「父さんと母さんと

 ゆづるさんはおんなじ

 気持ちなんだ。
 みんないっぱい冬子を

 愛してる。

 ゆづるさんの気持ち、

 わかってくれるよな?」

 普段無口な父が

 こんなに心の中を

 話してくれたのは

 初めてだった。

 父と母の冬子への

 深い愛情を

 話してもらって

 冬子はこの説得を

 受け入れざる

 終えなかった。

 冬子は黙って

 話を聞き、

 何度も頷いたが、

 頷くたびに

 涙がぽとぽと落ちて、

 父は可哀そうで
 仕方なくなった。

 ずっと我慢して

 生きてきた冬子の

 初恋。
 一緒にいたいと

 思うのは当たり前。

 そんな普通の

 望みさえ

 叶えてあげられないのは
 父としては

 辛くて仕方ない。
 泣きわめかず、

 涙をぬぐって

 堪える娘を父は

 抱きしめた。

 その日の夜は

 病院のベッドだ。

 暗く寒々しい

 そんな病室で

 ゆづるは昨夜までの

 温かい
 牧場の家を考えた。
「幸せだったな…。」
 そう呟いて眠った。
 

 

 

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