世界一周タビスト、かじえいせいの『旅が人生の大切なことを教えてくれた』 

世界一周、2度の離婚、事業の失敗、大地震を乗り越え、コロナ禍でもしぶとく生き抜く『老春時代』の処世術

未練カフェ

2019年06月24日 | 100の力
「あなたと一緒にここでカフェをやりましょう」

彼女はボクの顔をふくよかな胸で包みながら

甘い吐息とともにささやいた。


「二人でやればきっとうまくいくわ」

彼女の言葉は不思議な力を持っている。

まるで魔女のような。

彼女の吐く一語一句が

ボクの心の深いところに突き刺さる。


何の疑いもなくそう思えてきた。

彼女となら、やれる!と。

確信できた。


毎日毎夜、

何度となく二人で愛を確かめ

夢を語り合った。





ほとんど諦めかけていた。

ほったらかしの敷地は雑草に覆われ、荒れ果てていた。

家の中はどこも手の付けられないくらいモノが溢れかえり、

散乱している。


まるで荒んだボクの心の中を投影するかのように。


一人ではどうしようもなかった。

ボクは旅支度をしていた。

心に死に装束を纏って。


だが、

彼女の言葉にほだされて

ここに留まり、

一からやり直そうと覚悟を決めた。




ボクは背負っていた重い荷物を下ろした。




それからというもの、

ボクたちは気が狂ったように再開に向け動き、

二人の新しい息吹を注ぎ込んでいった。




生まれた赤ちゃんを祝福する(bless)ように、

名前を付け、

看板を掲げ、

キッチンを片付け

見違えるように復活した。



深い愛を感じ、

幸せの絶頂にいた。


そこに一転の迷いも疑いもなかった。


雲一つない澄みきった青空の下にいるように

愛(亜維)を信じ切っていた。





それから半年、

彼女は何事もなかったかのように

忽然と姿を消した。


あれはつかの間の夢だったのか。

悪夢か、甘い夢なのか。


君は機を織る鶴だったのか。

見てはいけない君の本性を見てしまったというのか。



そこに君の姿はなくても、

二人で愛し、語りあった夢は

まぎれもない現実であり、

今も脈々と生きている。




すべてが嘘だったとは思いたくない。

いや、嘘ではなかったはずだ。

(そう思わなければやるせない)


彼女の意思を継ぎ、

カウンターの中でその面影を追い、

佇む日々。




あの笑顔を忘れない。


Can't get over but should move on.






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