MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

言葉を変えることで背負う責任

2019-12-05 01:37:48 | 通訳者のつぶやき
先日、ある研修会で議論になったことです。

コミュニティ通訳の現場で、
話者の言葉がつたない(きれいな言葉でない)ので、
通訳者が変えて話さなければ
本人の利益にならないという主張がありました。

コミュニティ通訳の原点は
誠実に変えずに通訳することですが
もちろん、現場によっては擁護が必要な場面もあります。
だから、それが一概に悪いと断罪するわけではありません。

ただ、通訳者が預かった言葉を変えるということには
その言葉を変えることで背負う責任が発生するということを
自覚しておかなければいけない。

極端な話をすると
がんの告知を本人がショックを受けるからと家族が伝えない事があります。
それは患者本人の年齢や性格や状況をいろいろ考慮した上で
本人に一番それが良いのだと考えて行う行為です。
結果、それがよかったか、悪かったかは様々だと思います。
でも、そこで、本人に伝えないということを周りの家族は背負っています。

ましてや通訳者は第三者です。
どんな状況においても、そこにある言葉を変えたり訳さなかったりする時には
その責任を自分が背負えるのかを考えなくてはなりません。

通訳者はその現場で話者から預かった言葉を
相手に届ける役割を果たします。
その間で、変えることは本来あってはならなことです。
なぜなら、同じ言語の人同士なら、通訳者が入って言葉を変えることがないから。
通訳者には言葉を変える権利はありません。
そこをあえて、変えなければいけない場面に遭遇したときには
通訳者は大きな責任を負うのだということを忘れてはならないと思います。

12月7日は三重県で開催される第34回日本国際保健医療学会のシンポジウムに登壇します。
中村安秀先生が座長をされるのですが、
「外国人も住民です!」というストレートなテーマで話し合いがもたれます。
最近、医療通訳の議論も一度原点回帰しなければいけない局面に来ていると感じていました。
だからこそ、このタイミングでこの議論、とても楽しみにしています。
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