第1部 現代に奇跡が起こった

3 世の中はすべて前世の縁によって結ばれている

【 この世は前世の縁による 】

　私は子供の頃から行ったこともない信濃の国が懐かしく、恋しさに胸をしめつけられるようであった。

　また、加賀の国も子供心に好きであり、さらに、歴史中の人物では新田義貞、楠木正成、後醍醐天皇に興味を持った。

　特に、新田義貞が稲村ヶ崎の海へ自分の刀を投げ入れ、その力によって海を渡ったことを印象深く覚えている。

　どうしてそのような土地や人物に懐かしさや親しみをもつのかわからなかったが、それらは何百年か前の自分の前世に関係のあったことが、T・S先生の神示録によって明らかになった。

　昭和五三年、前世供養によって、六五〇年前、私は畑時能（はたときよし）という武人であり、新田義貞、仁礼（にれ）頼仲とともに信州にいたことが判明したのである。

　畑六郎左衛門時能は南北朝時代の武蔵の国の武将であり、後に信濃の国に移った。

　新田義貞の挙兵の呼びかけに応じて参戦。

　加賀、越前を攻略し、石川と福井の県境にある細呂木（ほそろぎ）に城を構えた。

　乗馬、武芸に長じ、頑固一徹だったが、鷹巣山城で流れ矢に当たって陣中で没したという。


　T・S先生に、福井へ行けば私の前世の墓所が見つかると言われ、探しに行くつもりでいた昭和五五年五月のある日のことである。

　東京プリンスホテルでA社の社長夫妻と初めてお会いした時、私の六五〇年前は畑時能だったのですよと言うと、社長は大変びっくりした。

　『六郎左衛門と違いますか』。

　『そうです。

　私の名は畑六郎左衛門時能です』。

　『それではあなたは、私の家のご先祖様です。

　私の家の系図の最初にその名があり、私は歴史が好きで、よく調べたものです』

　と言われたのである。

　さらに、私と妻・正衣（まさえ）との縁も、私が畑時能であった時、知り合い、愛した人物である。

　しかし、彼女は千宗宣という人の一人娘・おちかであったために結婚できなかったので、今世で夫婦になっているのである。

　不思議なことに、畑時能と正衣の実家の家紋は同じである。


　また、三八〇年前の江戸時代、私は陽明学者、熊沢蕃山であった。

　蕃山は京都に生まれたが、岡山の城主に仕え、古河で亡くなった。

　蕃山は、徳川幕府に建白書を出したため、閉門にされ松平家に預けの身となってしまう。

　その松平家の殿様とは松平忠之のことで、後に藤井姓を名乗ることになる。

　その末裔がアトランティスの

　『賢者の石』

　を私に教えてくれた人で、私の前世における一一番目の子供の夫である。

　ある結婚式の日、その人のご両親に私の前世の話をしたところ、しばらくして、ご両親は茨城県の私の前世の墓を見つけ、その写真を送ってきた。

　ちょうどその日、私の部屋へプロレスラーのアントニオ猪木氏が来て、その写真を見つけて言った。

　『ここは私の故郷の古河（こが）市です。

　母も祖父もこの町の出身です』。

　このようなことから、アントニオ猪木氏とも前世には深い縁があったことと思われる。


　また、平成元年六月、兵庫県赤穂市の青年会議所において講演を行った時のことである。

　これは、私が空中に投げたら溶断したスプーンを聴衆に回覧していたら、私のところに戻ってきた時、太い柄の部分が溶断してしまったという出来事があった講演会である。

　その日、会議所の責任者から、熊沢蕃山が忠臣蔵の大石内蔵助（おおいしくらのすけ）と、備中・松山城の明け渡しに行ったことを教えられた。

　備中・松山城は岡山に来て最初に訪れた場所である。

　城へ行く時、城の北の端はこのようになっている、と話しながら行くと、私の話したとおりになっていた。

　また、三八〇年前の城主であったI氏のお世話によって、熊沢蕃山は岡山城主に仕えたのである。

　さらにその講演の翌日、私が昭和三二年にNHKテレビの三〇分番組に

　『発明おじさん』

　として出演した時の司会者・Oさんと奥様、ご子息と、彼の会社の上司の四人が岡山に来訪された。

　その日、Oさん一家が来られたのは、私が東京で講演をした時、息子さんがそれを聞かれて、

　『NHKテレビで三〇年前に出演したマサキさんと、講演者の政木先生とはどういう関係か』

　とお父様に尋ねたところ、お父様からそれは同一人物だと聞き、興味を持たれたのだという。

　私は、前世が熊沢蕃山であること、そして、大石良雄と熊沢蕃山が備中・松山城の明け渡しに行った話もした。

　また、

　『元のお殿様の三村さんは男の子がないために、ご主人の亡きあとは娘ばかりになり、明け渡しとなりました。

　大石良雄は、三村の奥様が、女の子ばかりでお困りだと思い、赤穂城の隣へ奥様の家をつくり、そこに住んでいただいたそうです』

　と話したところ、その家はOさんの奥様の実家だったことがわかった。

　その話を聞いて驚いたのは、息子さんの上司のM氏である。

　M氏は息子さんに

　『あなたの家と私の家は親戚だったのですね。

　私の家は備中・松山城主三村氏の末裔です……』

　と言われたので、あとは言葉もなかった。

　同一家系の人が、その会社へ何も知らずに勤務している。

　何か引きつけるものがあったのだろう。

　そして、三〇年前、Oさん一家は大阪にいたのに、その息子さんが私の講演を東京で聞いた。

　偶然にしてはあまりにもできすぎではないかと思われた。


　私は昭和五四年から、岡山の林原生物化学研究所へ勤務させていただいている。

　社長の前世は岡山城主という位の高い人物であり、その家来であった熊沢蕃山の私がお世話になっているわけである。

　岡山に来てみると、前世の縁のある人々が次々と集まり、岡山勤務が偶然でなかったことを知らされた。

　林原生物化学研究所の社員の多くは、やはり前世で岡山城主に仕えていた人達である。

　だからであろうか、男性社員はもちろん、女性社員の中にも、

　『社長のためなら命を捨ててもいい』

　と言う者が多い。

　したがって結束力は抜群である。

初版発行：1994年11月25日
10版発行：1995年11月20日
著者：政木和三
発行者：松元淳
発行所：産能大学出版部
　　　　東京都世田谷区等々力 6-39-15
印刷：倉敷印刷
製本：豊文社
ISBN 4-382-05260-2
© 1994 Printed in Japan