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人類の未来 健康の真実 日本の未来

アメリカの子どもの間で大流行しており、そして日本でも拡大する可能性のある「全身が麻痺したままとなる原因不明の急性疾患」。その背後にあるものは

投稿日:2018年10月14日 更新日:

原因不明の疾患のアメリカでの拡大を伝える報道


Cases of rare polio-like illness affecting children reported in 16 states

今から3年くらい前から気になっていたことについて、その状況が拡大、あるいは一般化してきているような気がしまして、少し書かせていただこうと思います。




 

世界の主要国に「定着」しはじめているかもしれない謎の疾患

2014年に、アメリカに「奇妙な病気」が出現しました。

それは主に子どもに起きる病気で、子どもたちが、「突然、腕や脚あるいは顔の筋肉に異常を起こし、歩くことや動くことができなくなってしまい、場合によっては、まぶたを上げることも、肺の筋肉も不全となることもある」という深刻なものでした。

原因はわからず、治療法もわからないまま、2015年になっても、またその翌年になっても、同じような症状の子どもたちの疾患が報告されました。

アメリカの小児医学界は、この病気を「急性弛緩性脊髄炎」と名づけました。

これは、英語の Acute Flaccid Myelitis から「 AFM 」と呼ばれていますが、この症状を呈する場合の全般を指して「急性弛緩性麻痺」とされ、やはり頭文字をとって「 AFP 」と呼ばれます。

難しそうな日本語ですが、

・急性

・弛緩性

・麻痺

と言葉を分ければ、わかりやすくなるかと思います。つまりは、

「突然、筋肉のコントロールができなくなり、身体の麻痺が起きる」

という病気です。

2014年の時点では、ウイルスなどによる一過性の病気かもしれないと考えられていましたが、今、この AFM の子どもたちの数と「範囲」が拡大しているのです。

アメリカの報道によれば、9月までに、コロラド州、ミネソタ州、イリノイ州、ワシントン州を含む全米 16州から 38の症例が報告されたことが アメリカ疾病管理予防センター ( CDC)から発表されています。

なお、2014年に、アメリカで AFM にかかった子どもたちの数は 120名にのぼりました。

そして、その 120名の子どもたちの「その後の状況」に関しては、中には回復した例もある一方で、 2016年のアメリカの報道の中に以下のような記述があり、かなり厳しいもののようです。

2016年の米国 UPI の報道より

疾病予防管理センターによれば、これまでのところ、アメリカ全国から 32の新たな AMF (急性弛緩性脊髄炎)の症例が報告されているという。2014年には 5ヵ月間に 34の州で 120人の子どもたちが AMF と診断された。

この 2014年に診断された子どもたち 120人のうち 3人が完全に回復した。

ここに、

> 120人のうち 3人が完全に回復した。

とある部分が深刻さを物語っています。発症から 2年も経った後に「 120名のうち完全に回復したのは、たった3人だけ」なのです。

この疾患に関しては、2016年の以下の記事で、初めて取りあげています。

現代の「謎の病気」は主に子どもたちに襲いかかっている : アメリカで急増する「ポリオのような麻痺性の疾患」。そして子どものハンセン病や、正体のわからない様々な疾患

この中に、2016年9月21日の米ワシントンポストの「子どもに麻痺をもたらすポリオのような不可解な疾患の症例が急激に増えている」という記事を抜粋したものを掲載していますが、以下は、その記事の冒頭の部分です。

徐々にではなく、以下のように「ある日突然、症状が始まる」のです。

2016年9月21日の米ワシントンポストより

A mysterious polio-like illness that paralyzes people may be surging this year

7月29日の夕食前まで、バージニア州の 3歳の男の子カーター・ロバーツくんの健康にはどこにもまったく問題がなかった。

その夜、カーターくんは嘔吐した。翌日、目覚めた時にカーターくんには 37.2℃の微熱があり、風邪を引いたのだと母親は思った。

しかし、その翌朝、母親は、カーターくんが寝室の床に倒れているのを発見した。

カーターくんは、「ママ、ぼくを助けて」と言っている。

母親が子どもを抱き上げた時に、カーターくんはかろうじて立つことができる状態で、その首は後ろに反ったままだった。最も心配に思ったことは、彼は右腕を自分で動かすことができなくなっていることだった。

