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ケアレス・ウィスパー Wham!
時は移ろいて、日差しはもう夏。
公園の池で樫村くんとホンワカしていた。
樫村くんは池に向かって石を投げている。
「・・・投げてみる?」
「え~?あんなに投げられないわ。20・・30メートル・・・?」
「おや?僕に勝つ気でいるわけ?参ったね、ふふ、近く見えるけど80メートルはあるよ。」
「え~?そうなんだ・・・。」
「はい、石ころ。」
ふとそよ風が吹き、帽子が飛ばされそうに。
「おっと、風が。」
樫村くんが私の体にかぶさるようにして帽子が飛ぶのを防いでくれた。
「気を付けて。」
心臓・・・静まれ、静まれ・・・。
しばらく公園を散歩しながら話をしていた。
「あのね・・・私の名前、一度で読んでくれたの樫村くんが初めてだったの。せんこ、せんこって呼ばれ続けて来たのであの時はホントにびっくりして。人の名前の研究とかしているわけじゃ無いでしょ?」
「うん・・・してないよ。」
「あは、そうよね。変な事聞いちゃったね。」
あ、まただ。
樫村くんはどうして時々こういう表情するんだろ?
私達が二人でいることを良く思っていない柴田さんが、ある時私を呼び付けてきつい口調で私に言った。
「エンゲージリングの事もう聞いたのあなた。」
いきなり・・・・痛いところを突いてくる。
「聞いてないでしょ?話せるはず無いもの、あの人。二人でデートしたってダメよ。有人さんは貴方のものになんかなりはしないから。そんな事起こりはしないんだから。」
「あの・・・・。」
「気付いてないはずないわ。知ってるんでしょ?有人さんには婚約者がいるのよ。エンゲージリングだってその人の物よ。有人さんはその人がずっと好きなのよ!」
「あの・・・こ、婚約者がいるのなら・・・私と付き合ってくれたりするはずないわ。」
いいえ・・・ホントは・・・そう、分かっていた。
「そんなはずないわ・・・・。」
私の返事は力無く震えている。
「違うもん。好きなのよ。有人さんはまだ、死んだ私の栓子(みちこ)姉さんの事を忘れたりしてないわ。好きだから、指輪だってそのままだし、好きだから、好きだから・・・同じ名前のあなたと一緒にいるのよ。」
[今、落としたよ・・・柘植・・・栓子(みちこ)さん]・・・・そういう事だったのか・・・。
「解ったでしょ?あなたなんて、死んだ姉さんの身代わりなんだから。有人さんはいつだってあなたの向こうに同じ名前だった姉さんを、2年前の婚約者を見ているんだから。」
言いたい事言って、柴田さんは駆け足で去って行った。
そうか・・・柴田さんは好きだったんだ、樫村くんの事。
それはきっと、お姉さんが生きていたときからずっと・・・・。
柴田栓子、樫村くんがいつも遠くに、いつも、いつも、見ていた人はその人だったのね・・・・。
呆然としながら次の講義がある教室に入り、どこともなく適当な席に座った。
何も考えられずにただ座っていると、横に樫村くんが座った。
はっとする・・・・どんな顔をしているんだろう、私。
「教育心理学は108ページからだったよね?柘植さん、先週のノートとって・・・」
居た堪れなくなって私は席を立って教室を走り出た。
後ろから樫村くんの声が追ってくる。
「柘植さん!!!」
続く
ケアレス・ウィスパー Wham!
時は移ろいて、日差しはもう夏。
公園の池で樫村くんとホンワカしていた。
樫村くんは池に向かって石を投げている。
「・・・投げてみる?」
「え~?あんなに投げられないわ。20・・30メートル・・・?」
「おや?僕に勝つ気でいるわけ?参ったね、ふふ、近く見えるけど80メートルはあるよ。」
「え~?そうなんだ・・・。」
「はい、石ころ。」
ふとそよ風が吹き、帽子が飛ばされそうに。
「おっと、風が。」
樫村くんが私の体にかぶさるようにして帽子が飛ぶのを防いでくれた。
「気を付けて。」
心臓・・・静まれ、静まれ・・・。
しばらく公園を散歩しながら話をしていた。
「あのね・・・私の名前、一度で読んでくれたの樫村くんが初めてだったの。せんこ、せんこって呼ばれ続けて来たのであの時はホントにびっくりして。人の名前の研究とかしているわけじゃ無いでしょ?」
「うん・・・してないよ。」
「あは、そうよね。変な事聞いちゃったね。」
あ、まただ。
樫村くんはどうして時々こういう表情するんだろ?
私達が二人でいることを良く思っていない柴田さんが、ある時私を呼び付けてきつい口調で私に言った。
「エンゲージリングの事もう聞いたのあなた。」
いきなり・・・・痛いところを突いてくる。
「聞いてないでしょ?話せるはず無いもの、あの人。二人でデートしたってダメよ。有人さんは貴方のものになんかなりはしないから。そんな事起こりはしないんだから。」
「あの・・・・。」
「気付いてないはずないわ。知ってるんでしょ?有人さんには婚約者がいるのよ。エンゲージリングだってその人の物よ。有人さんはその人がずっと好きなのよ!」
「あの・・・こ、婚約者がいるのなら・・・私と付き合ってくれたりするはずないわ。」
いいえ・・・ホントは・・・そう、分かっていた。
「そんなはずないわ・・・・。」
私の返事は力無く震えている。
「違うもん。好きなのよ。有人さんはまだ、死んだ私の栓子(みちこ)姉さんの事を忘れたりしてないわ。好きだから、指輪だってそのままだし、好きだから、好きだから・・・同じ名前のあなたと一緒にいるのよ。」
[今、落としたよ・・・柘植・・・栓子(みちこ)さん]・・・・そういう事だったのか・・・。
「解ったでしょ?あなたなんて、死んだ姉さんの身代わりなんだから。有人さんはいつだってあなたの向こうに同じ名前だった姉さんを、2年前の婚約者を見ているんだから。」
言いたい事言って、柴田さんは駆け足で去って行った。
そうか・・・柴田さんは好きだったんだ、樫村くんの事。
それはきっと、お姉さんが生きていたときからずっと・・・・。
柴田栓子、樫村くんがいつも遠くに、いつも、いつも、見ていた人はその人だったのね・・・・。
呆然としながら次の講義がある教室に入り、どこともなく適当な席に座った。
何も考えられずにただ座っていると、横に樫村くんが座った。
はっとする・・・・どんな顔をしているんだろう、私。
「教育心理学は108ページからだったよね?柘植さん、先週のノートとって・・・」
居た堪れなくなって私は席を立って教室を走り出た。
後ろから樫村くんの声が追ってくる。
「柘植さん!!!」
続く