富山県では、産業界の主流は、高度な職業能力を育成し、先端産業の従事者を増やすことを主旋律とする地域振興を考えてきた。しかし、他方で、比較的に高齢層において、低位な職業能力しかもたない年金生活者が増加してきた。また、若年層でも、中・低位の学力層では、商業、特に小売業、対人販売の職域を拡大しないと、いわゆる事務員さんの仕事のIT化についていけない低位な職業能力層の潜在人口があり、しかも、人材難がある。観光業では、危険な作業も、不衛生な汚染環境での作業は少ない。そこで、産業界ではなく、行政の分野での観光の産業化が熱心に勧められている。ただ、観光のインバウンドは、外国人むけとなるので、低位な職業能力層の潜在人口を活用するとしても、そこに異文化への壁がある。外国人を対象とする観光推進は、交通機関や、宿泊施設、物販で働くひとの心理的な文化障壁の存在が阻害要因となる。この点では、タブレットや音声自動翻訳などのサポートがあれば、障壁は低くなると思われるが、地域社会が富山の場合、日本人に対しても「旅の人」を排斥する排外の心性の壁があるので、産業界の主流の空気と、地域社会の空気とが一体化し、「水商売」系統の観光産業の従事者が胸を張れない精神風土には、変化が生じてこない。しかし、このような富山県人の伝統心性は、今後の近未来社会では、富山の経済発展の妨げとなる。行政にとり、非常に頭の痛い問題である。