向精神薬由来症状/離脱症状の安全な取り組み方の検討と治療 9 | 藤原航太針灸院

藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

~ベンゾ離脱症例の治療応答から見える基礎病態と将来性~

 

幾度と無く検討を続けている内容ですが、治療反応性や経過等も踏まえた上でベンゾ離脱期の身体状態を探る事は、当該事情を抱えた場合の生活向上と安定性に繋げられると考えています。先ずは「良くなる」情報に目を向ける意義が何処まであるかを振り返る必要があります。「悪くなる」情報の集積と、当該情報の真似をしないさせないの支えがなければ簡単に人間は「悪くなる」ものです。個人や組織問わず、臨床論が濃厚な媒体にも発信理由と背景は存在し、意図を読み解かなければ悪い意味で全て「治る」手段です。

 

「治る」を鵜呑みにすれば鎮痛薬も向精神薬も治療薬として標榜されています。また、人間相手の臨床に昇華させる前段階の研究も、データは幾らでも弄り倒す事が出来るのは知られた話です。それらを踏まえた上で、最低限のリスクで症状の改善に努める必要性が、薬剤性由来の症例には必要と捉えています。現行医療の第一選択はどうしても薬物です。その薬物で具合が悪くなり、具合の悪さの表現理由に、神経伝達物質のレセプタ側や神経節前側、内分泌の問題が存在する病態理解があって初めて、更に薬物を突っ込むリスクの意義が問われる段階にようやく踏み入れる事が出来ると思います。

 

只、人間は具合の悪さに比例して感情論が先走る生き物で、時に冷静さを失った行動は自滅へ繋げてしまいます。それが向精神薬絡みの場合、最も鋭敏且つ顕著な印象を持ち、薬物が絡んだ上でのギャンブル的な手段の成功率は極端に低いものです。抹消~中枢神経の解剖生理は恒久性が乏しく、更に脈管や骨格等の構造的な脆弱性や既往の有無、遺伝的な問題が存在し、其処にベンゾ離脱が上乗せされて全身を振り回し続ける為、日常的な不安定性と予想だにしないイレギュラーが頻発するのは常と思います。

 

セルフコントロールが難しい中枢神経にダメージを来す為、身体/精神/環境ストレス他、最大リスクの服薬変動で悪くする事は簡単でも、持続的な症状改善と安定性を獲得するには相応の理由と相互理解が必要になると実感します。前項では脱落症例に繋がる患者思考と行動を幾つか並べました。「薬効自覚なし = 一気断薬は問題ない」「ベンゾ以外は離脱症状がない」「2~4週間の漸減を経れば離脱症状は出ない」「〇〇病は治ったから薬は要らない」「離脱症状は良きものだ」等です。

 

この思考が基礎に存在した場合、私の知る限り、100%が以後の増悪と再度の躓き、立ち直りが不可能になる程の悪循環が約束されます。ベンゾの危機意識を得た上で集める情報も、時に要らぬリスクを招き入れるケースも散見され、具合が悪い状態も継続すると、一気断薬や急減薬等のハイリスクな手段も問題なくクリア出来ると解釈し始める印象を持ちます。

 

病態を読む前提に「〇〇の症状が出たからベンゾ離脱」はありません。「〇〇の症状が出る部位にダメージを受ければベンゾ離脱でなくても同様の症状が出る」が正しい解釈と思い、後は時系列に沿わせて確定するしか手段は存在しないのが実情です。ベンゾ離脱は極めて広範囲の部位にダメージを受ける為、様々な中枢神経症状が惹起されるだけの事で、中枢神経の損傷理由のカテゴリ内にベンゾ離脱が存在する、が最も近い考え方と推測されます。

 

一般的に知られた中枢神経の損傷理由に、外傷や腫瘍、感染や自己免疫疾患、神経毒やアルコールの類が存在しますが、そのカテゴリ内にベンゾ離脱が存在するとイメージするのが理解も早いのではないかと思います。GABAレセプタをエンハンスし、当該レセプタのダウンレギュレーションにより、前駆体となるグルタミン酸のレセプタ(NMDAやAMPA等)のアップレギュレートによる興奮と共に、モノアミン系の持続的な過剰分泌と、コルチゾルを代表とする内分泌異常が全身症状へ反映されるものと推測されます。

