母性愛 前編母性愛 後編

2020年03月23日

母性愛 中編

気が付きゃディヤルバクルのアリーの家に来て2週間が過ぎてる

ここ迄10日ここで14日だから···もうすぐ1ヶ月経つ てことはもうすぐウイリアムのイランビザのカウントが始まる これからイラクに入り1ヶ月は旅することになるだろうにあと何日世話になろうかなんて話は全くしてない

ボクたちはスッカリ腰を落ち着けてしまった

何しろアリーの家(アパート)は竹下通りみたいなオシャレな店の並ぶストリート沿いにあって5階からエレベーターを使って降りて扉を開けてすぐ右に8m歩いてアパートの玄関を開けてすぐ右の3段ほどのステップを下って8m歩けば竹下通りと言う便利の良さだ城壁に囲われている旧市街まで歩いても15分 ボクらは新市街とは別の旧新市街と呼ばれるエリアにいる
店という店がひしめいていて通りには新鮮な野菜市場が広がってとにかくモノで一杯だ

ボク達結構歩き尽くしこの2週間で大体の地理は把握した 遊んでくれる友達も沢山できた そして今じゃアリーの仕事中のボク達は部屋の掃除と換気をしてボクが朝ごはんを作ってウイリアムは音楽かけて歌って踊ってご飯食べて後片付けして外に茶を飲みに行く そこでバックギャモン(トルコ名タウラ)に興じるのが日課みたいなものになっていた

そんなある日ボクらの遊んでいるカフェに一人の男が入って来た それを最初に見つけたウイリアムが言った
「おいあいつ日本人じゃないか」
えーどこどこ男はスルリとボクらの席を通り過ぎ奥のテーブル席にちょこんと座って茶を頼んだその顔を遠目から見たボクは言った
「いやあの人は韓国人だ(間違いない)

男の顔はあどけなく色白で光の加減で若干髪の毛が赤く見えてクセのある巻き毛で 服装も持ち物のカバンも日本人の典型的なスタイルからズレている まぁオーストラリア人にはこの違いはわかるまいと鼻であしらうと手の中でサイコロをカラカラさせながら奴は男に向かってコンニチハと声をかけた 男は反応した

なぁにぃぃっそんなバカな····ビックリしたが声をかけたからには話をしようと男を同席させる

彼の名前はタカシ 27歳 ってことはウイリアムと同い年 聞くと母親が韓国人 父親が日本人のハーフでタカシ自身は日本で育ったということだからボクの見立ては完全な間違いではなかったがウイリアムは勝ち誇ってる

ウイリアムはタカシに興味津々だった 彼の醸し出す雰囲気がウイリアムの母性愛をまたしても目覚めさせたようだったそれはタカシが英語を話せなくて 一人の海外旅行も初めてというのが起因していると思う

母親の故郷韓国へは行ったことがあるらしいがその時以来飛行機が苦手ということを知った そのタカシがトルコに3ヶ月間滞在予定でやってきてすでに1ヶ月いるというのだからウイリアムが食いつかないわけがない しかもおよそ観光地とは程遠いこのディヤルバクルだけが目的だ こんなとこへ(とは失礼だ)何しに来たのか訊くとタカシは彼女に会いに来たと答えた

ディヤルバクル出身の彼女とは日本で出会ったそうだ 母親が日本語クラスで生徒を持っていてその中の生徒だった彼女と知り合い恋に落ちこうしてわざわざトルコまで嫌いな飛行機に乗ってやってきて厳しいイスラム教の家庭で育った彼女の家族からは1週間に2度か3度合うことが許してもらえて その日を楽しみに3ヶ月ホテル暮らしをするという 今日は会えない日でここのところお腹の調子も悪くお茶を飲んだらホテルに帰ってボーッとするだけというのだ ウイリアムの母性愛がメラメラしていた

つづく

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