2年以上ぶりの映画レビューを書きます。
正直この2年、ほとんど映画を見ることができませんでした。
時間、精神、金銭―すべての面で余裕がありませんでした。
映画だけではありません。
話したい誰かに会いに出掛けたり、誰かとおいしいものを食べに行ったり、読みたかった本を読んだり、何か美しいものを心惹かれるままに見に行ったり。
そうゆうことを切り捨てていました。
とても恥ずかしいことです。でも、優先したい大切なものがあったのです。
映画を見ない日々に慣れていきながら、どこかでずっと焦っていました。
こんな生活をしていていいのか。少なからずアウトプットを生業とする人間が、これほどインプットに貧しくなってしまっていいのか。
一歩、自分の世界から出たときに感じる、知識や話題の乏しさ、興味のなさ。
なんてつまらない人間になってしまったんだろうと、実はなかなか絶望していました。
それが優先しているもので満たされなかった時に、マイナスな気持ちを増長させる一因になっていることも頭では分かっていて、もう悪循環としか言いようがありませんでした。
今やっと、そこから抜け出していろんなものを取り戻したいと思えるようになりました。
そんなタイミングで「SUNNY」が公開され、リスタートの1歩目にふさわしいじゃないかと、会員カードすら変わってしまったホームの映画館へ向かったのです。
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【SUNNY 強い気持ち・強い愛】
監督/監督:大根仁 企画:川村元気
キャスト
篠原涼子:奈美 / 広瀬すず:奈美(高校生時代)
小池栄子:裕子 / ともさかりえ:心 / 渡辺直美:梅 / 池田エライザ:奈々
山本舞香:芹香(高校生時代) / 野田美桜:裕子(高校生時代)
田辺桃子:心(高校生時代) / 富田望生:梅(高校生時代)
三浦春馬:藤井渉
作品データ
2018年 日本
配給:東宝
上映時間:119分
PG12
◆ストーリー◆
専業主婦として夫と高校生の娘を支えてきた40代の主婦・奈美は病院で高校時代の親友・芹香と再会。余命1カ月と診断された芹香はかつての仲良しグループ「サニー」の仲間たちに会いたいと奈美に頼んだ。
それぞれの人生を歩んでいたサニーのメンバーは、再会によって”あの頃の自分”を取り戻していく。
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2011年に韓国で製作された「サニー 永遠の仲間たち」のリメイク。
韓国版は劇場公開には間に合わず。評判を聞いて、あとからブルーレイで見ました。
噂に違わずめちゃめちゃいい。大まかなストーリーは日本版と同じですが、サニーのメンバーが自分を取り戻していく過程と青春の酸っぱさにグッスングッスン泣きました。
しかし、100点満点マイベストだったかというと、乗り切れない部分が大きく2つあった。
まず主人公の女子高生時代を演じている子がかわいくない。
それと、青春時代の文化や社会背景に私の実感が伴わない。ここが今一歩だった。
サニーが日本でリメイクされると聞いてざっくり情報を見たとき、韓国版で乗り切れなかった部分が解消されるのでは、と興奮した。
かわいくないと思ったナミの高校時代を演じるのが広瀬すずちゃん。
コギャル全盛期の90年代を大根監督がJ―POPで彩る。
音楽は小室哲哉。しかも公開されるのは安室奈美恵が引退する今年、平成最後の夏、8月31日ときた。
間違いなく大正解な座組に加えて、時代が味方している。
小室哲哉が歌詞に書いてそうだけどこれ、時代が味方してますよ。
ちなみにスタイリスト伊賀大介さんで企画が川村元気さんですからね。
攻撃力守備力ともに頂点ですわ。おもしろくないわけがない。
予想通り最高におもしろく、かなり冒頭からボロボロに泣きました。
見ているときは確信が持てなかったので、次の日に韓国版を見直しました。
やっぱり。冒頭の奈美が起きて支度をするシーン、カットから演技まで完全に再現されている。
リスペクトがすごいのは、原作が好きであればあるほど分かるでしょう。
変えずにいけるところのそのまんま具合は称賛だと思います。
逆にバッサリ変えたところもかなりあって、しっかり日本版サニーのメッセージを伝えていると思います。
韓国版見直して納得したんだけどサニーの人数がまず違うんですよ。
日本版のが1人少ない。でもまあいなくても全然成立するし、人数減らしたことで1人ひとりがより浮かび上がってこりゃなるほどなと。
日本版だと浮気する夫に報復しに行くシーンがあるけど、韓国版にあった娘をいじめているグループを襲うシーンはない。
足したとこ、引いたとこ、置き換えたとこ、見つければ見つけるほど奥深さに唸るばかりだ。
韓国版で腑に落ちなかったのが、民主化運動が活発する80年代後半の韓国という社会背景がピンとこなかった。
日本版だって20代以下の人は実感としてないかもしれない。