 

それを更に細分化すると、酸素要求量の高い網膜や心筋、脳神経の中では視神経や内耳神経(前庭神経/蝸牛神経)がダメージを受け易く、また、これらは身体症状として自覚され易い為に、早期段階で違和感として自覚出来る症状群に溢れてくると思います。興奮をすると恒常性を保とうとする生理的な現象により、あらゆる栄養が奪われ続けると解釈するのが適当かもしれません。

 

どのような損傷理由でも軽度であれば自然回復し、結果論ですが、仮に断薬後も5~10年に渡って症状が残存している状態は、自然回復の時期は十分に過ぎていると解釈する事も可能であり、ベンゾ離脱の基礎病態を読み解く重要な鍵になります。また、これらは中枢神経由来に限らず末梢神経由来でも同様です。

 

症状解釈の前提に、何故そのような解釈が行われるのか、何を信頼しているかを知る必要があります。モノアミン仮説、BDNF仮説、ドパミン仮説、グルタミン酸仮説など様々存在しますが、症状の追跡結果によっては時に矛盾が生じたり、当該仮説では足りなかったり、反論が確実に存在するのは、一言で述べられる問題が中枢神経で惹起されている訳ではない事も意味します。しかし、多くの症状は当該部位が破壊された為に生じているか、または1が破壊された為に2も破壊されるドミノ倒し型に分類されると思われます。

 

中枢神経の回復に向け、炎症性サイトカインと神経新生の働きと機能を数年に渡り見続けていますが、このような極めて局所的な考察も、古くから意見は対立しています。大雑把に述べるとサイトカインは神経新生を抑制する意見、サイトカインは神経新生を促進する意見です。このような対極した意見も、治療反応を知る事で答えに近づける事が出来るかもしれません。薬物をアレコレとチョイスしながら反応を伺う手段と異なり、針刺し行為で生じる生理的現象のみで症状群を追跡出来るのは、治療手段の切り札が一枚しかないように見えて、純粋に病態の基礎を読み取れる側面もあります。

 

只、直接的にアプローチが出来る末梢神経由来の症状群であれば、治療応答も早い為に判断が付き易いのですが、如何せん脳や脊髄は解剖的にも間接的なアプローチしか出来ない部位である事が、治療上のネックとして常に存在します。それでも尚、探せば応用が効かせられる部位も人間には存在し、積極的なアプローチを行い続けて見えてきた側面からも答えは後者に近く、サイトカインは神経新生に一役買っていると個人的に感じています。

 

要は程度の差なのでしょう。薬物的に例えれば有効域と毒の域、破壊レベルか回復レベルかの違いであり、サイトカインの分泌と随伴するプロスタンディンやブラジキニン、ヒスタミンやセロトニンの類もネガティブな立ち位置から、視点を変える事で回復に努められるファクターとして陽の目を見る事が出来ます。それを意図的に介入させ続ける事で、神経細胞の回復の獲得と、結果論として改善自覚が得られるのなら、後は如何に安全域で作用を高め続けられるか、長期作用を齎す事が出来るかを検討する事で、確実性と再現性の向上と共に、ニーズとなる症状改善自覚へ向けての速度向上に繋げられると思います。

 

~ベンゾ離脱の持続性と不安定性の理由、リスク回避の手段を考える~

 

ベンゾ離脱に特化して診ている訳ではありませんが、数年来に渡り中心的に考えているのは、その困難性故です。また、特化して診ていない為、異なる由来を持つ他症例との治療反応性や追跡結果の比較も容易で、ベンゾ離脱で惹起する中枢神経症状の持続性や不安定性、その他の事情による困難性が浮き彫りになります。

 

他の向精神薬や中枢神経に反応する鎮痛薬や類似性物質も含め、一旦は一律に考えても良いかもしれませんが、如何なる物質の取り込みの際にも問題視しなければならないのは当該物質による神経適応で、服薬群の母体全体で抑制を掛ける制度的な回避手段の1つとして処方期限の設定が挙げられます。多くの国はこれらの懸念より2~4週間内までと定められていますが、日本には処方期限が存在しない為、漫然と処方されている限り回避は不可能に近くなります。

 

