高齢者への音楽療法&音楽プログラムを再考する その6:認知症予防・進行予防の音楽療法プログラムに必要な視点 vol.2

細江 弥生

 

このシリーズ、少し間が空きましたが前回(その5)からの続きです。前号では、認知症予防や介護予防における音楽療法で重要となるポイントとして、「参加者に役割を持ってもらい自主性を促す」という考え方をご紹介しました。

 

今回は、その考え方を取り入れながらトーンチャイムを使った音楽プログラムを展開している関西のミトさんの活動例を紹介します。

 

ミトさんは、トーンチャイムを使ったグループ活動を行なってきましたが、トーンチャイムをただ演奏するだけでなく、演奏しながら下半身を動かす運動を加えたプログラムを始めたそうです。演奏をしながらの下半身の運動は、グループでの合奏と多重課題を楽しく行えるプログラムとして好評を得て、自治体からの要請や施設からの依頼も増えているというお話です。

 

また、そのグループの中でミトさんは、「参加者の方が役割を持つ」ということも状況に合わせて意識しているそうです。参加者のお一人に前に出てリーダー的役割を担ってもらう、ミトさんのアシスタント役を勤めてもらう、などが例としてあげられます。

 

 

中には演奏活動後のお茶タイムを楽しみにされている方もいらっしゃるそうで、グループに参加するために日程を意識し、体調を整え、お洒落をすることによって生活にハリが出た、という声も聞かれるそうです。

 

認知症予防・進行予防プログラムには「音楽の力」ももちろん大切ですが、そこに「どう上手に心身に良い事柄をプラスできるか」というところも療法士としての大切な役割だと思います。音楽だけの押し付けにならず、参加者の方がいつまでもイキイキと暮らせる総合的なお手伝いに対応できる療法士やプログラムの需要が今後増えてくるであろう、と私は考えています。

 

 

次回、このシリーズの最終回として高齢者への音楽療法&音楽プログラムの再考についてまとめてみたいと思います。

 

 

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