肥料を減らせ!!!(中) | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一

肥料を減らせ!!!(中)

 

今一度、2008年2009年の気象情報を見てみよう。

降水量

降水量

日照時間

日照時間

 

降雨量は、平年の二倍以上。日照時間は前年比、2月が25%減、3月が35%減。という状況では一般的に不作になって当然。結果を書くと、2009年は7%ほど出荷量は減っている。気象条件をみればある程度の減収に抑えられたといってよいと思う(本当は作型が3週間ほど違うので同列の比較は出来ない。2009年作の方が早い)。

まあ、2009年の鹿児島指宿のソラマメは大不作だったそうなので、上出来といえるのではないかと思います

大不作なら価格も高騰していたでしょうしね。

普通の話として不作年に普通にとれるだけで大もうけできるのが農業の最大の魅力でしょう。

では詳しく収量をみてみる。

2009収穫量

2009年収穫量

 

際立って違うのは、歩留まりである。

2008年は最低歩留まりの時には30%台まで落ちたり、60%台もあり平均すると76.9%である。2009年は88.6%と10%以上上昇している。10%といえば少ないように思うかも知れないが、不良率ということでみてみると、2008年23.1%、2009年10.2%と半減しているということになる。

多雨、日照不足の影響をもろに受けたであろう2.3月の歩留まりも86.7%、93.3%と何とか持ちこたえている。

土壌のEC濃度を下げるために肥料を半減したわけだが、2009年に気象条件には非常に合っていたということがいえる。

この結果は驚くことではないし、私は何度も経験してきたことである。多雨、日照不足の時にむしろ肥料分(特に窒素)は少ないほうがよい。

この調査では作型が違うので比較しにくいのであるが、2008年と2009年は1-3月は収穫時期が被っている。その時期の比較をしてみる。

2008.2009同時期比較

 

収穫日は両年がずれているので両方示している。1-3月期に限定すると、2009年の規格重量は二倍に達している。作型が違うので一概には比較できないとはいえ、大きな差だ。

繰り返しになるが、2009年の鹿児島の指宿ではソラマメ作は良くなかったと聞いているが、降雨量や日照時間を見れば当然のことだと思われる。鹿児島の指宿は無霜地帯で早出しがメインだと思われるので、この差は大きい。

このように施肥量の適正化というのは非常に効果が大きいのである。なまじの資材を使って5-10%の収量アップなんぞよりも遙かに改善効果が高いのである。

いや、むしろ適正施肥なくして、その他の資材で何とかしようとするのはやめろ、といいたい。

 

天候状況が悪い時は、窒素が悪さをするというのは、多くの人は知っている。何故対処しないのかというと、元肥でやっている場合には窒素を土壌からとり出すことが出来ないからだ。

どのような悪影響を窒素が及ぼすのかというと、徒長、倒伏、生理障害、虫害、病気あらゆる症状が出る。天気が悪くとれないのは窒素が結果的に過多になってしまうという現象による。

これについてはこのブログで繰り返し述べてきたが、単純にいえば本来の炭水化物(糖)と窒素(硝酸体窒素などの未消化窒素)のバランスが崩れてしまうためだ。

天候が悪く、光合成による炭素同化が若干鈍ってくると、窒素過多であるとてきめんにバランスが崩れてしまう。しかし、チッソが少なければバランスは崩れにくく、通常通りとは行かなくても9割方はとれるということになる。

このあたりが投入チッソ量をミニマム(最小限)を目指せ!!!と私が力説する理由である。

足りなければ与える方法はいくらでもあるが、投入してしまったものは取り出すことは不可能だからだ。

メカニズム的な話はこのくらいにしておくが、もう一つ注目していただきたい点は、2008年は干ばつにより土壌水分が減ったことによるECの濃度障害である。

干ばつも肥料が多いと増長される。

この点に注目していただきたい理由は、干ばつの際にも肥料を減らしたほうが良く(特にマルチ栽培)、多雨の年にも減らしたほうが良いという結果だ。

2008年、2009年の結果から見えるのは、天候不順の場合、どちらにしても肥料を減らしたほうが結果はよさそうだということになる。つまり、施肥量が同じままなら2008年は肥料過多による濃度障害、2009年は多雨、日照不足による減収に見舞われるということだ。

実際、窒素肥料がミニマムであると天候不順には強い。これが天候不順でとれないといっている人の実際である。まさに「人災」と言える。

それと注意していただきたいのは、問題なのは肥料だけではなく、むしろ堆肥等である。これらの多くは土壌の維持増進のために使用されるため、肥料として意識されていない。しかし、多くの場合、肥料分を含んでおりこれが計算されていない。

実際には肥料が多すぎる問題よりも、堆肥等の過剰投入によって養分過多に陥っているケースが非常に多い。善かれと思って投入した有機質が悪影響を及ぼしているのだ。

また、連作障害といわれる現象も養分過多に陥っていることが多い。

連作が禁じ手といわれる作物でも、土壌の養分管理が過剰ではなく、過少気味だと連作障害が起こりにくい。

今回のようにかなり劇的に変わるケースというのは、珍しいことではないが、試験した年が好天だったりすると分かりにくい。まあ、その場合は肥料代が浮いたと思っていればよいと思います。

なにしろ、肥料代が浮いただけ利益が増えるわけですから。

追加コスト不要。手間も若干減る。

基本的に最も最初に取り組むべき課題であり、容易な技術だ。

私は20年以上このことを訴え続けているが、未だに細かなことから取り組もうとする人が多いのにはいやになってしまう。

まず適正施肥に心がけるべきなのだ。

 

ただし、それだけではないことをちょっと触れておきたい。

ちなみに両年とも5つの圃場で調査を行っているが、ほぼ同一気象、品種、施肥、耕起で行っているのであるが圃場によってこれだけの違いが出る。

圃場別収量

圃場別収穫量

 

解析の結果、土壌硬度分布の違いによって生まれているのはわかっている。

特に実入りの数については、土壌硬度分布の影響を強く受けているようだ。

土壌条件は基本的に同じで、耕起方法もロータリーのみで同じはずであるが、土壌硬度分布の違いが生まれていたのである。当時、私は土壌硬度分布というのは簡単には変えられないものだと考えていたため、それに対しての対処方法が分からなかった。現在であれば、より有効なアドバイスが出来たかも知れない。

この土壌硬度分布の最適にする方法を模索しているのが、農業を科学する研究会である。

土壌硬度分布の違いは、同じように管理しても違う場合が多いが、同じ人が長年管理していると似通ってくる傾向がある。この五つの圃場の素性については聞いてはいないが、何らかの違いが出る原因があったのかも知れない。

これは適正施肥の話ではないが、私が考えるもう一つの重要な要素である。

なお、この公開が可能な調査に関しては、まだまだ報告できることがたくさんある。

機会があれば公表したいと思っている。

 

次回は後編になるが、実際にどのようにして肥料を減らして行ったら良いかという実務的なことを書いてみよう。


農業を科学する研究会 土壌硬度の均一性評価(β版)を正会員になると使用できる予定です。

 

Agsoil株式会社 土壌硬度の均一性評価(β版)を提供します。

 

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