それでも尚、ここ2~3年はベンゾの風当たりも強く、昨年の診療報酬の改定時も、多くが12か月以上の処方で減算処置が取られたり、PMDAの常用量離脱症状の発表等、様々な制度的な変化や発信に、神経適応を来した群には身体/精神面への影響も散見され、制度依存、鵜呑みの代償となる症例も目立ちます。制度依存のデメリットは、その制度が常に当人にとって都合良く動かない事です。

 

只、ベンゾ離脱の事情を既知していれば、PMDAの発表も無視出来ますし、減算処置に伴う収益の問題から、エンドユーザーとなる患者側の身体/精神面の弊害を避ける対応も存在する程度の改定です。問題は両者がベンゾ離脱の事情を知らない、又は軽視した事で発生する急減薬や一気断薬、ケースによっては増量等の弊害です。当該薬物の販売が終わらない限り、知っていれば避けられるリスクは多いですし、例えば2019年3月にロヒプノールが販売中止になりますが、代替品の存在を知っていれば大きなリスクも避けられます。その為、既知未知の差は大きく将来を変えていきます。

 

「副作用はないですよ」「依存性はないですよ」「皆飲んでますよ」「5~10年飲み続けても平気ですよ」「死ぬまで飲んでますよ」「離脱症状はないですよ」「禁断症状はないですよ」「ネットや本に書かれている事は嘘ですよ」「フラつく?筋肉が弱ったからですよ」「頭痛い?鎮痛剤出しときます」「今の症状は疾患が悪化したからですよ」「新たな疾患が併発したのかもしれないですね」「薬止めたら具合悪くなった?そりゃ未だ病気が治っていない証拠です」etc…と伝えられた方も多くいるでしょう。そして今も多くの方が上記のような伝達でベンゾを飲み始めている、飲み続けていると思いますが、最早これは避けられないと思います。本人が気が付くまで見守るしかありません。

 

他、病名に依存する患者側の社会的メリットと改善に於けるネガティブもあります。傷病名に依存するメリットは、社会/経済的な保護を見越せる要素があります。疾病に利得を求める以上、スタートもゴールも解決もありませんが、どのような症状も包括出来る傷病名の数々と、それに関わる制度がベンゾ離脱の発展を打ち消し続ける理由と考えられます。

 

ベンゾ離脱の存在に気付いたとしても、今の症状がベンゾ離脱だとしても、直ぐに良くなる事もありませんし、知ったばかりの弊害も多く、最大リスクが患者の手元に在る薬剤性由来の安全面への配慮等、様々な障壁やトラブルは常に存在し、多くの困難を抱えている中でも、安定性を高める手段を考える必要があります。未だ離脱症状は謎も多く、離脱症状と気付いた時点で精神衛生が崩壊する例も散見されますが、それは何故かと考えると、離脱症状の基礎病態が知られていない(知らない)からなのかもしれません。

 

「知られていない=治らない」の図式を思い描く方々も散見されますが、それは短絡的で短気な思考です。既存の傷病の数々が「知られている=治る」でもないように、また、情報提供元が薬物治療を中心とした現行医療からの発信となる為、当該治療内容の臨床背景に沿った発信内容となる事も踏まえなければなりません。また、傷病名があっての薬物治療と情報発信である事も踏まえた上での読み解き方も必要です。どのような傷病も長期化すれば、大概は殆ど同じ薬物に帰結しているのは数年来変わりませんが、どのような症状が問題ではなく、どのような服薬歴かにより、その特性に沿った薬剤性の症状を無視した現況は残念でなりません。

 

他、知っている知らないの話は聞いた相手、調べた情報先で変わる為、どうでも良い事に気付く必要もありますし、知っているとする人の話が正しいかどうかも分かりません。その為、当該事情を抱えた当人が実体験した現象が全てとなる思考と、その集積から基礎病態を考え続ける事で、事実性の高い相応のリスク回避と改善にベクトルが向けられれば、不安と恐怖は払拭されるはずです。

 

1)神経適応の負の側面

 

冒頭でも触れましたが、中枢神経に反応を及ぼす物質の連用で生じる問題は神経適応です。薬剤耐性の獲得による常用量離脱症状の存在や概念が希薄である事が1つ、惹起された症状群も既存傷病名として刷られる為、薬剤の弊害が希薄な事が挙げられます。当該物質に適応すると、その物質無しでは生存が難しい身体機能に陥る事を意味し、その物質を手放す事でベンゾやアルコールであれば、GABAによる全身の鎮静や抑制が乏しくなり、関連周囲の暴走が身体/精神面へ反映され続けます。

