永遠の出発点 II

 さて、国分寺南線5号だ。
 これが、私を鉄塔巡りへと導いたプレートと、その鉄塔。

soudentettou_kbjm5_d soudentettou_kbjm5_e
国分寺南線5号(標高82.1m)

 何の変哲もない鉄塔だが、そのプレートがバイト中の私の目に留まった。そしてこれを見て、送電線に鉄道のような名前があり、各鉄塔に個別番号が振られている事を私ははっきりと知ったのだ。これを知ることによって、他の路線や他の鉄塔への興味が生まれて来たのである。どんな路線名なのだろう、1号は何所にあり最終鉄塔は何号なのだろう、何所から来て何処へ行くのだろう―などと。
 「鉄塔 武蔵野線」著者、銀林みのるさんは、「中富線106」の番号プレートを見て、送電線に名称があり鉄塔に番号があることを知り、宝探しの様な気持ちで「1」方向へ鉄塔を追ったと書かれているが(参照)、言ってみればこの「国分寺南線5」プレートは、私にとっての「中富線106」である。
(註:この「中富線106」は改修・編成替え以前のもので現在の106号とは全く異なる)

 そしてその、奇妙な形態(当時そう思えた)で、鉄塔に興味を覚え始めた私の心を捉えた最初の鉄塔が、次なる6号である。

soudentettou_kbjm6_d soudentettou_kbjm6_e1
6号(昭和63年3月 38m)
日吉町ミニ公園(標高81.2m)内に建つ

 これだけ一基、他と形態が異なる不可思議なる6号。フォルムの違いは、素人目にも顕著。

soudentettou_kbjm6_f soudentettou_kbjm6_e
6号
左下に5号

 手前の青いネットは、小平線記事で触れたと同様のブルーベリー畑。こうした畑が、この多摩地域ではとても多く見られる。東京が、国内ブルーベリー生産量第2位を争っていることが頷ける。

 しかしだ、見る度思うが、なぜにこの6号のみ、通常の四角錐型ではなく矩形なのであろう。周囲はごく普通の住宅と農地の混在環境。ここだけ矩形とする意味が不明だ。架空線を北側(画像で右)へ少しずらせている様に見えるが、そのずらす意味が不明だ。

 古航空写真を見よう。
 1974年写真で見ると、はっきりとは言えないが、先代鉄塔は通常四角錐型にも見える。

CKT7416-C28-32_kbjm6
国分寺南線6号航空写真
1974年(昭和49年)12月26日国土地理院撮影

 下は、最近の6号周辺写真だ。

CKT20084-C4-12_kbjm6
国分寺南線6号航空写真
2008年(平成20年)5月6日国土地理院撮影

 何方も写真の中心、市立第五小学校プールの南側に6号がある。周囲に住宅は増えてはいるが、34年後も左程の環境変化はない。1988年(昭和63年)の建替えで(一回り大きくなり)四角錐から矩形に変わった様にも見えるが、だとして理由は何か?―分からない。

 因みに、6号の横姿はこんな感じ。

soudentettou_kbjm6_c
6号(2016年撮影)

 一見普通だが、四角錐型に比し、ちょっと、ぽっちゃり。

 この6号と、また四角錐に戻る次なる7号との間を、以前取材した当時とは異なり、今は四車線の広い都道17号線(新府中街道)が通る。

soudentettou_kbjm7
7号と17号線

 あの時はまだ、工事中であった。長閑な住宅地だったが、風景が一変してしまった。
 しかし、17号線と6号との間には、まだ農地が広がり、以前の面影は完全には消えていない。

soudentettou_kbjm6_g
6号と農地

 しかしこの風景も、何時までも残るものではあるまいな。

 さて7号だが、生活道路脇とは言え住宅の只中(アパート敷地内)なので、接近はカッツアイ。

soudentettou_kbjm7_a
7号(標高80.3m)

 少し離れて、東側の「西恋ヶ窪こずえ公園」(標高79.0m)からも望む。

soudentettou_kbjm7_b
7号
奥に6号

 手前の農地には、無人販売所もあり、私はキュウリを頂いた(三本百円)。

 公園から反対を向けば、7号同様V字懸垂型の8号が間近。

soudentettou_kbjm8
8号(標高78.5m)

 しかし完全に家々に囲まれ(個人宅敷地内か)接近は困難なので、道路を挟み北に広がる雑木林「西恋ヶ窪緑地」、通称「エックス山」から望む。萌芽更新で開けた林から、遠望することが出来る。ランチや休憩には、良い場所だ。

soudentettou_kbjm8_a
エックス山から8号

 余談だが、あの昭和の大事件、「三億円事件」では、奪われたジュラルミンケースに付着した土の成分が、国分寺市恋ヶ窪の雑木林の土と酷似しており、容疑者のアジトがあったのではと、付近は徹底的な捜索の対象となった。このエックス山は、まさにその「恋ヶ窪の雑木林」の一つである。結局捜索の成果は無かったようだが、もしかしたらこの林と容疑者に接点があったのかもしれない、等と妄想するのも一興かも。

 「エックス山」と言う変わった名についてだが、林中を通る小道が「X(エックス)」字状に交差していたから、だとか。

 この8号辺りからは、路線はほぼ「熊野神社通り」に沿う形となる。

 つづく

2020年文月4日
(取材は5月末−6月初め)

――――――――――――――――

・取材の際はマナー遵守を心掛け十分配慮しておりますが、もしご近隣の皆様にご心配及びご迷惑をおかけしておりましたら、お詫び致します

・航空写真画像出典:国土地理院ウェブサイト

・これ等鉄塔の建つ場所は国分寺市日吉町・西恋ヶ窪・東恋ヶ窪、最寄り駅はJR武蔵野線西国分寺駅です

*三億円事件:1968年(昭和43年)東京都府中市の府中刑務所北側道路で発生した現金窃盗事件。東芝府中工場のボーナスが偽白バイ隊員に奪われた。奪われた金額は当時の最高額で日本中が大騒ぎとなった。1975年時効成立。容疑者が逃走に使った自動車の中に残された現金を入れていたジュラルミンケースに土が付着していた

鉄塔に昇るのは非常に危険です。絶対にやめましょう

(スマートフォン版は、通信の最適化により画像の画質低下・サイズ縮小となっている場合があります。ご了承下さい)

――――――――――――――――

・単独でのサイクリングと言う野外活動は、フィジカル・ディスタンシングを守る前提のもと、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染リスク(感染しない・感染させない)の極めて低い行動と考え行いました。出先で長居はせず、食事は人気のない場所で一人で行い、家を出てから戻るまで店舗等への立ち寄りは最低限にとどめています
・鉄塔ご訪問の際は引き続き新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大防止にご配慮をお願い致します