明けましておめでとうございます。

年末年始はどのように過ごされましたか?

私は年末に今話題のウーバーイーツを初めて利用してみました。

私はインドアな人間で、寒い冬は特に室内にこもりがちなのですが、

注文してから30分ほどで温かい食べ物が配達されてきて、

かなり便利なものでした。

ハマってしまいそうです・・・。

 

さて、今回は採卵当日の精液処理法についてお話させて頂きます。

採卵当日、ご主人には精液を採取して頂きますが、それをそのまま体外受精や

顕微授精に用いるわけではありません。

 

体内の場合、膣内に射精された精液中の精子が卵子と出会うまでの間に、

精液の液体成分である精漿の除去と運動性の高い精子の選別が行われます。

体外受精でも精液から死滅精子や白血球、細菌などの余分なものを除去し、

成熟した運動性の高い精子のみを選別する必要があります。

 

その精子の調整方法は施設によってさまざまですが、当院は「密度勾配遠心法」と「スイムアップ法」を合わせた方法を採用しています。

 

「密度勾配遠心法」は精液中の不良精子や未熟精子、白血球などの余分なものを

除去し、成熟精子を回収する方法です

精子は成熟するにつれて密度が増加していきます。

特別な分離剤と一緒に精液を遠心機にかけることで、比重の高い成熟した精子を沈殿させて、それを回収することができます。

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 回収した精子は培養液と一緒に何回か遠心分離をして洗浄し、

培養液の中に5分ほど静置した後、自力で上がってきた精子を回収します。

これが「スイムアップ法」です。

これにより運動性が良好な精子だけを選別することができます。

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「密度勾配遠心法」と「スイムアップ法」は多くの施設で使われている

主流な方法ですが、デメリットもあります。

 

調整をする際に行う遠心分離処理や撹拌作業が精子にダメージを

与えてしまう懸念があります。

精液所見で精子濃度や運動性が低いと、

精子がダメージを受けることにより最終的に自力で上がってくる

精子の量が少なくなってしまいます。

その場合、通常の体外受精ではなく顕微授精の適応となる可能性が

高くなります。

精子がダメージを受けたことにより、受精能とその後の発生能が低下し、

それは流産の原因になるとの報告もあります。

また、培養士の練度によって結果のばらつきが出ることも指摘されています。

これらの問題を解決する精液処理法として、近年マイクロ流体力学を応用した精子選別法が考案されました。

自力で泳いでくる精子を、遠心分離を行わずに特別な器具を使って、

直接精液から回収する方法です。

 

当院はいくつかある方法の中でも

Zymōt スパームセパレーター」という特殊なフィルターを使った方法を

新しく導入致しました。

良好な運動精子をDNAの損傷率を最小限に抑えて回収できる方法です。

これによって流産率の低減や生産率の上昇が期待できると考えています。

 

精子の運動性には成熟度によって様々あり、

動きの遅いもの、頭を激しく振るだけで前にはあまり進まないもの、

高速で直進するものなどがいます。

その中でも高速で直進する精子だけがこのフィルターを通ることができます。

これを使用することにより、運動性が良好で受精能が高い精子を回収できます。
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さらに遠心分離や撹拌などを行わないので、


精子に外部ダメージを与える要素が少なくなり、精子DNAの断片化や

活性酸素による影響を受けない精子を回収することができます。

 

また、作業時間が簡素化され、所要時間も短く済むことや、

技師の練度による結果のばらつきがなくなるメリットもあります。

 

↓実際のフィルターの写真です。

フィルターに通す精液量に合わせて3種類の大きさがあります。

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当院では医師が患者様のご希望を聞いて、採卵当日の精液処理法を決めていく予定です。

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↑当院の採卵当日の精液処理のための準備の様子です。

 

Zymōtスパームセパレーター」を使った詳しい精液処理方法は

Youtubeで見ることができます。

同じチャンネルで回収後の精子の様子も見ることができます。

ご興味のある方はぜひご覧下さい。

https://www.youtube.com/channel/UCS3bMvUwsLxufTtUQdBh8sw

 

当院では医師が月2回、土曜日にセミナーを行っております。

セミナーでは当院の治療の方法や、スケジュールの他、

導入している機器を一部ご紹介する機会もあります。

今後、「Zymōt スパームセパレーター」を使った精液処理法に

ついてもお話する予定です。

ご興味のある方はぜひセミナーにご参加下さい。

 

当院では新しい設備や技術を多く取り入れ、患者様の妊娠率向上に努めてまいります。


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