 

世間的にベンゾ離脱は統合失調症の陽性/陰性反応を往来する症状群に溢れる為、ベンゾの中長期的な連用が背景にあり、統合失調症と診断された大半は、薬剤性の統合失調症と捉えるのは自然ですが、実際にはそのような事もありません。目下の症状と傷病名で物事は進む為、当該人物が抱えた時間経過で生じた服薬の仕方が軽視されがちです。他、当該患者の多くにメジャーが処方され、改善自覚が得られているケースが散見される事からも、ベンゾ離脱の基礎病態が見えてきます。恒常的に抑制の効かない身体環境に人間は陥ると、常に興奮状態が継続し、その継続的な興奮状態の暴露時間と強さにより、予後が変化していくものと推測されます。

 

2)断薬後も残存する症状から基礎病態を考える

 

遷延性離脱症候群と捉えられている状態を指します。GABAやグリシン等の抑制性、モノアミンと総称される興奮性のバランスが、ベンゾ離脱の事情を抱える事で恒常性を失し、当該部位や関連部位の神経損傷、内分泌異常が生じ、それに応じた症状が惹起されます。しかし、止めたからと解決する問題でもありませんし、止める事で酷くなる場合もありますし、止め方次第で上記の暴露時間の延長が誘導され、神経損傷が際立つ結果を残す懸念もあります。

 

ベンゾ離脱の基礎病態を解くカギに、断薬後も数年~数十年に渡り症状が残存する理由を読む必要性を感じます。結論から述べると、当時の特に急性期に生じた度合いで左右されると考えられます。上記の理由に脳や脊髄の神経細胞の受傷や、それに付随する機能/器質面の脆弱性、内分泌異常様症状が含まれる為、一言で片付けられませんが、壊れている為にネガティブな症状を自覚する理由が生まれ、壊れる部位によって症状は変わり、壊れ方次第で症状の表現内容も変わるだけで、受傷由来問わず同様と捉えています。それが前項でも述べた、ベンゾ離脱には明確な専売特許的な症状が存在しない理由となり、星の数ほど在る傷病名に雲隠れする事が、ベンゾ離脱と見抜けない理由かもしれません。

 

3)神経細胞の受傷要因と初発損傷部位を考える

 

人間は環境に適合する為、日々適切量の神経細胞の破壊と再生は繰り返されています。それが何処かでエラーが生じ、エラーの継続が至ると症状として自覚するネガティブが生じ、それに応じた症状群に対して傷病名が割り振りされます。

 

例えばそれが末梢神経の問題であれば、損傷部位が神経根か神経叢か神経幹か単根か、対称性か非対称性か単肢か、脊椎の内側か外側か、腫瘍性や骨性、ヘルニアや靭帯の硬化骨化による圧迫か、自己免疫性の持続的な炎症か、仕事や家事の持続的な摩擦や牽引、外傷による炎症を初発とする受傷か、知覚神経か運動神経か、自律神経も巻き込んでいるか、併発かダブルクラッシュか、画像所見や血液検査、神経電図や筋電図ではどうかでも傷病名は異なりますが、症状だけにスポットを当てれば変化はありません。

 

また、これらも種々環境で症状の変動はありますし、栄養リザーブの状態と消費次第で日内日差に変動は見られる他、サーカディアンリズムの影響も大きいでしょう。では、ベンゾ離脱の受傷部位は何処でしょうか。脳や脊髄に存在するベンゾジアゼピンの結合部位です。その為、当該部位の機能/器質面の改善が得られない限り、症状は持続すると考えられます。

 

神経適応を惹起する中長期的な連用によるネガティブは、GABAレセプタのダウンレギュレートによる諸々の興奮性神経伝達物質の暴走ですが、それは1つの結果論で、枝葉の症状に対して傷病名を割り当ててもキリがありませんし、割り当てたところで治りません。どうでも良い事は考えない事が得策ですが、どうでも良い傷病名を宛がわれたり、新規傷病名を唱える意義はないと考えているものの、どうでも良い段階で右往左往しているケースも多く見受けられる事から、考え方の違いとするしかありません。どのような理由で傷めたかにベンゾ離脱の概念がないだけですし、その回復を見越す為に傷病名は必要ありません。

