No.260 遠澤尚史さんインタビュー 3 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みんなの学び場美術館 館長 イクコクサカです。

 

今日は画家 遠澤尚史さんのインタビューをお届けします。

 

遠澤尚史さん

 

遠澤尚史さんは墨でクルマという題材に特化した制作をされています。

遠澤さんとは同じ大学で学びましたが、ここ数年で再会し、私が遠澤さんの描写力に改めて感動したこと、

墨でクルマを描くという意外性、オリジナリティーに興味を持ち、インタビューさせていただきました。

第3回の今日は、社会との接点、「あなたにとってアートとは」をお聴きします。

 

第1回 美術を始めたきっかけ、制作の素材について

第2回 テーマ「粋・朴Sui-Boku」について

 

お楽しみください。

 

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2018GT-Rミーティング開催記念 告知原画

A1近似サイズ 水彩紙 墨

 

国産車の中でも人気の高い 今では海外需要も高く

新車時をも上回る価格でないと入手できないクルマ。

そのクルマが一堂に会するミーティングの主催者からの依頼で制作

 

 

 

 

設楽様公開用

商用車専門店にてお客様への納車記念として制作

A4サイズ額装 水彩紙 墨

 

 

 

 

ダンボルギーニを段ボールに

紙素材と墨の相性や独自の表現を求めアクリル着彩のアクセントも模索

ダンボルギーニを製作された社長様へ寄贈し、

自身のCar- Illustration創作活動のスタートと決意を伝える。

 

石巻市桃生町の今野梱包株式会社、社長様へ寄贈 

 約600㎜×800㎜サイズ 空き箱組み合わせ

墨 アクリルガッシュ一部着彩

 

 

 

習作 fdリア

 

 

 

 

習作

 

習作〜機械や造形的な美を緻密・細密に より写実的に

時間をかけて制作する方向性だけでなく、

より墨を活かし時間をかけるところ 逆にスピードを感じさせるところ、かすれ、滲み、色味等で

車やバイクが持つ 有機的且つ友好的な魅力が伝わるポートレートを模索中。

 

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・社会との接点

クサカ

制作や発表する時に、社会との接点として意識することはありますでしょうか。

 

 

遠澤さん

俺の野望としては、「絵で食べている」とキーワードのように言っていますけど、絵で食べることが目的ではなくて、美術教員時代の体験があります。

「美術では食っていけない、食うことに関係ない」と親に言われて育った子どもが俺の授業を受けた時に、何もやらなくて、「こんなのやっても将来なんの役にも立たないし」と言われたのが俺、凄い悔しくて。「俺は絵で食ってるよ」というのを見せてやりたい。

 

 

クサカ

良いですね。(共感!)

 

 

遠澤さん

あとはそういう子供たちを集めたい。それで俺に絵を頼んだ人たちがクルマを見に集まったり、学校に行っても何もつまらない子、学校に行きたくない子を集めて、最終的にはワイワイするのをやりたいなという夢があります。

そこで絵を描いたり、フリースクールじゃないですけど、俺が学校でできなかったことをやるために、根っこを張って「俺、絵で食ってる」っていうのがあって。

 

だから最終的に俺がやりたいことは絵を描くことではなくて、そういう子たちも含めた、社会に貢献できる動く絵を描きたいというのがある。

 

 

クサカ

素晴らしい!

 

 

遠澤さん

そのために親父が作ってくれたアトリエなんかも、今は親父が使って、車がおさまったりしてますが、ハードはあるので。

 

 

クサカ

既に場所は準備ができてるんですね!広い場所なのでしょうか。

 

 

遠澤さん

田舎なんで。田舎でしかできないことをそこでやりたい。親父もそれには賛同してくれていて。

 

 

クサカ

それは素晴らしいですね。

 

 

遠澤さん

だから、俺が今描いてるのは、本当ではないということ。将来につながるためのこと。それを続けていくためには、自分の好きなことじゃないとダメな訳。だからクルマなんですよ。

 

そういう子供たちが集まってきたり、クルマが好きな子が集まってきて、実は学校に行けてないということになっていても「いや大丈夫だよ」と。そういうことをいろいろ相談したり、体験させたり、どっか連れて行ったり、そういうことができるような。

 

俺、結局学校に勤めてた時も、特別支援を担当してた時も、俺、不登校の子ばっかり預けられて、やっぱそういう子どもたちに学校だけが全てじゃない、もちろん義務教育だから行かせなきゃ行けないんだけど、でも、学校に行かなかったらお前は終わりだ」みたいな選択肢は可哀想だと思っていて。

 

そういう子たちでも俺の所に来ていれば「出席にしてくれ」、「してやってもいい」って、そういう学校との関係性も作りたいし、学校で出来なかったことをやると思って辞めたから、好きなことをやりたいのはもちろんあるんだけど、ゆくゆくはそうやって返していきたいなと。だから俺、自分のやってきたことを全部無しなしにするではなくて、そこに帰着させるように、自分では動いてはいるつもり。

