サトリフ 1849 |   私的喫煙日記

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 珍しく無着香の煙草を買った。

私にしては珍しい煙草である。Va/Per(ベイパー)と分類される煙草だ。自分ではほぼほぼ買わない。

以前、このブログでサミュエル・ガーウィズのキャビーズ・ミクスチャーという煙草を取り上げたが、その時は自分で買ったものではなく、その後も買うことはなかった。

この煙草に大いに興味を持ったのは、サトリフという会社に対するかねてからの疑問だ。日本での販売が終了してしまった、かのMixture No.79は、かつては一部のベテラン・パイプスモーカーに絶大なる人気を博していた。バーレー主体のアメリカンなオールドスクールである。以前このブログで紹介したエドワード・G.ロビンソンズ パイプブレンドも現在はサトリフ販売になっている。

煙草産業の世界的な縮小によって、合併を余儀なくされた世界の煙草製造業社は、本来相容れないテイストを持つ企業に自社ブランドを売る事になる。

このあたりの資本関係はかなり複雑で、例えば私のよく買うフォックス・アンド・ハウンドの発売元はスペインの葉巻会社アルタディスだったが、現在はサトリフが販売し、製造はデンマークのマクバレン社である。

様々な銘柄の煙草がブランド意匠とレシピエントだけを身売りされ、ほぼ別の煙草となっても名前だけは残っているのが現状である。現在、世界中に煙草を栽培し製造できる企業が数少なくなってしまったからだ。

そんな中でも、古き良き時代の遺産を継承しようとして頑張っている根強い銘柄もある。人間は一度憶えてしまった至福の喫煙経験を、生涯忘れられないものなのだ。これぞオールドスクールなのである。

サトリフ社のホームページでは、このSutliff1849はナショナル・ブランドにカテゴライズされている。つまりは自社ブランドだと言いたいのだろう(同じカテゴリーにNo.79もエドワード・G.ロビンソンもある)。

 

ナショナル・ブランド

サトリフ1849

この独特なブレンドは、明るい色のヴァージニア葉、甘くて赤いヴァージニア葉、および2種類のカットのペリク葉のミクスチャーです。

 

つまりこの煙草は、1849年ヘンリー・W・サトリフがサンフランシスコに小さなたばこ屋を開いた当時のブレンドだという事だ。未だMixture No.79の開発にも手掛けていない時点である。サトリフ社がMixture No.79を製造販売しだしたのは1933年と言うから、先立つ事84年前の事だ。

缶を開けると、強烈な酸気!

ペリクの配合は全体の4分の1ぐらいに見えるが、全部ペリクなんじゃないかという強烈な酸っぱい匂い。

葉組みは単純で、書いてある通り、黄色いヴァージニアと茶色いヴァージニアのリボンカット、それにペリクらしき黒い葉が短い塊とリボン状とで存在する。無着香、何の造作もないプリミティブな煙草だ。

そしてドラッグ・ストア・ブレンドのように全体が乾いていて軽い。ポンポン煎餅のように高圧をかけて葉を膨らませ「かさ」を増す製法だろう。案外これはグラインダーにかけて細かくすれば、シャグにしてシガレットになるかも知れない。

 

今回は同じ19世紀という事で、セイレーンの彫刻が掘られたアンティークのメシャムに詰めてみた。

ふんわりと浮き上がってくる。火を点けてタンパーで押さえないと収まりが悪い。少し硬詰め気味にして火を点け、点火後にゆっくりと吸い込んでみた。

肺喫できる。

パイプ煙草としては、かなり軽く、ジュースが出にくい。同じベイパーでも、例えばC&Dバイユー・モーニングなどと同じ種類では決してない。これは、そう、もっと庶民的で工業的な、所謂、「安煙草」だ!

 

ボウル半分ほど吸い切ったところで、この煙草の真価に気が付く。

実に軽快なのである。シツコクなく、純粋に煙草を味わえる。無理な気取りも無ければ、重苦しい甘みや旨み、衒いもない。

スパイシーなペリクがダイレクトに入ってくる。だから物足りなさもない。

本当にマクバレンという会社は、様々な煙草が作れるんだなあ。このようなアメリカン・オールドスクールも作れるのかと思うと、実に多彩だ。

しかしこの煙草、ちょこちょことシガレット感覚で吸い切ってしまいそうだ。

ペリクはウイスキー樽に漬け込んだ物。バーボンでも吸わせて加湿したら、面白い事になるかも知れない。