずつ作ってたんだよ」


手作りのキーホルダーにはマオが自分で書いたウサギの絵が色鉛筆で描かれていた。
何でウサギなのかは謎だが何となくその絵は良い味を出していた。

タカ「いや~ あなた達もサプライズをバレずにできるようになったんだねぇ」


ニコニコ顔のカホとマオ。


タカ「2人ともありがとうね」


いつもは子供には厳しく接し、甘やかすような発言はしないタカコ。
性格的にも大げさに驚いたり喜んだりはしない。

恐らく本当に嬉しかったのだろう。

こうして見事にサプライズプレゼントをやり遂げたカホとマオ。
母を本当に喜ばせたいという気持ちがヒシヒシと伝わって来た。
いつも厳しくしつけられている2人なのだが母との強い絆を目の当たりにしたのだった。

2人の成長を嬉しく思う父しゅんちであった。

 

 

まとめ読みお疲れさまでした~!
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