膵炎と便秘:慢性膵炎の原因となる便秘の予防と治し方

 

便秘は、内臓臓器に炎症を生じさせる腸内細菌(悪玉菌)を増殖させ、それが原因となって急性膵炎や慢性膵炎の発症原因となります。膵炎の発症原因は、従来、アルコールの飲用、胆石及び原因不明の特発性膵炎の3つが考えられていました。しかし、最近の研究により、腸内細菌の悪玉菌が腸内及び胆管内を逆流し、それが膵管を経由して膵臓に到達することによって膵炎が発症することが明らかになってきました。膵炎の再発予防と病状の進展を防ぐためには、腸内環境を改善することが膵炎対策につながります。ここでは、「膵炎と便秘:慢性膵炎の原因となる便秘の予防と治し方」についてお話します。

 

膵臓の機能

膵臓は、みぞおち(肋骨の下部)とへその間にあり、形は左右に細長く、長さ約10cmから15cm、厚さ約2cm程度であり、30歳代で臓器重量がピークに達して100gから120gに達した後、加齢とともに徐々に減少します。膵臓には、主に2つの異なる機能があります。1つは、血糖値を下げるインスリン等のホルモンや、血糖値を上げるグルカゴン等のホルモンを産生し、血糖をコントロールする機能です。これらのホルモンは、膵臓で産生された後、血管内の血液中に放出されて、その機能が発現します。これを内分泌機能といいます。2つ目は、食べ物を食べた時の消化に必要な消化酵素類を産生し、膵液として十二指腸の管内に分泌する機能です。消化酵素類には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白質を分解するトリプシン、キモトリプシンやカルポキシペプチダーゼ、脂肪を分解するリパーゼ等が含まれます。これらの消化酵素類は、血管内ではなく十二指腸という消化管内に分泌されますので、この膵臓の機能を外分泌機能といいます。さらに、膵液には、酸度の強い胃酸を中和する機能があります。胃液又は胃内容物は、胃酸のために強い酸性度を示します。胃の内容物は、十二指腸に運ばれることになりますが、十二指腸に移動した胃内容物は、膵液の酸中和作用によって、ほぼ中性となります。このように膵臓には、血糖のコントロール及び栄養源の消化吸収という重要な役割があります。

 

膵液は、膵管とよばれる管に入ります。膵管は胆汁が流れる総胆管につながっていて、膵液と胆汁が混じった管が十二指腸につながり開口しています。つまり、膵臓は、管を通して消化管である十二指腸と接合していることになります。このような膵管の解剖学的特性はとても重要となります。すなわち、消化管内容物は、排泄のための肛門への移動のみならず、膵臓や総胆管を通じた肝臓へも、直接的に移動することができることを意味します。後述するように、このような膵臓の解剖学的特性は、腸内容物に含まれる腸内細菌の侵入経路となり、その結果、膵臓の腸内細菌による感染が生じる原因ともなるのです。

 

膵炎

膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎とがあります。膵炎は、主に外分泌機能に関連し発症します。通常、膵臓内で作られる消化酵素は不活性であり、炭水化物、蛋白質あるいは脂肪を分解する能力はございません。この不活性な消化酵素が十二指腸に分泌されて、はじめてそれら栄養成分を分解することができる活性体へと変化します。しかし、膵炎では、膵臓内において、本来なら不活性な状態で存在する各種の消化酵素が、活性化された状態となり、それにより膵臓が障害されます。

 

急性膵炎

急性膵炎は、なんらかの原因で膵臓に急性の炎症が生じ、それを原因として膵臓内の不活性な消化酵素が活性化されてしまうために生じる疾患です。膵臓内で不活性な消化酵素が活性化されますと、膵臓自らが活性化された消化酵素によって消化・分解され、膵臓組織の壊死、膵臓の肥大化(浮腫)や出血が起こります。炎症を起こした膵臓からは、活性化された消化酵素や他の臓器に悪影響を及ぼすさまざまな物質が多量に放出され、血液中に移行します。そのため、心臓、肺、肝臓、腎臓、消化器などの臓器が障害を受け、それらの臓器も機能しなくなり、さまざまな症状が現れます。

 

