ナショナル・シアター・ライヴ「リチャード二世」 | First Chance to See...

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 サイモン・ラッセル・ビールは間違いなく素晴らしい名優だが、それでも彼がリチャード二世を演じると初めて聞いた時は驚いた。え、リチャード二世といったら、(若い頃の)レイフ・ファインズとかベン・ウィショーとかデイヴィッド・テナントとか、若くて細身のきれいどころの役じゃないの? それを、ずんぐりむっくりで初老のおっさんがやるの??

 

 

 そこはもちろん、演出家ジョー・ヒル-ギビンズに秘策があってのことである。今回の「リチャード二世」、原題を"The Tragedy of King Richard the Second」といい、シェイクスピアの元の戯曲を凝縮してわずか100分の上演時間内におさめると同時に、ボリングブルックの役回りなど、かなり大胆な解釈をほどこした上で、「リチャード二世の悲劇」に焦点を当てた。

 

 出てくる俳優はたった8人。普段着のような服装のまま、最小限の小道具と共に鉄の箱のようなセットに常に閉じ込められ、かつ、俳優によっては1人で何役も受け持つ。こんな省エネスタイルであっても、演出家の見識と解釈力、それに役者の演技力さえあれば、こんなにも斬新でおもしろいシェイクスピア劇を作り上げられるということを証明してみせてくれた。

 

 サイモン・ラッセル・ビールによるリチャード二世のセリフだけでも、十分以上に値打ちがある舞台だったと思う。でも、これはあくまで王道演出の「リチャード二世」に馴染みがある人向けの舞台だ。もし「リチャード二世」について何も知らないまま初めて観たら、途中で誰が誰だかわからなくなっちゃうかも? いやはや、100分の短縮版というからてっきり初心者向けかと勝手に思い込んでたけど、とんでもなかったわ。