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反主流派がホテルに集結し始めていた頃、主流派リーダー3人の会合が衆院議員控室で行われていた。

まずは瓦斯官房長官から副総理、政調会長の二人に対して二階堂との極秘会談について説明がなされた。

「ちょっと待って下さい。それはどう言う事ですか?」

あまりに意外な内容の報告と、自分達が埒外に置かれた事に対して岸山が放つ抗議の声だ。

副総理である且来は黙って目を瞑って聞いていた。

瓦斯はそれを横目で確認して続ける。

「岸山さん、そう興奮しないで。自らが敗軍の将である事を認めた二階堂が、負けを認めた上で武士の情けを求めて来たのです。」

「いや、しかし・・・。勝手にそんな大事な話を、我々に相談もせず決めた事には納得がいきません。」

まだ且来は黙ったままである。

「そう言われても、時間的に相談している余裕が無かったのです。それくらいはお分かりでしょう?」

少々苛ついた声色で瓦斯が岸山へ答える。

その時やっと且来が口を開いた。

「まあ、岸山君、そう熱り(いきり)立つ事の程でもあるまい。瓦斯さんが裏切った訳でも無い。単に我々を軽く見ていると言うだけの事だよ。」

瓦斯への援護射撃のように思えた一言は瓦斯への強烈な皮肉であった。

「且来副総理、それは違う。私はお二人を軽く等思っておりませんよ。勘違いしないで頂きたい。本当に、単に時間的な余裕が無かっただけです。」

自分達に有利な条件であるにも係わらず、それを瓦斯一人で決めてしまった「その一点」だけでその場の空気は最悪だった。

「勝手な事をとは言え、既に約束してしまったのでは最早そうする以外はあるまい。下手に反故にしてしまって全選挙区でガチンコ勝負となると、こちらの返り血も相当な物になる。」

「それはそうですが・・・・。」

その場は且来の取りなしで一応の了解を得て、瓦斯は安倍川総理が入院している病院へと衆院解散の了承を取り付けに向かった。

派閥単位で圧倒的な有利にあった主流派であるが、その結束は安倍川総理あってこその物だった。

最早その安倍川総理は病床に伏せ、指導者達の思惑はバラバラである。

そこに政権発足時の初心は欠片も残っていなかった。

最後に残った物は自らの保身と権力への執着のみである。

安倍川総理から一任された瓦斯はその足で衆院議長の元へ向かう。

内閣総辞職は行わず、首班指名無しで憲法第7条による解散勅書を本会議にて宣言する事を伝えた。

寝耳に水の議長は激しく動揺したが、その議長に対しても厳しい口止めを行って瓦斯は主流派の総員会合へと向かった。

ほぼ同時刻に反主流派の二階堂が決起集会を開いていた事を主流派で知る者は居なかった。



ナオの圧倒的な演説が終わると二階堂は全議員へ向かって話し始めた。

「これから我々は本会議に向かう。しかし、そこで行われるのは首班指名選挙では無い。

衆議院の解散である。幹部以外は解散後そのまま地元へ戻ってすぐさま選挙の準備に入るように。

幹部は解散後、新党の立ち上げやマスコミ対応を行う。良いか!必ず勝って皆戻って来るのだぞ!」

「うおおおぉっっっ!!!」

全員の雄叫びが会場全体へ地響きとなってこだましていた。

決戦の火蓋は切られた。

この時点で主流派は思惑が入り乱れ結束が無く、反主流派は角田奈緒(ナオ)と云う新たなリーダーを手に入れ一致団結の様相を呈していた。




続く