 

4)神経細胞の破壊要因を知る

 

ベンゾ離脱の受傷要因の代表例に脳幹から分枝する脳神経由来の症状を度々挙げていますが、当該損傷理由も興奮性が基礎にある酸素消費量の高度な神経細胞からの受傷と見て取れます。筋硬直が生じる部位も、脊椎の可動性に依存する易惹起性の側面と治療反応性から、脊髄細胞膜のGABAレセプタの機能/器質面の異常と捉える事も出来ますし、濃厚にレセプタが存在する部位は大脳~小脳でもある為、その影響は広範囲に及ぶと考えられます。

 

個人的には外部の情報を入力する大脳皮質から視床へ掛けての経路の受傷が様々な不規則な症状として表現させる他、両側の視床にダメージを来した末での視床痛を彷彿とさせる四肢対称性、全身性の疼痛性症状が日常生活で支障を来す要因と捉えています。ベンゾ離脱に限らず様々な理由で中枢神経は受傷しますが、ベンゾ離脱は興奮性の神経伝達物質がGABAレセプタの機能異常によって抑制が効かない事、持続性を持つ事で生じる諸々の反映と考えるのが理解は早いかもしれません。

 

中枢神経の栄養の主となるグルコースは過剰且つ持続的に消費されてケトン代謝へ移行し、脂肪やアミノ酸(タンパク質)の急速な消費による痩せ現象や低血糖様症状もあれば、神経細胞保護の役割を持つチアミン等のビタミンや当該トランスポーターの異常によるウェルニッケ脳症や脚気のような症状群、上記で触れた持続性を興奮性による酸素要求量の高度な脳神経側からの受傷と発症、諸々の身体/精神に及ぶ諸症状と対峙する為に生じるコルチゾルを代表とする持続的な必要以上の分泌と、それも至ればネガティブフィードバックに伴う下垂体前葉の機能低下等が表現として出始めます。

 

4)既に破壊された神経細胞の今後を考える

 

同一レセプタをエンハンスする物質のアルコールの代謝過程で生じる酢酸が、アル中患者にとっては中枢神経への栄養を担う側面があり、ベンゾ離脱症例でも応用は可能な印象を受けるものの、評価出来る程の症例が存在しない事からも次点としますが、酢酸による中枢神経への栄養適応の話はさて置き、以後の諸々の持続的な興奮性に伴う段階的な受傷は、ベンゾ離脱と類似します。

 

問題は、既に破壊され、且つ自然回復が望めないレベルの神経細胞が、上記に例として挙げた糖質やチアミンを代表とするビタミン群、アミノ酸の摂取で、且つ中枢神経に至るには血液脳幹門と言われる関所が存在する中で、何処まで意義のある行為かと、その目的を把握する必要性もあります。ベンゾ離脱では栄養摂取を重視するケースが高く、それは無駄な事ではないと考えていますが、好発的な中枢神経の受傷例として脳血管障害や脊髄損傷の類と栄養摂取面で考えてみます。受傷後、急性期から回復期を経たと思われる時期に、上記の栄養群を積極的に摂取し続けた事での改善例はどれほど存在するでしょうか。

 

これらの事例からも、栄養摂取で期待が出来るのは急性期の進行抑制に限定する見方と考えられますが、決して無駄な事ではありません。常用量離脱症状を抱える中でもテーパーの段階で、その都度で急性期と停滞期、回復期は存在します。先述した通り、断薬後の残存する症状群の種類や内容、度合いは急性期の度合いに依存する印象は否めない現状もある事から、ベンゾ離脱を既知した上での今後を見越した対策になるでしょう。

 

5)経口による栄養の消化と吸収、代謝の問題

 

上記では急性期の栄養摂取の必要性と目的に対して触れましたが、そもそも論としてベンゾ離脱に気が付くには相応の時間が既に経過している事が問題として挙げられます。その為、4)の理屈が通用するには幾つかの条件や課題があり、a)既にベンゾ離脱と既知している上での以後の減薬過程、b)胃腸機能に障害を持っていない、c)持続的な高いストレスによる本能的な糖質過多な栄養偏向を修正出来るか、d)アルコールやカフェイン等の嗜好品を何処まで制限出来るか、e)そもそも食欲はあるか等が必要となります。

