治療ツール/健康食品の弊害 | 藤原航太針灸院

藤原航太針灸院

痛み・痺れ・麻痺・自律神経症状の難治例の検証と臨床

「治療」や「健康食品」等と謳われていれば、あたかも身体に良さそうなイメージがありますが、諸手を挙げて提案や提供が出来ないケースもあります。以下は大まかにシリコーンとシリコンの2つの内容に分かれていますが、一見有害性の低いと思われているこの2つが、時に身体へ影響を与える懸念もあります。針治療を受ける人、健康食品を摂取する人とは、どのような状態でしょうか。「どこか具合が悪い人」です。「どこか具合が悪い人」と、「どこも具合の悪くない人」では大きく前提が異なる事を考える必要があります。

 

多くのメーカーが出している注射針や鍼灸用の針の表面には、皮膚を貫く際の切れを高め、目的地までの滑りが良くなるようにシリコーン(silicone)コーティングがされています。このシリコーンが体内に残留するのではないかと業界的には古くから話題の種ですが、体内に残留するか否かの情報を知らない(見つけられない)のが実際です。各メーカーで塗布方法も異なれば、コーティングの強度も異なると思いますし、明確なデータがない今は「残留する可能性もある」、という観点で私はノンコーティングを使用し続けています。「有害情報がない」=「安全」とは言い切れないのが実情です。参考までにこのような情報はありました。http://www.medtecjapan.com/ja/news/2012/09/11/120

 

>>図5:MED-4159の摩擦に対する影響。穿刺繰り返しにより一定量の潤滑油が剥がれ、穿刺後の穿刺力が増加している。

 

簡単に説明すると、刺したり抜いたりを繰り返すことで、シリコーンが剥げ、刺した時の痛みが増したとの事です。只、これだけでは体内に残留したかは分かりません。体外で留まっている(皮膚上に残っている)かもしれません。また、体外に留まってくれたからと、シリコーンの経皮吸収の有無や、有とした場合の有害性も解決していない話題ですし、こちらのデータも当該メーカーのみの話なので、全体の話でもありません。ひとつだけ分かった事は、シリコーンが残留するかは分からないものの、シリコーンが表面に塗られた針を刺すと、剥げ落ちてどっかにいく可能性があるのは確かな模様です。結論として、このような思いを巡らせて時間を浪費したり、不確定要素を抱えたまま針を刺すのであれば、引き続きノンコーティングの針を使い続けていたほうが安心と思いました。

 

※シリコーンコーティングされた針を刺入後、抜針時に体内に残留するイメージです

 

シリコーンは様々な分野で幅広く使われています。勿論、低分子から高分子を始めとした様々な質の差異はあると思いますが、理解を早める為に一つ例を挙げると、身近なものに美容形成への使用があります。その理由に「代謝できない」をメリットに、形成部位の保持に役目を果たしています。身体に良いか悪いかはこの場では言及しませんが(調べれば色々書かれていますが…)、形を作って体内の同一部位に留めておく場合や、口から入れてそのまま便で出る場合等であれば、リスクはゼロではないものの、低く抑えられるのかもしれません。ではこれが針治療のように、「頻回治療を要し、一度に複数箇所に穿刺を行う手段」の場合、コーティング剤のリスクも視野に入れる必要が生まれます。

上記では、通称的なノンシリコンとは書かずにノンコーティングと書きましたが、その理由に切れや滑りを良くする試行錯誤は、シリコーン以前は水銀を塗布していた時代もありました。このようにシリコーンに代わり水銀を塗布したり、体内に針を埋め込み、永久に取り出せない状態にする治療法なども古くはあり、この実際は今の高齢となった方々から直接伺う機会もあります。時代により情報や水準も異なる為、今になればどの角度から考えても恐ろしい手段も、当時は一般的、当たり前だった事は、この分野に限らず沢山あるかもしれません。今後も様々なコーティング剤は誕生すると思いますが、切れや滑りを良くする試みには、何らかのリスクがあるのは変わらないと思います。

