遠い星244(TDL編41) | たろすけ日記
翌日の5月5日。

頭が痛い・・・。完全な二日酔い。今日は志奈子が帰る日だが、それ以上に裕美の誕生日でもある。起き上がってタンスを開けると、裕美に渡すプレゼントはきちんとしまわれていた。誰にも触れられたくなかったのでタンスに置いてあったのだ。

時計を見ると6時を少し回ったところ。二日酔いでも相変わらず俺の起床は早い。まるで老人やな。ロフトの方見てみたが、物音ひとつしない。流石の裕美でもまだ寝てるのか。確かに昨日は結構飲んでたよな。で、また軽い喧嘩したんだっけ。けど、そのまましばらく眠ってくれたらいい。

狭い部屋なのでそーっと動いて布団畳んでトイレに行き、そのまま歯磨きした。部屋に戻ってもまだ裕美は起きてこないので、PC立ち上げ、しばらく起動に時間がかかるのでまたそーっと窓を開けてベランダに出た。

朝日が眩しい。うん、今日もいい天気。志奈子のいる間晴れに終わってよかった。思いっきり空気を吸い込んだ。気持ちいい。そういえば俺のこのブログって雨の場面がないな。ベランダの手すりに肘かけてぼんやり外見てると、後ろから声がした。

「オハヨ」裕美か。裕美も俺同様朝早いもんな。振り返ると眩しそうな表情の裕美が佇んでた。俺の物音にやっぱり気付いて起きたようだ。髪だけ整えてスッピンのままで俺のそばに来た。スッピンでも裕美の美しさは損なわれない。逆に妙に子供っぽいところが多分に見え隠れしていた。裕美がいつもそばにいてくれる。それだけで何も要らなかった。

「オハヨ。眠れた?昨日は悪かったです、ゴメン」昨日寝るときに裕美・志奈子ともに寝巻きはないので俺の長袖シャツにジャージを穿いてもらって寝たのだった。俺の穿き慣れてるシャツも裕美が着てると取り分け異質で高価なものに見えるから不思議なものだ。もちろん洗いたての綺麗なシャツだった。だらしない俺でもその位の常識は分かってる。

「うん、ぐっすり。昨日のことはもういいです。お互いの気持ちの確認みたいなものだったし。・・・ここって静かでいいとこだね。東京とは思えない」

「気分はどう?」

「ちょっと頭が痛むかな。でもじき直るよ。大丈夫」

「それは良かった。昨日飲み過ぎたって思ったしね。俺もだけど。しばらく酒は控えとく」

「いよいよ志奈子ちゃんとも今日でおしまいだね。親しくなったから別れるのも寂しいね」

「あいつのこと気に入った?」

「もちろん。鮫君のご家族の方はみんないい人だね。私も安心しちゃった」

「安心かぁ。ウチの家族なんてどこにでもいるような連中だけどね。裕美んちもいつかは普通に戻れるよ、きっと」

「・・・鮫君てタバコ吸わないんだね。私には嬉しいことだけど。今って喫煙もすっごく煙たがられているから、喫煙者の人ってベランダで吸ったりしてるんでしょ」

「みたいやね。じゃ俺もタバコ吸ってみようか。何事も経験することはええことやって思うし」

「イヤ。タバコはお兄ちゃんでこりごりなの。タバコの臭いって私ダメなんだ。鮫君がタバコ始めたらお別れね」
(続く)