すぐにカーターくんは病院に運ばれたが、右腕が動かなくなった数日後、足や他の筋肉のコントロールも失った。

現在、カーターくんは、つま先を小刻みに動かすことと、顔を左側に動かすことはできるが、他の部分を動かす機能を失っている。

カーターくんは「急性弛緩性脊髄炎」と呼ばれる謎の疾患と診断された。

 

ある日、微熱が出て、その後あっという間に、手も足も顔の筋肉も動かなくなってしまう……。

私はこれを読んだ時に、正直かなりのコワさを感じました。

この 2016年の時点では、

・原因がわからない

・予防法も治療法もない

ということになっていましたが、2018年の今もそれは同じです。

対症療法以外の治療法は一切なく、対症療法といっても、完全に筋肉の機能を失ってしまっているので、短期間ではリハビリなどに至るのは難しいですし、できる対症療法というのは、肺の機能を補助するための人工呼吸器などの措置のようです。

薬物などの治療も基本的に今のところ大きな効果はないと思われます。後でご紹介しますが、この疾患について、日本の厚生労働省が今年発行した文書に以下のようにあります。

厚生労働省「急性弛緩性麻痺の手引き」より

・急性弛緩性脊髄炎(AFM)に対して、今のところ著効する治療はなく、対症療法、支持療法 を中心に行う。

このように書いてあるのですが、その下にはアメリカでの治療例として以下のように書かれています。

急性弛緩性脊髄炎の治療として、静注免疫グロブリン投与、血漿交換、静注ステロイド、抗ウイルス薬の投与が行われる。

日本の報告では、免疫性中枢性・末梢性神経疾患で用いられるメチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法と経静脈的免疫グロブリン大量療法がそれぞれ7~8割の症例で行われていた

というように、それぞれがどんな治療効果があるのかはわからないですが、静注免疫グロブリン投与、血漿交換、静注ステロイド、抗ウイルス薬の投与、というようなことなどが行われるようです。

ここで先ほどの 2016年(最初のアメリカでのこの疾患の集団発生から 2年後)の報道の下のくだりを思い起こしてほしいのです。

 

> 120人のうち 3人が完全に回復した。

 

このあたりから見ますと、今のところ、劇的な治療の効果は出ていないと解釈しても構わないと思われます。

もちろん、「ある程度改善した」という例などを含めて、少しよくなった子どもたちは数多くいるでしょうけれど、ただ、厚生労働省の資料には、6ヶ月後の状態として、

運動麻痺は改善するものの、最終的に75~90%の患者で様々な程度の筋力低下が残存する。

と記されています。

 

現在も原因も治療法もわかっていない中で、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、以下のような印刷物を配布し、子どもに症状が現れた場合は、すみやかに医療機関に相談することを勧めています。

CDCが配布しているAFMの症状


CDC

ここに書かれている症状は、おおむね、以下のようになります。

急性弛緩性麻痺の代表的な症状(これらが突然起きる)

・眼球を動かすのが難しくなる

・まぶたが落ちてくる

・顔の皮膚や筋肉が垂れてくる

・唾を飲み込むのが難しくなる

・突然、腕や脚の筋肉が弱くなる

これについては、先ほどの過去記事にあります 3歳の男の子の例も同じような感じです。

 

 