「絵は仕事になるよ」というのを俺が見せないといけない。

だから今回専門学校から講師の話が来ても、嫌とは言わず教えにいっているし、もちろん助かるというのもありますが。

 

でも俺、一回教員辞めて後悔するのが嫌だから、教員なんか絶対やらねぇって思ってたんですよ。だけども俺のやっていることが役に立つんだったら、いいなと思って。

 

専門学校に来る子はやりたくて来てるから何にも手がかからない訳ですよ。凄い描くし。

そういう所に行けなくてくすぶっていたり、どうしようって悩んでて命をなくしたりする子がいるのはやっぱり辛いよね。

 

そこに俺が一人いたら、救えるものがいたり、見つけられるものもあるんじゃないか、何か輝くもの持ってて、俺一人が何かすることによってそういう子が一人でも「よし!」って思えることができれば、いいなと思っている。

 

だから、俺が「絵を描こう」と言った時に、「絵なんかなんの役にも立たない、仕事にならない」と言った子たちに、俺が、「絵は仕事になるよ、俺は絵でやってるよ」と言わなきゃならないので、やってるのね。

 

浅はかなことかもしれないけど、だから俺は意地でも食わなきゃいけない,

だからさっき言ったような言われたままの依頼制作でも今は食うことが優先だから、でもそれで感動してくれる人もいる現状って幸せなことだと思っている。

 

 

クサカ

すごいね。素晴らしい。

 

 

遠澤さん

大学出た時には全くそんなこと考えなかったけど。やっぱり、教員の仕事を辞めてまた違うことをいろいろやって、今に至ってるからそういう考えに帰着しているんではないかなと。

 

 

クサカ

立派だね。

 

 

遠澤さん

立派でないの。今が立派でないから最終的にそうなろうと思ってるの。

 

 

クサカ

私もそう。

 

 

遠澤さん

やっぱ、芸は身を助けるじゃないけども、自分のできることがそういうことにつながるんであればやり続けなきゃダメだと思うどうんですよね。自分の欲求だけじゃなしに。それがやっぱり必要だと思っていて。せっかく勉強もしたし、描くこともやったたし、なんらかの形では、将来にいかせなきゃいけないし、教員もそうだし。

 

やっぱり持ってるもので生きてって、生かしていかないと。だから何も考えないで、クルマを描いてるだけじゃないんですよ。実は。あまり言ってないですよ、これは。

 

 

クサカ

そう言えるのはすごいんじゃない。

 

 

遠澤さん

クルマがすごく好きないのは間違い無いですけど、それだけではないですね。多分。

 

 

クサカ

はい。

 

 

遠澤さん

コロナのことになって、クルマの集まる場所がなくなり、人の集まるところにもいけなくなって、車で県を跨ぐこともできない、俺のやってたことが全てダメになってしまうから「いかんともしがたい」ですよね。今までやってきたことが全部ダメになってしまったらどうしようって、今、正直なってる。

教員続けてたとしたら、定年退職する年ぐらいには、そういう子供たち集める活動もちゃんとやりたいと思っている。

 

そういう年になるとそんなにそんなに絵も描けなくなってくるから、だからなんとか少しでも自分の好きな絵を描いて子どたちに見せられるようにしたいというのはある。

 

学校でできないことをやりましょう、という社会づくりとか地域づくりとか、それがすごくない現状があるから。

 

コロナ禍になってますます人とのつながりを断とうという世の中になってしまったので、これが開けた時により強いものにしていく必要があるし。子供たちのいろんな話を聞いてもなんか危機感がある。

 

 

クサカ

私は遠澤さんのその人のために頑張ろうというところはとても素晴らしいと思います。

 

 

遠澤さん

それは絵を描き始めた頃からずっと思っている。

それを言うと「なんかつながらないね,クルマならクルマ好きが集まるカフェ開いたらいいじゃん」という人もいる。それも夢でもある。だから全部複合させようと思っている。

人が集まってもいいし、そこで子供たちが勉強してもいいし、俺が「コーヒー.ほれ」って出したりできればいいし。

 

 

クサカ

同じ学年だかじゃなく、子供と大人とね。

 

 

遠澤さん

そえそう。クルマは不思議な力あるんですよ。子供たちにとっても、クルマっていうのはヒーローであるから。古いクルマ好きな子もいっぱいいて。

 

そういうクルマを見せるのもいいだろうし。絵が好きな子だったら俺が絵を描くのを見て、「どうやって描くの?」でもいいだろうし。「勉強わかんねぇ」って言ったら、「俺もわかんねぇぞ」と言って一緒に勉強してもいいし。

 

クサカ

遠澤ベースですね。

 

 

遠澤さん

そう!俺がやりたいことでみんな楽しんでくれれば、そしたら来なきゃいけなくてくる子供も少ないだろうし、放課後児童どうのこうのにいかなくても「来いやこいや、俺いなくても遊んでろ」とか、そういうこと、学校にいた時からすごくやりたいと思っていて。

 

