自己を豊潤にする
自己には、自分は一体何者なのかを知ろうとする自己を主体的自己(I)、知られる自己を客体的自己(me)、さらに、周囲からそうであるとみなされている自己を社会的自己(social ego)の3種類がある。
自己表現というときの自己は、主体的自己(I)のことである。この強さと質(内容)とが問題となる。
主体的自己の強さとは、俗に言う、「押しの強さ」という側面と、客体としての自己を冷静かつ客観的に見つめられる(フォーカスイング;focusing)側面とがある。
両者は乖離していることがある。たとえば、タイプA性格の人。自信満々で仕事に熱中し、時間に追われるかのごとく仕事をしてしまうような人は、押しは強いが、自分の内面を見つめるようなことはしない。
しかし、真の主体的自己の強さとは、みずからの性格をきちんとつかみ、自分の能力の弱点さえも冷静に知る度胸もなくてはらない。クイズで、そのあたりを知って欲しい。
もう一つ、自己表現というからには、表現するに値する「自己の内容」がなければならない。ただ、大声で叫ぶ度胸だけしかないのでは、表現になりえない。
「自己の内容」を作り出すのは、教養と信念、換言するなら、知識と自分なりの考えだと思う。このあたりが、実は日本では貧弱である。
その因は、もっぱら教育問題に帰着してしまう。知識は受験用、自分なりの考えは抑制することが是という学習環境は非常にまずい。