家の前で冬子は

 その小さな男の子に

 声をかけた。
「ゆづ!ゆづき!」
 佑月と言う名前の

 男の子が振り向く。
「ママ。

 おねぼうさんだね。

 ぼくとっくにおきてたよ。」
 にこっと笑うその顔は

 幼い頃のゆづるに

 そっくりな可愛い顔だ。
 子供はゆづるの息子。
 あの満月の夜に

 月の魔法に願った

 冬馬の願いは、

 ゆづるの命をこの世に

 残すこと。
 ゆづると自分の間には

 望んでも出来ない

 我が子を

 生み出すことだった。
 あの夜に冬子は

 妊娠していた。
 色々あったが

 無事に生まれて、

 健康に育った佑月は
 ゆづるが欲しかった

 愛情に包まれ、

 素直な良い子に

 育っている。
 佑月は冬子に駆け寄り、

 冬子は膝を屈んで

 走ってきた息子を

 抱き寄せ、

 頬にキスをする。
 たくさんのキスで

 佑月はくすぐったそうに

 笑い転げる。
 

 

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