神戸新聞 正平調 2020.3.17より | 瞬間(とき)の栞 

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幸せ、癒し、心の栄養になる「本と言葉」をご紹介してゆきます。
個人的な読書感想文、読書随想です。本の内容、あらすじができるだけ解るように努めています。
ただしネタバレがありますので充分ご注意ください!

僕の幼馴染にHちゃんという子がいました。

その男の子は、障碍がありました。

 

 

 

近所に住んでいて、野球が好きな

男の子でした。よく一緒に遊びました。

 

 

 
小学校に入る前から、よくボール遊びを

していました。ボール遊びをしていると

彼は本当に楽しそうでした。

 

 

 

Hちゃんのお母さんは、彼を小学校の

普通の学級に通わせました。

 

 

 

小学校でHちゃんは、いじめ

られました。

僕は何度か彼をかばいました。

怖かったけど、かばいました。

が、その後もいじめは続いていたと

思われます。それでも彼は強かった。

泣いたところを一度も見たことが

ありませんでした。

 

 

 

Hちゃんのお母さんは、先生に相談

していたと思います。キャンプの前日、

僕の家に彼のお母さんが来て、先生に

僕と同じ班にしてもらったことを告げ、

「どうかHのことをよろしくお願いします」

と僕の母と僕に頭を下げました。

 

 

 

僕は幼いながらも、そのとき何らかの

責任を感じたと思います。キャンプの

ときは何もなく、彼との笑顔の思い出が

アルバムの写真の中にあります。

 

 

 

彼は本当にやさしい子でした。しかし、

僕は彼に対してやさしかったかどうか。

僕は彼以外にも友達と遊びたかった。

けど、彼は・・・・・・

 

 

 

彼はいつもボールとグローブを持って

僕の家に来ました。僕は他の子と遊ぶ

言うと、一人で壁にボールを当てて

遊んでいました。

 

 

 

 

ごめん、あのとき・・・・・・

寂しそうに一人で壁にボールを当てて

いた姿が、今も目の前に甦ってきます。

 

 

 

そんなことを、今朝の正平調を見て

思い出しました。

 

 

 

 

重い知的障害のある人たちが暮らす施設で、

声をかけられた。「あんなあ、あんなあ」。

どうかしたの? 「地震、地震」。

海外で地震が相次いでいたころである。

「お祈り、お祈り」

 

 

 

(中略)

 

 

 

「地震、苦しんでる人、守ってください」-

 

 

 

◆ひとの心の痛みをわがことのように悲しんだり、

ひとの喜ぶさまに自然と笑みがこぼれたり。

 

 

 

そうした感受性や共感力にふれ、人間の心の豊かさを知る。

たとえ障害があっても。言葉で伝えることが難しくとも

 

 

 

Hちゃんも、そんな子でした。

人の痛みをわかるやさしい子でした。

 

 

 

中学からは別々になり、その後、会ったことが

ありません。Hちゃんはあのときの小学生のまま

であり、僕はおじさんになってしまいました。

 

 

 

「Hちゃん、今も元気にしてる?」

 

 

 

 

 

 

4年前、知的障碍者施設「やまゆり園」で起きた

殺傷事件。

 

 

 

「意思疎通のできない障害者は不幸」というねじれ

曲がった思想のもと45人を殺傷した被告にきのう、

死刑判決が下った

 

 

 

◆「みんなを助けたい」、その一心だったのだろう。

恐怖に満ちた現場で、拘束された職員に頼まれ、

110番をかけるための携帯電話を取りに行った

入所者がいる。自らも刺され、痛みをこらえながら、

である◆奪われし命、奪われし尊厳。

 

 

 

 

感受性

共感力

人間の心の豊かさ

 

 

今朝から何度もループする音。

 

 

 

 

【出典】

 

神戸新聞 朝刊 正平調 2020.3.17