 

そのような中、個人的に最も懸念のある条件がb)です。既にベンゾ離脱で脳幹から分枝する迷走神経に異常を来している限り、胃腸機能は健全に機能する事はなく、タイミングにもよりますが、経口からの栄養も垂れ流しとなるか糞詰まりになるかの両極端な現象が生じ易く、理想と称される食事を摂り続けても、中枢神経由来の胃腸機能の脆弱性を抱えている限り、その期待は裏切られ続ける結果に終わります。

 

また、ベンゾ離脱は統合失調症の陽性/陰性症状を往来するかのような症状群に対して薬剤性の未知既知問わずメジャーが処方され易い事は述べましたが、メジャーは食欲も促す為に処方されがちです。前者であれば大概はセロクエルやジプレキサ、後者はドグマチールの類が当初の処方で目立ちますが、食欲の亢進が迷走神経の改善に繋がる訳ではない為、特に意味のある行為ではありません。他、敢えて表題に経口と付けたのは、重篤化すると経口では効果が出難く、静脈注射や点滴に移行する群も存在する為です。出来る限りの面倒を省く為にも、経口で済むレベルで推移するのも大切かもしれません。

 

6)ベンゾ結合部位の回復を考える

 

口から入れたベンゾジアゼピンという薬物が、ベンゾ部位と結合する事でチャネルが開口し、シナプス間隙ではGABAの濃度上昇とそれに応じた流入量により全身の鎮静や抑制が働く結果、様々な面でベンゾは活用されています。何故ここまで大きな問題として身体/精神面に悪影響を及ぼす理由となるのかも、冒頭で述べた中長期的な連用(短期で起きる場合も勿論ありますが、あくまで傾向としての話です)による神経適応に帰結します。

 

また、常々相応の量がベンゾ部位に結合する事は通常考え難く、それは都度の飲食物や、先で述べた迷走神経側の機能状況、薬物代謝の酵素の機能面等に依存する為、毎日のように同じ効き方をするとは限らないと考えるのも自然です。他、ベンゾ離脱を惹起して以降、その多くは「飲んでも効かない」と表現をします。その理由はどのような事が考えられるでしょうか。1つはベンゾ離脱そのものが、既に薬物が脳や脊髄に足りていない状態の為に表現される症状群です。それも「効かない」理由の1つかもしれません。

 

もう1つは「効いていない感じがする」も考える必要があります。当該レセプタをエンハンスするアルコールでイメージをすると良いかもしれませんが、アルコールも毎日同量の摂取をしたとしても、鎮静や抑制、所謂「酔い」の度合いは異なると思います。その度合いは上記の基礎的な身体環境の影響以外にも、飲む環境や、飲む時の身体/精神状態で変動する事は多くの方が経験していると思います。例えば面倒臭い接待や付き合い等の高い緊張状態が持続する環境で飲むアルコールは「飲んでも効かない」傾向があるかもしれません。反面、極めて身体疲労が強い時に摂取するアルコールは普段以上の酔いを齎すと思います。

 

それと同様、ベンゾ離脱で持続性の高い興奮状態が基礎に存在しても「飲んでも効かない」場合も考えられますし、仮に飲んでも効かないからと増量しても、結果は変わらないばかりか中毒性の症状が目立ち始める理由に繋がるのかもしれません。得てして、ベンゾ部位はベンゾやアルコール、神経ステロイド等で日常的に暴露される他、カフェイン等の覚醒系物質で機能したり、日常生活で生じる身体/精神/環境ストレスに対抗する為に機能したりと常々忙しない部位です。その機能をベンゾ離脱が奪い続けています。次点としてベンゾ部位とベンゾとの結合を外す薬物も数多く存在する為、当該薬物を好んで摂取している場合も落ち着きはみられません。

 

ベンゾ部位の安定性と機能/器質面の向上を見越す為の対策は、結果論として表現される症状群の自覚の抑制に繋がりますが、患者自己で出来る行為は極力様々なストレスに曝されないように注意する事しかないと思います。それでも尚、ベンゾ部位もアミノ酸で構成され、栄養は血液によって運ばれると推測される為、機能/器質面の回復も他部位と同様の理屈で十分な安定性が得られる経過を辿るのは現場でも見ているつもりです。