コーティング剤が塗布された器具を用いた場合の、治療を由来とする体内残留の有無は定かでないものの、仮に残留した場合は異物性肉芽腫の懸念が生まれるのは知られた話です。仮にそのような過程を経てしまうと考えた場合、以下のような状況で残留すると推測されます。刺入時には図の上段のようにコーティング剤が皮膚上へ逃げてしまえば意味がない為、制作側の理想は図の中段を目指していると思います。只、針(鍼)とて名目上は治療行為ですが、異物を体内に入れる行為には変わらないので、体外へ排泄しようとする生理的な働きが関与し、刺入時よりも抜針時の摩擦抵抗が高くなる傾向があります。摩擦抵抗の高まりは、図の下段のような、体内でのコーティング剤の剥げも示唆されます。それが上記でも触れた潤滑油=シリコーンの行方が体内であれば、心配事が増えてしまいます。

異物であるシリコーンを排出しようと、様々な生理的反応が体内で生じますが、「代謝されない」故に、その物質(この場合はシリコーン)は封じ込められます。また、異物が残存している以上、遷延的に炎症を惹起し続ける可能性が考えられています。この状態を封入体とも表現します。封入体の形成は代謝されない物質、自然退縮しない物質全てで同様な事が言える為、シリコーンに限った話ではありませんが、仮説として刺針部位にシリコーンが残留し、封入体が形成されたとします。

 

刺針部位は直接的にも間接的にもイコールとして罹患部位でもあり、罹患部位への栄養の促通を見込む為の部位でもあり、何れも当該部位に封入体が形成された場合は、罹患部位の改善には不健全な栄養状態になる可能性が考えられます。下の画像は例として非乾酪性肉芽腫の病理です。この通り位置配列に異常が起きます。位置配列の異常は栄養の促通の不健全も示唆される為、罹患部位改善の遅延が示唆される他、それ以前の大問題として、治療行為で蓄積し続けている可能性もあるとしたら、それは避けたいところです。

 

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「ケイ素と離脱症状」

上記の内容を少々まとめると、シリコン(ケイ素)とシリコーン(ケイ素樹脂)は異なりますが、両者はシリカ(二酸化ケイ素)から精製されます。前項では注射針や鍼灸針、その他の医療器具にコーティングされたシリコーンが体内に残留した場合、異物性肉芽腫により遷延性の炎症を惹起する懸念に触れました。シリコーンが毒なのではなく、シリコーンで封入された部位の脈管系の位置配列に異常を来す事で栄養供給が不健全に陥ったり、遷延的な炎症により、内分泌や外分泌、神経伝達物質に変動を来すドミノ倒しの状態になる可能性の示唆です。体内残留の実際は調査し難い側面もある為、データ自体が存在せず、憶測の域を超えるものではありませんが、異物と認識した生体は排泄機能が働く環境を有している為、抜針時の抵抗が高いのは現場感覚からも手応えで分かります。

 

患者感覚としては、刺す時よりも抜く時のほうが抵抗感が高い(痛い)ケースは少なくありませんし、術者感覚としては、刺す時よりも抜く時の抵抗感が高い(刺す時よりも抜く時のほうが力を要する)ケースも少なくありません。抵抗の高まりは摩擦抵抗の高まりを意味する為、体内にシリコーンが残留するのは容易にイメージが付きます。このような理由により、ノンシリコン及び他のコーティングも一切されていない無垢の針を販売しているメーカーも存在しますし、コーティング剤を用いない代わりに、針先や針体に工夫をしているメーカーも存在します。その最もたる両者の理由に、治療由来の疼痛軽減を見込む為です。しかし、コーティングが施された針の滑りや切れは、無垢の針とは比較出来ないほど滑らかかもしれません。

 

以後のリスクを無視し、目先のニーズである「痛くないように」を優先した場合、コーティングが施された用具が選ばれます。恐らく、シェアはコーティング済みの針が大半を占めていると思います。また、多くの薬品には添加物としてケイ素が用いられています※1)。この通り、毒性自体は恐らく相当低いと思います。一部ラットに対する検証では※2) 

 

以下転載

 

反復投与毒性 (link to TOXLINE) 50mgの無定形二酸化ケイ素を3ヶ月間ラットに経口投与したが、何ら異常所見は認められなかった。但し、実験の詳細は明らかにされていない。1) (Malten & Zielhuis, 1964)1群雄ラット10匹からなる4群に、それぞれ0%、0.2%、1.0%、2.5%の割合で微粉砕したシリカゲルを28日間、混餌投与した。死亡率、肉眼による剖検結果に異常は認められなかった。2.5%投与群では有意に体重増加率の減少をきたし、1.0%投与群では有意差は認められなかったものの、体重増加減少の傾向が認められた。他の観察項目では異常が認められなかった。1) (Keller, 1958)