私もコギャル全盛期はテレビでしか見たことない遠い世界だった。
それでも漠然としたコギャル文化への憧れみたいなものはあった世代で、地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災というとんでもないことがあって、不況で、なんとなく将来が不安で…
「とりあえずサラリーマンかな」っていうなんとなく暗い雰囲気は、韓国版よりずっと実感がある。
奈美が転校してきて方言を笑われるシーン。
淡路島というワードが出た瞬間、ああ、震災で東京に出て来ざるを得なかった事情がある女の子なのか…って瞬時に思って、それだけで私の中にある断片がブワっとリンクして涙が出た。
韓国版でぴんと来なかったのは私の不勉強が原因ではあるが、日本に生まれてある時代を過ごしたからこそ、実感できる何かがある。
そうゆう下地を持ってサニーの日本版が見られたのが幸福だなあと思った。
と同時に、見る人間がいつどこで生まれ育ったかで受容できるものが違うかと思うと、時代を閉じ込めることができる映画という手法についてグルグル考えることになった。
日本版サニーは、安室奈美恵が引退する平成最後の夏に日本に育った人が見ることに意味がある映画だと思う。
20年後にアメリカの少年が見ても、心に同じものはきっと沸き上がらないのだ。
というわけで見てください。
映画の中身についてもう少し。
なんといっても配役最高でしょう。よくそれぞれ韓国版のサニーからの6人とそのコギャル時代、それぞれ似ていてイケてる人を見つけたよね。
加えてコギャルのルックが完成されていて惚れ惚れする。
冒頭、奈美の回想らしく見える演出からコギャル時代へシーンが移るところ、久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」に合わせてものすごい数のコギャルがミュージカルみたいに群舞する。
コギャルの様相や持ち物を映しながら、それはそれは楽しそうに踊る。
もう1回見たら絶対確認しようと思うのだが、1カットがかなり長かったと思う。
ミュージックビデオ的に撮られている。ここだけでももう1回見たい。
初見では心奪われすぎてカメラワークやカット割まで気が回らなかった。
そのままコギャル時代パートの話をすると、広瀬すずがコメディエンヌとして爆発している。
みんな、このシーンの広瀬すずがコメディエンヌとしてヤバイ!という話がしたいだろうから、ここ!というタイミングで各々がタンバリンか何かを叩く「広瀬すずコメディエンヌ大賞上映」みたいなのが企画されてもおかしくない。
芹香を演じた山本舞香ちゃん。
彼女を知ったのは「サイタマノラッパー」のドラマシリーズだったのだけど、あの…
めっちゃかわいいですよね。
なんかこう、学年で一番かわいい子なんだけど、カースト上位感を伴っていて、いわゆる「学年で一番かわいい子」とちょっと違う。
簡単に言うとカツアゲしてきそうである。
そこがいい。
山本舞香ちゃんのギャルみが大好きなので、若いうちにいっぱいギャルの役をやってください。
お願いします。
他のメンバーも書き出したらキリがないけど、全員最高に良いです。
90年代のJ-POPがふんだんに使われているのはもちろんだけど、
「伊東家の食卓」とか絶妙な懐かしネタがこれでもかというほど放り込まれている。
劇場で吹き出して若者に白けた視線を向けられてほしい。
大人パートでいえば、主役の篠原涼子。
篠原涼子という人自体が、この役をやることにもう意味ができちゃってる。
安室奈美恵の引退報道を見入る姿、気持ちよさそうに「Don't wanna cry」を歌い踊るシーンは、
篠原涼子その人の人生も重ねてしまってそれだけでちょっと泣きそうなほど清々しい。
その意味多重感がマックスになるのがラスト。
大人になったサニーのメンバーが芹香の祭壇の前で踊るシーンだ。
篠原涼子とともさかりえが一緒に踊るってこれとんでもなくない?
さらにそこに小池栄子と渡辺直美いんだよ?
ちょっと生きてて良かったなって気すらしてくる。
久々なものでまとまりなく長々と書いてしまいましたが、サニーの物語が良いのは当たり前なんです。
その物語の良さを創り上げている幾多の要素を楽しんでほしい。
そして実感してほしい。
映画の中に見つけた良さの粒は、全部自分の中にあるものだということ。
自分の中に見つけた何かキラキラしているものは、映画の中でサニーたちが自分を取り戻していくように、ほんの少し、何かの軌道を変えてくれる気がする。
▼韓国版サニー。アマゾンプライムビデオで無料で見られました(2018.09)
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▼サントラ。LINE MUSICでも聴けます。TKサウンド~って感じでイイです
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