日本でも実は100人以上の症例が報告されていた

実は、今回このアメリカでのことを取りあげたのは、「これがアメリカだけの病気ではない」状況となっているためです。

簡単にいえば、

「日本の医療界でもやや緊張体制がとられている」

ようなのです。

たとえば今年 5月には、日本小児科学会はこの病気を「全数届出」としました。

全数届出というのは、その疾患を診察した医師は、その数すべてを管轄の保健所に届け出なければならないというものです。

以下の報道にそのことが書かれてあります。

15歳未満の急性弛緩性麻痺が全数届出に

m3.com 2018/05/24

日本小児科学会はこのほど、15歳未満の「急性弛緩性麻痺(AFP)」が2018年5月1日から全数届出疾患になったことを公式サイトで周知した。

2015年秋の急性弛緩性脊髄炎(AFM)の大流行後、同様の流行が発生した場合に備え、同学会予防接種・感染症対策委員会がAFPサーベイランスの準備を進めていたという。

今回、5類感染症となったことで、管轄の保健所に7日以内に届け出ることが義務付けされた。

 

症例が発生する可能性がないものを全数届出に指定するということもないでしょうし、ある程度の予測のようなものはあるのかもしれません。

先ほど引用させていただきましたが、今年 4月には、厚生労働省がこの急性弛緩性麻痺に対しての「手引き」を発行しています。

2018年4月に発行された急性弛緩性麻痺の手引き書の表紙


厚生労働省 / 国立感染症研究所

この書類を読むまで知らなかったのですが、実は、日本でもかなりの症例が報告されているようなのです。

この厚生労働省の書類の「はじめに」には以下のようにあります。

2014年に北米で急性弛緩性脊髄炎 (AFM)症例が多発したのに引き続き、翌 2015年秋、日本でも急性弛緩性麻痺(AFP)症状を認める症例が多発しました。

当時、日本では AFP サーベイランスが実施されていませんでしたので、 集団発生の全体像を速やかに把握し、迅速な対策に繋げるために、感染症法に基づく積極的 疫学調査の一環で全国調査が実施されました。

その結果、2015年 8~12 月に成人を含めて全国から 100 例を超える AFP 症例が報告されました。

つまり、2015年にこの病気は「日本で集団発生」しており、そこから考えると、また日本でもいつ多くの発症例が報告されるかわからないのです。

なお、ここでは、急性弛緩性麻痺というように一括りにしていますが、日本の現在の定義では、原因がどんなものであっても、四肢などの麻痺を伴うものをこのように呼んでいまして、以下のようにいろいろと原因はあります。

・ポリオ
・エンテロウイルス(A71、D86)感染症
・ギラン・バレー症候群
・重症筋無力症
・外傷性神経炎

他にもいろいろとありますが、現在、アメリカで広がっているものについては、ポリオではなく、エンテロウイルスが検出されることが多いとはいえ、それとの因果関係もわかっておらず、

「突然この世に出現した、子どもをターゲットにした不可解な疾患」

という言い方が最も適合すると思われます。

そして、思うのは、

「なぜ、今の世の中は、病の波が子どもばかりに寄せるのだろう」

ということでした。

 

 

もしかすると、過去に取りあげたさまざまなことが複合的な要因になっているのかもしれないとも考えたり

子どもの疾患は、日本を含めた主要国の場合、アレルギーやメンタル的なものなどを含めて、とても増えています。

アレルギーにしても、原因は「基本的に不明」というようになっていますが、しかし、たとえば、花粉症でも食べ物アレルギーでもアトピー性皮膚炎でも、

「昔はなかった。あるいは極めて少なかった」

ものではあり、今でも、たとえば、主要国以外の自然の中に暮らしているような人たちには、そのような疾患は少ないです。

主要国でも、たとえばアメリカで文明と離れて暮らしているアーミッシュの人たちには花粉症も含めたアレルギーが極めて少ないですので、ある程度の原因は「現代の生活様式にある」とは言えるはずです。

このあたりは、2015年4月の NHK スペシャル「新アレルギー治療」という番組で、アーミッシュにアレルギーが少ない理由を説明しています。

下は、そのことを説明していたサイトからの抜粋です。

北米で農耕や牧畜によって自給自足の生活を営むアーミッシュには、アレルギーが極端に少ないのですが、その理由はTレグが体内に多いためと考えられています。

Tレグは、免疫による攻撃(=アレルギー)を抑え込む役割を持っており、アーミッシュは幼少期から家畜と触れ合い、細菌を吸い込んでおり、その結果、Tレグを多く持つようになったと言われています。

逆に、現代の日本のように衛生的で細菌が少ない環境だからこそ、Tレグが増えずにアレルギーが増加したとも言えます……。

アレルギー根本治療の“鍵”を握る「Tレグ細胞」とは?

