クシナ【映画レビュー】〜久しぶりにガッツリした自主映画っぽい自主映画を見た | おたるつ

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モノホンのおたくにジャンルは関係ねえはずだ!
ってわけで、おたくのるつぼ。略しておたるつ

映画館でチラシを見てビジュアルの美しさに惹かれた作品。

思ったとおり少女から老婆(言い過ぎ?)まで女性を映像美で堪能できました。

 

 

【クシナ】

監督・脚本:速水萌巴

キャスト:郁美カデール=奇稲(クシナ)、廣田朋菜=鹿宮(カグウ)
稲本弥生=風野蒼子、小野みゆき=鬼熊(オニクマ)

2018年製作/70分/日本
配給:アルミード

 

〈ストーリー〉

人類学者の蒼子は、山奥にある女性だけで暮らす集落を探しあて、そこで出会った少女・クシナに魅了される。

14歳でクシナを生んだカグウ、カグウの母で村長の鬼熊たちは、蒼子たちが集落を訪れたことをきっかけに、それぞれの決断をくだしていく。

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速水萌巴監督が自身の体験をもとに描き出した母と娘の物語。

本作が長編デビュー作だそうです。

 

まず設定がおもしろいよね。

人知れず、山奥で女性たちだけで構成されるコミュニティー。

どんな暮らしをしているのか、どうしてここで暮らしているのか。

人類学者の蒼子同様、好奇心と恐れを抱いて見ました。

 

そして女性陣が美しい。

タイトルにもなっている少女のクシナをはじめ、登場する女性たちの潜在的な美しさと映像的な美しさと両方あって、

こんなに美しく魅力的な女優さんを今まで知らなかったのかと驚くほど。

まつげとか眼球とか、素肌が美しい。

 

クシナの成熟が始まった大人と子どもの間らしい無垢さにも引き込まれるし、

カグウの化粧っ気のない素肌の質感。ただ、きれいなだけではなくて土や太陽のにおいがしそうな、黒髪がからまったなんともいえない佇まい。

オニクマの年齢を重ねてなお枯れることを知らない美しさ。オニクマは眼球がすごく透き通っていてきれいでした。

 

 

森や古い家屋といった背景、身につけた着物やさまざまな質感の布との相性も抜群にいい。

監督が衣装も手掛けていて、こだわりを感じます。

世界観めっちゃいい!

 

んだけど…「知りたい!」が残る映画でした。

集落がどうやって生活を成り立たせているかは描かれるんですが、女性たちの背景がほぼノーヒントなんですよ。

何かの事情があって来たのか、生まれた時からいるのか、じゃあ父親は誰なのか、

カグウやオニクマの生い立ちとか、全部説明してくれとは言わないけど、設定が魅力的な分気になる。知りたいんですよ!

 

ああ、久しぶりだ、この自主映画っぽい、そっちで完結してる感じ。

後半以降、特にオニクマの思考がどんどん分からなくなっていく。

この後半の行動に納得するために、キャラクターの背景を描いておいてほしかった。

過去にこうゆうことがあったとか、こうゆう体験をしたからこうゆう行動に出たとか、そのへんを知って、理解や共感をしたかったです。

 

あと音楽。音楽ちょっと仰々しい気がしました。

いいシーンでシンプルなカノンはちょっと…他の丁寧さブチ壊しでは…。

「ケセラセラ」も言いたいことはわかる…けど、今まであれだけ言いたいことを言わずにいたのに、もうちょっとふんわり伝えてくれんかね…他の丁寧さブ(略)

 

ていうか、クシナがカセットテープを聴いているシーンでカセットテープがまわってない。再生されていないのが気になりました。

だから音が出ないものをあえて聴く、何か意味があるのかなと思ったら違ったし。

もしや監督が若くて、カセットテープは再生するとき丸いところが回るということを知らないとか!? やめてくれ!!

 

とかなんとか言いつつ、クシナ役の郁美カデールちゃんが9歳の映像が残っただけで価値があると言ってもいいほど。

彼女の存在を知れてよかったです。

現在のお姿をネット記事で見たところ、もうめちゃくちゃ大人でした。

世の映像制作者は郁美カデールちゃんが少女のうちに映像作品に起用しなかったことを悔やむであろう。