 

7)治療反応性を辿る事で見えるベンゾ離脱の基礎病態

 

どのような症例も治療反応性を追跡する事でしか伝えられない、得られない部分も多く、それが画像所見や血液検査の数値に反映されない症状群であれば尚更ですし、仮に異常が認められたとしても、症状とリンクしている可能性も予想以上に少ない事も数多く存在します。また、ベンゾ離脱により鎮静や抑制の恒常性機能が奪われるものの、全くのゼロではないと思いますし、自己で症状の増悪を抑制出来る手段もベンゾ離脱の概要を知れば存在する事から、ある程度の無駄を省いた日常を送り続ける事も可能です。

 

実際の現場では自力回復が不可能と患者自身が判断した症例しか集まりませんので、その逆となる自然回復例がどれほどのレベルで推移しているかは分からない部分も多いですが、如何に悪い環境の中だとしても、軟着陸を繰り返しながら地味に回復している例も存在します。その為、ベンゾ離脱だとしても決して命や人生を奪う結果に直結する事もありませんし、リスクを回避しつつ丁寧に過ごせば安定性も得られます。ベンゾ離脱と気付いてから人生が終わったような表現をされる方も多くいますし、実際に仕事や生活、家庭を失するエピソードも数多く存在しますが、気付いた段階でどのように動くかにより、以後も左右されます。

 

只、個人的にはベンゾ離脱に気付く契機となる情報も、0か100かの極端な例に溢れ、今以上に悪くならない為に、一旦の維持に努められる丁度良さが存在しないと感じています。扇動する情報には大きなリスクと意図が存在すると考えていますが、具合が悪くなる程、感情に訴えかける乱暴な表現に誘導されます。また、仮にテーパーする際も生真面目で計画性に沿う性格が後々仇になる例も多く存在する印象もあり、予想以上に適当に捉える位が精神衛生上も楽かもしれませんし、柔軟性を持つ事は生真面目な方にとって難しいかもしれませんが、徐々にでも良い意味での適当さの取り入れが今後の糧になるかもしれません。

 

このようにベンゾ離脱を知った上でも、情報収集の内容次第では引き続き不安も多い状況ですが、それでも尚、更に情報の取捨選択や、危険性が生じた症例から当該患者の思考や行為を観察し、無駄を知る事が出来れば、先ずは曲がりなりにも症状の安定性は得られ、重篤化の回避に繋がるでしょう。

 

~まとめ~

 

原因はベンゾが結合するベンゾ部位からの派生であると推測され、脳神経細胞等の受傷理由に、GABAレセプタのダウンレギュレーションによる抑制性機能の破綻が考えられます。抑制性機能の破綻の前段階では、GADが追随出来ないGABA前駆体となるグルタミン酸と当該レセプタのアップレギュレートによって過剰流入を起こし、抑制性神経伝達物質の合成不全による興奮性神経伝達物質の持続分泌に伴う内・外分泌異常が生じ、長期に及べば下垂体前葉機能の低下が訪れる等、経時経年で症状は移り変わります。

 

部位別で生じる症状群を羅列するとキリはありませんが、如何なる部位の症状だとしても、広範囲に存在するベンゾ部位の機能/器質面の改善が得られない限り、上記で述べた枝葉の受傷部位と、受傷部位から生じる症状群の安定性は得られないと現場を通じて実感します。

 

解剖生理の恒久性が乏しい人間は、生まれ以て脈管系や筋走行、骨格の奇形は珍しくありませんし、既往の有無や内容でも変化します。アプローチ部位の配置箇所や数も異なり、それを見越した包括的な構築と、解剖的に治療ツールも限定され、症状の変動自覚を評価されるには高力価、長時間型の作用を要します。他、既存傷病名への信頼度や捉え方、向精神薬等に対しての考え方やリスクの認知度によっても、その後の行為に反映されるでしょう。

 

只、あらゆる事情はさて置き、また、傷め方の理由は何であったとしても、細胞は何によって栄養され、どのようにすれば罹患部位に栄養が届けられるかを考えると、その手段と希望が見えてきます。

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