浜松の家、現場監理。現場では大工さん二人、瓦屋さん一人が、工事を進めている。


玄関の式台が入った。材は以前の民家に使われていたもの。虫に食われた部分も多かったが、玄関のサイズを変えたので、しっかりしたところだけを選びだして、古い味がありながら、なおかつ、しっかりしたものを実現している。


新材の柱は、手鉋をあててから、古色をつけている。同じ新材の古色塗りでも、超仕上げと手鉋では、仕上がりが全然違う(もちろん、手鉋をあてる大工さんの腕にもよりますが)。


座敷では、大工さんが床の間を再現中。床柱、床框、落掛は既に入っていて、今から手前に見える地板をいれるところ。蟻桟は新しく入れ替えられた。


床の間横には書院を新しく設けている。基本的に座敷廻りは、以前の建物の再現としているが、ご先祖様から引き継いだものに、今回建築主さんが唯一新たに付け加えたのが、この書院だ。


天板の下には地袋の小さい襖が入り、内部は掘り込んであり、襖をあけて、足を降ろせるようになっている。実際に使うための書院である。


天板は大工さんが持っていたケヤキの古い板を使っている。先日、銀閣寺東求堂同仁斎で、君台観左右帳記に基づいた飾り付けがされた書院を見たが、あのような伝統的な書院の素晴らしさを現代に活かそうという、建築主さんと私の試みでもある。(私も以前から、現代の使える書院、というのをやってみたかったのである)


ちょっと失礼して、ノートパソコンを持ち出して、実際に使わせていただいたが、使い心地は最高!窓からはそよ風が入ってくるし、ふと眼を外にやれば、鳥が横切ったり、枝に止まり囀っているのが眼に入る。コンセントや照明など現代的な設備も備えるので、快適な使用感になると思う。同仁斎は北向きで、ここは西向きなので、簾を取り付けるなどの工夫があったほうがよいかもしれない。


そうこうしているうちに、床の間の地板が取り付けられた。引き続き、床脇にあった神棚などが再現される予定。


下屋の軒樋は、吊り下げ式の金物を使用した。


取付金具の都合で、いつもより、樋の位置が低い。


おかげで軒瓦がはっきり見えてよいかも。また軒樋の下端もすっきりして、古い建物の再現ながら、現代的なかっこよさも、少し加味できたのでは、と思っている。


下屋については、以前の建物と位置も高さも全く同じ。玄関の位置もまったく同じで再現しているが、大屋根は茅葺きから瓦屋根に、と、以前の名残を感じさせながら、新しい建物となっている。


新しい建物といっても、建材などは基本的に使わず、伝統的な手法を駆使した新しい建物である。


庭に咲くギボウシ。


たわわになったカキ。


西の脚立より。下屋の風切丸が入って締った。


書院を外から見たところ。


下屋の端部詳細。


外壁は、京都から来た左官屋さんがフェルトを貼ったところ。


最終的な外壁の仕上げは白っぽい掻き落としになる予定。


大屋根。ガラス瓦がいれられた。


五列三段、15枚のガラス瓦。


鬼瓦も準備万端。古いものを再塗装したもの。


ガラス瓦のトップライトの内部の様子。


トップライトの光に照らされて、はつり目のある貫の陰影がくっきりと浮かび上がる。狙い通り。


ロフトから見る。天井高さ1.4mのロフトも吹き抜けに面しているので、閉塞感がなく、よい感じ。