急性膵炎の症状で最も多いのが腹痛です。特に、上腹部から背部にわたり、激しい痛みがあります。軽い痛みの人も時におられますが、腹部の痛みは軽くても激痛であっても持続します。上部の腹痛に次いで多いのが、吐き気と嘔吐です。嘔吐しても、腹痛は治まることなく持続します。背部に痛みを感じるのも急性膵炎の特徴です。その他、食欲不振や膨満感などの症状も現れます。このような症状は、徐々に現れることもあれば、食事後に突然激しい腹痛を伴うこともあります。これらの症状は、症状が出始めてから徐々に重症化することもあります。急性膵炎では、入院が必要となる場合がほとんどです。

 

慢性膵炎

慢性膵炎は、膵臓の炎症が繰り返され、その結果、膵臓の正常な組織が壊されてしまい、またそれに伴い繊維化が生じて膵臓が硬くなってしまう病気です。膵臓の正常な細胞が減り続けますと、膵臓の内分泌機能及び外分泌機能ともに低下します。内分泌機能の低下は、インスリンやグルカゴンの分泌不全が生じ、血糖値のコントロールがうまくいかなくなり、糖尿病や低血糖による症状が現れます。外分泌機能が低下しますと、消化管での栄養成分の分解が停滞してしまい、栄養不良による諸症状が現れます。カロリー源となる炭水化物や脂肪の分解が停止してしまうために、極端に痩せた状態となります。摂取した食物中に含まれる脂肪の分解が停止しますと、脂肪は吸収されることなく、そのままの形で糞便に排泄されます。そのため、慢性膵炎の排便では、便が白色になることがあります。これは、摂取した脂肪分の未消化未吸収によるもので、脂肪便といいます。

 

慢性膵炎は、その病状の進行度によって、代償期、繊維化移行期、非代償期の3つに区分されます。代償期とは、適切な治療等によって膵炎が治る病気の初期のことをいいます。非代償期とは、繊維化が進み、そのため膵臓が硬くなってしまい膵炎が治りにくい病期のことをいいます。慢性膵炎の代償期(初期)では、症状として上腹部痛、腰背部痛、全身倦怠感(体がだるい)があります。腹痛は、慢性膵炎の80%の方にみられ、通常、鎮痛剤では効きにくい頑固な難治性の痛みです。痛みは、アルコールの摂取、暴飲暴食、脂肪分の多い食事などをきっかけに、食後数時間後から始まります。この腹痛は次第に消え、日常生活に影響しなくなります。そこで、再度不摂生な食生活が始まりますと、また腹痛が生じます。これを繰り返すことによって、初期軽度の膵炎の病状が次第に悪化することとなります。ですので、腹痛が繰り返すようであれば、まずは病院にて慢性膵炎の検査を受け、規則正しい食生活に心掛けることが、これ以上病状を悪化させないために重要となります。腹痛は膵炎の炎症によるものですが、この腹痛を繰り返しますと、膵臓の正常細胞が壊死を起こし脱落(無くなる)します。細胞が脱落しますと、ちょうど肝硬変のように、その部位に繊維成分が蓄積します。この慢性膵炎の病期を「繊維化移行期」といいます。膵臓も肝臓と同様に、繊維化で硬くなるのです。この病期になりますと、腹部レントゲン検査や腹部超音波診断等の画像診断で、腹痛が無くても慢性膵炎が疑われることとなります。膵臓の繊維化がさらに進行しまと、内分泌機能及び外分泌機能ともに顕著に低下し、さまざまな全身性の症状が現れることになります。内分泌機能の低下は、膵性糖尿病を発現させます。また外分泌機能の低下は、高度な胃腸障害をもたらし、顕著な栄養障害が現れます。この病期を非代償期といい、元の正常な膵臓に回復することが困難となります。

 

膵炎の原因

膵炎は、細菌やウイルス感染、胆石、アルコールの多飲、薬剤、外傷、膵胆管系の先天異常など、多くの原因で発症すると考えられています。しかし、未だに原因を特定することができない家族性膵炎あるいは特発性膵炎などとよばれる膵炎があります。

 

急性膵炎を繰り返しますと、慢性膵炎になることが多いです。慢性膵炎では、膵臓の炎症を繰り返すことによって、組織が硬くなり、そのため正常な膵臓の細胞が滑落してしまうために膵臓の内分泌機能及び外分泌機能が低下します。

 

膵炎の原因の多くは、胆石とアルコールの飲用であるといわれています。胆石については、十二指腸に流れる膵液が胆管内にてその流れを止めてしまうために、消化酵素を含む膵液が膵臓内に逆流してしまい膵炎が生じることになります。他方、従来、アルコールの飲用は膵炎の原因になるといわれていましたが、その臨床的なエビデンスは明らかではなく、アルコールの飲用が膵炎の原因となるか否かについては再検証が必要となります。なぜならば、アルコールが膵炎の原因となるメカニズムが不明であること、またアルコールを飲用する人は非常に多いのにもかかわらず、それに対して膵炎の発症頻度がそれほど高くない理由によるものです。膵炎の原因については、胆石によるものを除けば、今もなお不明であると言わざるを得ません。