最近の研究で「制御性 T 細胞」(Tレグ細胞)というものが、免疫の鍵であることがわかってきていて、これがアーミッシュには「多い」のです。

なぜ多いのかという理由は単純で、アーミッシュは「過度に清潔にしていない」からです。

雑菌やさまざまな微生物や昆虫類などと共に生きるという「まともな生活」をしているからです。

そして、私たち日本人やアメリカ人は「無意味に過度な清潔の中に生きている」から「弱い」という、このような、とてもわかりやすい理屈が、医学的研究のひとつでは、すでに成立しているのです。

このあたりは、過去記事でも2、3年前から「いろいろな原因がそうではないかな」と思い始めまして、いくつか記事にしたことがありますが、下はそのひとつです。

なぜ私たち現代人は0157や花粉やダニ程度のものに対して、こんなに弱くなってしまったのか冷静に考えてみませんか …… その答えは過度な清潔社会の進行以外にはないのですが

今の日本の「過度な清潔な社会」は、はっきりと「異常」なのですよ。

99% 殺菌というような概念は、真面目な話として、「人類全体レベルの自殺行為」だとも思います。

先ほどのように、Tレグ細胞というようなものもそうですけれど、

「清潔すぎる環境は人間を病気に導く」

ということが比較的はっきりとしているのですから、実際には、そろそろ医学界レベルで、そのことをきちんと表明していってもいいのではないかと思います。

もちろん、清潔にすることが悪い、のではなく、

「今の社会は清潔すぎる」

のです。

必要なものも必要ではないものも、何でもかんでも、「バイ菌は全部ダメ、ダニや虫は全部ダメ」ときている(「必要でない微生物というものは存在しない」と私は考えていますけれど)

主要国の多くの人たちの腸内環境がボロボロになっている理由も、このことと概念としては関係があると私は思っています。つまり、体内の「必要なものも必要ではないものもすべて薬で殺していく」という概念。

 

とはいえ、今回の主題は、冒頭の子どもたちの謎の疾患であり、このことと「過度な清潔社会」が関係しているかどうかはもちろんわかりません。わかりませんけれど、この病気が、いわゆる「衛生的でない国や地域」に発生しているのではなく、アメリカや日本のような過度ともいえる衛生観念のある国にだけ発生していることは事実です。

結局、今の(私たちを含めた一部の)人類は「細菌との共生の重要性」を見逃したまま滅びていこうとしているのかもしれません。

 

なお、この1、2年、「子どもの健康」に関しての記事がわりと多かったと思うのですが、健康のジャンルはいろいろですけれど、それに関しての記事を下のリンクしておきたいと思います。

現在の「病気の時代」について、ある程度の共通した要因のようなものが、これらの過去記事の中に通じていることが今となってわかってきた感じです。

子どもの健康についての最近の記事リンク

「過度に清潔な環境が子どもの白血病のほとんど(99%)を作り出している」ことが判明
 2018年5月28日

自閉症の子どもが生まれる決定的な要因が米バージニア大学の研究者により特定される。それは「母親の腸内細菌環境」
 2018年7月30日

単なる市販のかぜ薬や頭痛薬の服用がADHDの子どもたちを作り出しているかもしれない : 相次ぐ「アセトアミノフェンと胎児の脳損傷」に関しての医学論文
 2017年12月27日

扁桃腺を切除した子どもは「一生、極めて高い疾病率を背負う」ことが研究によって明らかに
 2018年8月7日

妊娠中の「グルテン不耐性」の女性がグルテンを摂取すると、その子どもが統合失調症などを含む脳障害を発症する確率が飛躍的に高くなるという医学論文
 2018年7月15日
 

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