『ラスト・ストーリーズ』@多摩南オンライン読書会 | First Chance to See...

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 ウィリアム・トレヴァーの短編集『ラスト・ストーリーズ』の素晴らしさ(の一つ)は、決して難解めかした書き方をしていないにもかかわらず、それでも読み方次第でさまざまな解釈ができることである。それだけに、複数の人で感想を語り合う読書会でこの本が取り上げられると知り、興味津々で参加申し込みをした。

 

 ただし、このご時勢である。これまでにも多摩南読書会には何度か参加させていただいたが、今回は初のオンライン開催とのこと。自宅にいながらお話しできるのは手軽でいいけれど、でも私はZoomを使うのは今回が初めてだったので、無事にログインできるまではいつもと違う緊張感でいっぱいだった。

 

 ひとたび読書会が始まってしまえば、オンライン開催ということで参加人数があらかじめ少なく制限されていたこともあって、思った以上に話しやすかった。案の定と言えば案の定ではあるけれど、どの短編も読み手によって感想も解釈も見事に違ってておもしろいの何の。これは絶対に解釈が分かれるだろうな、と思っていた「女たち」で解釈が分かれるのは当然としても、これは誰が読んでもそのまんまだろう、と思っていた「ミスター・レーヴンズウッドを丸め込もうとする話」で、まさか私一人がトンデモ論を開陳する羽目になろうとは(大汗)。おかしいなあ、私はそうだと思って夢疑わなかったのになあ(苦笑)。

 

 あと、『ラスト・ストーリーズ』のブログ記事で書いた「カフェ・ダライアで」に出てくる「アップルタルト」と「タルト・オ・シトロン」の謎については、私以外の人から疑問が出された。やっぱり、みんな気になってたんだね。

 

 「タルト・オ・シトロン」の謎は根本的には解決しなかったけど(そりゃそうだ)、同じく「カフェ・ダライアで」に出てきて私がちょっと疑問に思っていた「カフェティエール」については参加者の方から回答をいただき、謎は解明。カフェティエールって、私はてっきりコーヒーの名称(モカとかカプチーノとか)かと思っていたが、正しくはコーヒーを入れる容器のこと——普通にカップに入った一杯のコーヒーではなく、2杯以上入るようなポットで供されるコーヒーのことだった。ということはつまり、主人公が行きつけのカフェの定員さんから「カフェティエールですね」と言われて「うなずきを返す」というのは

 

「(今日も、いつも通りごゆっくり過ごされますよね)」

「(はい、今日もいつも通り長居するつもりです)」

 

という含みもあったのか!

 

 良い勉強になりました。世話人の皆様&参加者の皆様、ありがとうございました。