 

転載終了

 

とネガティブな情報も存在しますが、大方は飲んだものは排泄される、又は胃腸のポリマー化により、胃もたれや胃酸過多の改善、ガスの易排泄等のメリットが得られます。只、上記で触れたケイ素による体重増加率の減少と、胃腸のポリマー化の関連性を考えてみます。ポリマー化と表現すると分かり辛いので、コーティング(被膜形成)と表現を変えます。より分かり易いよう、以下の表現も併せて転載します※3)。

 

以下転載

 

シリコンオイルに加工され「食品添加物消泡剤」として活用される物質で、身近な食品や化粧品の製造工程で泡が残らないようにするために添加されています。このシリコーン消泡剤は泡の表面張力を奪い、泡の膜を破るようにして泡を消していきます。そして泡の発生予防にも持続的に効果を発揮します。体内では消化吸収されず、そのまま排出されるため、人体には無害ですし、他の物質と化学反応を起こすということもないという面でも安全です。

 

転載終了

 

摂取量及び継続期間によっては胃腸にコーティングがされる為、食事から摂取した栄養が吸収されず、上記ラットのように体重の増加率が減少したと仮説が立てられた場合、消化や吸収が難しくなるのは、食事からの栄養だけではない可能性もあります。

冒頭に戻りますが、ケイ素自体は強い毒性を持つ可能性は低いと思います。しかし、代謝されない為、封入された部位では脈管系の位置配列異常や遷延的な炎症を示唆する、自己の生理的反応による身体/精神状態の増悪の懸念があります。また、口から飲んでも同様に、強い毒性を発現する可能性は低いと思います。しかし、口から肛門までの通り道となる胃腸にコーティングが施された場合、胃腸そのものに(臓器そのものに)症状を抱えている場合であれば恩恵を受ける可能性もありますが、栄養の吸収が邪魔され、体重の増加率が減少する懸念があります。

 

余談ながら、中枢神経に至る鎮痛薬や向精神薬の類による離脱症状で、胃腸機能の低下は珍しくありませんが、大概はこの手の胃腸薬では無効例が並びます。先述した通り、ケイ素によって恩恵を受ける症状は、胃腸そのもの(臓器そのもの)に不具合を抱えている場合であり、離脱症状による胃腸機能の低下は、胃腸機能を支配する脳神経、迷走神経由来と考えられます。では、服薬中で離脱症状(常用量離脱症状)を抱えている場合はどうでしょうか。

 

只でさえ綱渡り状態のデリケートな日々のなか、ケイ素により胃腸がコーティングされ、薬品の消化や吸収が阻害されたとしたら(※注 CYP3A4(P450)を代表とする代謝酵素云々ではなく、臓器自体がコーティングされての阻害)、離脱症状が増悪する可能性も考えられます。イメージし易いよう、服薬中且つ離脱症状を抱えている方が、胃腸にコーティングが施される量のケイ素を飲んだ場合の、離脱症状の増悪の流れを以下にまとめると、

 

1)ケイ素を飲む
2)胃腸に被膜が作られる(胃腸にコーティングがされる)
3)薬品の消化や吸収が悪くなる
4)離脱症状の悪化

 

このようになります。この場合、一気断薬や急減薬等による急性増悪を示すのではなく、微量減量の時と類似した、緩慢な増悪傾向を呈するかもしれません。その為、逆に増悪理由が把握し辛いケースもあります。ケイ素は胃腸薬や健康食品としても販売されていますが、個々人の背景により、現在の症状の増悪を示す可能性も考えられます。その為、あらゆるリスク(未知なるリスクも含め)を踏まえた場合、健康を謳う物質の摂取にも、慎重にならざるを得ないかもしれません。

 

※1)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000336088.pdf

※2)http://www.jpec.gr.jp/detail=normal&date=safet…/…/dani2.html

※3)http://nongus.la-ku.info/syouhouzai/

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 イメージ 1 ~針治療から病態定義の見直しを~