 

そんな中、膵炎の発症原因について、新たな知見が蓄積されつつあります。それは腸内に生息する腸内細菌が起炎菌となって膵炎を発症させるというものです。腸内細菌は、腸管のいたるところに生息していますが、特に、大腸に生息する腸内細菌の数は非常に多いです。この腸内細菌のうち起炎性を有する腸内細菌(悪玉菌)が、腸内を逆流し、十二指腸の開口口である膵胆管に入り込み、さらに膵管に入り込んで膵臓内に到達します。膵臓内に到達した腸内細菌は、そこで炎症を起こさせ、膵炎が発症するというメカニズムです。これは、イヌを用いた動物実験で、膵炎が生じることが証明されました。この発見によって、いままで原因不明とされていた膵炎の発症メカニズムが明らかとなりました。今後、膵炎の発症機序として、悪玉菌による腸内細菌説が祐陸になるものと思われます。

 

膵炎と便秘

腸内環境の良し悪しは、急性膵炎の再発と重症化あるいは急性膵炎から慢性膵炎への移行に大きく影響します。膵炎の治療方針として、抗菌剤が用いられることがあります。この治療は、炎症を起こした膵臓及びその周辺組織の腸内細菌による感染壊死を防ぐ目的で行われます。しかし、抗菌剤の長期使用は耐性菌の出現の観点から不適当であり、また腸内細菌の死滅によって激しい下痢が生じ、栄養状態が悪化するという欠点があります。抗菌剤の使用は、膵炎の予防に最適ではないといえます。膵炎の発症と予防で大事なことは、いかにして悪玉菌の少ない良好な腸内環境を整えるのかです。

 

便秘になりますと、大腸菌などの膵炎の原因となる悪玉菌が増えた状態となり、腸内環境が悪化します。腸内環境の悪化は、膵炎の病状を悪化させる原因となりますので、膵炎時の便秘は速やかに解消させる必要があります。また、それと同時に、悪玉菌が増えた腸内環境を改善させる必要があります。すなわち、膵炎時の便秘対策に求められるものは、便秘の解消と腸内環境の改善の2つの側面が必要となります。

 

ゴボウ、アスパラ、ニンニクなどの根菜類や野菜類に含まれるイヌリン食物繊維は、水溶性の食物繊維であり、水によく溶け、また他の食物繊維とは異なり、水に溶けた状態で膨潤化・ゲル化しない特徴を持つ機能性食物繊維です。このようなイヌリン食物繊維の物理化学的性質は、摂取しても膨満感を与えず、また野菜類に多く含まれるセルロースなどの不溶性食物繊維とは異なり、腸管粘膜を物理的に刺激することがない特徴を有します。

 

イヌリン食物繊維には、便秘の解消・予防と腸内環境を整える2つの機能があります。イヌリン食物繊維は、大腸内に生息するビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を特異的に増やす作用があります。その一方で、大腸菌などの悪玉菌を増やす作用はなく、そのため、イヌリン食物繊維を摂取しますと、善玉菌のみが増えることとなります。人に生息する腸内細菌の数はほぼ一定していますので、善玉菌が増えますと悪玉菌は相対的に減少することとなります。イヌリン食物繊維は、各種天然成分のうち、腸内環境を改善させることのできる最も効果の高い食品栄養成分であるといえるのです。ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌は、便秘の原因となる便の硬化を防止する効果にすぐれ、それにより便秘を改善させます。膵炎の再発防止と膵炎の悪化の抑制には、腸内環境を改善させることが最も効果的です。そのような観点からも、イヌリン食物繊維は、膵炎対策として非常に有効な食品成分であるといえます。今では、スティムフローラのように非常に高純度で不純物を含まないイヌリン食物繊維が、健康補助食品として市販されています。膵炎対策に、このような健康補助食品を活用することも、とても有用となります。

 

近年、膵炎患者さんの増加が著しいと報告されています。患者さん自らができる膵炎対策は、腸内環境の改善です。膵炎は、最終的に感染症を発症し、死に至る怖い病気です。重症になる前に、未然に予防することがとても重要となります。

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