学校でやると怒られるから、「帰ってやっていいですか?」不登校の子供呼んで、「宿題一緒にやっか」とか。そしたら別に怒られないじゃないですか。その子のことばかり特別扱いしてると言われても「俺帰ってますから」と言えるし。学校では今できないことの方が多いから。逆に俺ができることが多いんじゃないかなって。

 

 

クサカ

素晴らしいね。

 

 

遠澤さん

教員を辞めた時だって後悔してないかと言ったら嘘で、離任式の時とかに

「町で見かけても『先生』とか言ったら、俺ゲンコツすっからな」って。

でも俺は「辞めて絵を描いて頑張ってる、どっかで名前見たって言われるようにしてやっていくからな」と言って辞めたので、何かはしてなきゃいけないんです。絵で食ったなきゃいけないんですよ。「ほれ、見ろ」って。だからそこは意地になっているところでもあり。

 

もう少し肩の力を抜いてできればと思っていますが。今は少し焦っているので。時期、人、もの、経済的に、いろんなものがピタッとあって機が熟してこないとダメなんだよね。

 

 

クサカ

素晴らしいですね。これまで、私が全然知らなかった一面が聴けました。

最後に、あなたにとってアートとは?

 

 

遠澤さん

俺にとってアートとは、言語に変わるコミュニケーションツールです。

mustであり、shouldでもあり。絶対必要なものだし、こうあるべきだというものが強く出るものだと思う。自己主張じゃないですけど。やっぱ、言葉だけじゃ通じないことっていっぱいあって、第二の言語だと思っているので。スピリチュアルなことじゃなしに、伝わることって絶対あるもん。

 

クサカさんの作品も言葉で言ったら大変じゃない?だけど「なんだか感じるよ」っていう感じ。決して誇示するものとかではなくて、分かり合いながら、伝わっていく、柔らかいものというイメージ。

 

過激なアート志向を持っている人もいるだろうけど、そうじゃないなと。何かを変えてやろう、とかではなくて、「これ見て分かる?」、「分かる」、「じゃあ俺もっとこうして行こうかな」みたいな、優しいものであるべきだと思っている。軟弱かもしれないけど。でも分かり合って、伝え合って、俺もそういうものとして捉えるようになりましたね。

 

 

クサカ

若い時って、優しいことが軟弱だと誤解じゃうんだよね。でも強くないと優しくなれないよね。

 

 

遠澤さん

心からそう思えるもん。前は「俺だけわかればいいんだ」みたいなエゴの塊りみたいなものを作ったりとか、過激なものをやってたりとかするけれども、結局、分かってもらいたいから、逆にそういうので目を引かせるというのもあったよね。

 

だけども、もっと素直に伝えていければ、それをもっとストーレトに表現していいと思う。説明的なことはあまり良くないという風潮はあるけど、でも分かってもらえるんだったら、多少説明的でもより強く伝わった方が感動は大きいと思うし。

回りくどく、分かる人にだけ分かればいいというのでは、もったいないもんね。

 

だから俺は、今は分かりやすいことをやっていると思います。前はそうじゃなかった。

軟弱でも、ハードロックじゃなくて、ポップになったと言われても全然良くて。

 

 

クサカ

今回は素晴らしいお話を聴かせていただき、ありがとうございました。

 

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■編集後記

 

私は、遠澤さんがクルマのオーナーさんにとって、とても大切なものとして、クルマのポートレレートを描いてさしあげるという創作がとても素敵だと感じています。

そしてご自身が絵で食べることこだわる理由がちゃんとあって、なおかつ、それ自体を目的とするのではなく、最終的になさりたいこと、子どもたちの居場所を通作るということに目を向けて活動されているところにとても感動しました。

 

今回のインタビューはコロナ禍で、人が大勢集まること、まだ県をまたいでの移動を控えなかればいけならず、遠澤さんご自身も活動に影響のある時期にインタビューさせていただきました。

今は、世の中のあり方の大きな変化点の時期ですが、これから先を見据えて活動されている遠澤さんに

私はとても共感し、励みをいただきました。

 

貴方様はいかがでしたか。

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

 

 

 

 

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■遠澤尚史さん プロフィール

 

 宮城県出身 

1970年10月6日生まれ

東北生活文化大学卒業 家政学部・生活美術学科 油絵専攻

1998年~2009年 宮城県公立中学校にて美術科講師~教諭として勤務

  河北美術展 入選2回(洋画部門)

2010年~宮城県内の物流会社にて貨物運行管理資格者として勤務

2014年~宮城県内の中古商用車専門店で中古車販売士として勤務

2015年11月~水墨クリエーターとして宮城県内にて制作活動中

2016年  第2回 カウンタックフェスタ イン いわて 2016 ポストカード制作

2016年 石巻市桃生町の今野梱包株式会社様(製作工房)(石巻市桃生町)

「つどいの食卓 カウンタック」様(岩手県奥州市水沢区)

2018 GT-Rミーティング開催記念原画制作

    他、個人邸に依頼制作の作品納品 多数(300件)

 

■ホームページ https://sui-boku-create.jimdofree.com/

■Instagram  https://www.instagram.com/naofumi_tohzawa/?hl=ja

 

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