(大きな桃が川を流れている)


桃太郎
「(桃の中で)よし、もうすぐおばあさんが洗濯をしている辺りだな。
 もうすぐですよ、おばあさん。」


(ものすごい勢いで別の大きな桃が桃太郎の大きな桃を追い抜いていく)


桃太郎
「うわっ!びっくりした!
 危ないなぁ・・・。」


(桃太郎の桃の前に男が現れ、桃を行方を遮る)


桃太郎
「うわぁ!何!(桃を止め、窓を開けて顔を出す)」


「すみません!
 (警察手帳を見せる)こういうものです!」

桃太郎
「あ、刑事さん。」

刑事
「恐れ入ります!
 緊急事態なんです!前の桃を追っていただけませんか?!」

桃太郎
「え、でも、これからおばあさんに拾ってもらわないといけなくて・・・」

刑事
「緊急事態なんです!」

桃太郎
「緊急事態でしょうけど。
 私、おばあさんに拾ってもらった後、鬼退治に行かないといけないんです。」

刑事
「凶悪犯を野放しにしてもいいんですか?!」

桃太郎
「鬼を野放しにしてもいいんですか?」

刑事
「お願いします!
 このままでは逃げられてしまう!」

桃太郎
「でも・・・」

刑事
「お願いします!!」

桃太郎
「・・・わかりました。」

刑事
「ありがとうございます!(桃に乗り込む)」

桃太郎
「・・・せまいなぁ。
 そもそも2人乗りじゃないのに・・・。」


(桃、流れ始める)


刑事
「もう少しスピード出ませんか!?」

桃太郎
「無理ですよ、桃ですから。」

刑事
「(窓を開けて、拡声器で)前の桃、止まりなさい!
 至急、桃を路肩に寄せて止まりなさい。」

桃太郎
「・・・止まる気配ないですね。」

刑事
「こうなったら・・・」

桃太郎
「何をする気ですか?」


(桃のルーフにパトライトを乗せる)


サイレン
「ウーーーーウーーーー!!」

刑事
「(拡声器で)前の桃、止まりなさい!
 前の桃、止まりなさい!」

桃太郎
「なにこのけたたましい感じ。
 もっとゆっくり流れたい。
 少なくとも『どんぶらこどんぶらこ』流れてる感じじゃないよね。」

刑事
「一向に止まる気配がないな・・・」

桃太郎
「あ、おばあさんが見えてきた!
 刑事さん、僕の目的地はここなんで、もう降りてもらっていいですか?」

刑事
「そのまま通過だ!」

桃太郎
「え、ちょっと!!」

刑事
「いけぇーーーー!!」

桃太郎
「あ、おばあさん!!」


(ものすごい勢いでおばあさんの前を桃が通過する)


桃太郎
「おばあさーーーーーん!!」

刑事
「(拡声器で)前の桃、止まりなさい!!
 前を走る黄色い桃、止まりなさい!!」

桃太郎
「おばあさん・・・、今、拾おうとしていたのに・・・。」

刑事
「(後ろを見て)ん?誰かが追いかけてきているな。」

桃太郎
「(バックミラーを見て)おばあさんだ!
 おばあさんが桃を追いかけてる!
 ものすごい勢い!ものすごい脚力!」

刑事
「捕まるな!なんか怖い!」

桃太郎
「僕もちょっと恐怖を感じてますけど・・・」

刑事
「周りの人がこっちにスマホを向けてるのは何だろうな。」

桃太郎
「いや、面白い画だからですよ。
 全速力で流れる桃を全速力で走る老婆が追いかけてるからですよ。」

刑事
「くそぉ!前の桃との距離が全然縮まらない!」

桃太郎
「いい加減、降ろしてもらっていいですか?
 僕、あのおばあさんに拾ってもらいたいんですけど。」

刑事
「よし、応援を呼ぼう(スマホを取り出す)」

桃太郎
「全く聞いてない・・・」

刑事
「(スマホで)こちら、大門。至急応援を頼む。」

桃太郎
「めんどくさいことに巻き込まれちゃったなぁ・・・」

サイレン
「(後方から)ウーーーーウーーーー!!」

桃太郎
「なに、この音。」

刑事
「(後ろを見て)どうやら応援が来たようだな!」


(後方からパトライトを乗せた白黒の桃が大量に流れてくる)


桃太郎
「なに、この画!昭和の刑事ドラマ?
 思いっきり時代に逆行してるし!
 確かに昔の話だけど、『昔話』ってこういうことじゃないですからね!」

刑事
「よし、運転を頼む。」

桃太郎
「さっきからずっと運転してますけど。
 何をする気ですか?」

刑事
(桃から半分身を乗り出して、ライフルを構える)

桃太郎
「ちょっと、やめてください!
 昔話でライフル持ち出さないでください!
 ライフルが出てきた時点で大抵のことは解決できちゃいますから!」

銃声
「ズドーン!」

桃太郎
「撃った!桃太郎の物語中にライフル撃った!」


(ライフルの弾が桃の葉っぱの部分に当たり、犯人の桃、横転。)


桃太郎
「あーあーあーあー・・・。
 なんとまぁ派手なカーチェイス・・・。
 あ、この場合はピーチチェイスか・・・。」

刑事
「(横転した桃の横に行き)よし、出てこい。」


(桃から出てくる)

桃太郎
「まさかの鬼だった!!」


「もう悪さはしません・・・。」

刑事
「話は署でじっくり聞こう。
 (桃太郎に)ご協力感謝します。」

桃太郎
「もうやめてくださいね、こういうの。」

刑事
「(犯人に)よし、行くぞ!」


「もう悪さはしません・・・(連行されていく)」

桃太郎
「ホント、なんだったんだ・・・」

おばあさん
「ハァハァ・・・。
 やっと追いついた・・・。(フラフラになりながらやってくる)」

桃太郎
「おばあさん!大丈夫ですか?」

おばあさん
「全力を出せた・・・。
 多分、日本新出たと思う・・・。」

桃太郎
「何の日本新かわかりませんけど・・・。

 大丈夫ですか?歩けますか?」

おばあさん
「厳しい・・・。」

桃太郎
「わかりました。
 わたしの桃に乗ってください。」

おばあさん
(桃に乗る)

桃太郎
「(桃に乗って)よし、川をさかのぼろう。」


「ピピーピピー。バックします。
 ピピーピピー。バックします。(川上にさかのぼっていく)」

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

刑事さんが車に乗り込んできて、「前の車を追ってください」というのはコントや昔の刑事ドラマの王道スタイルですけど、

それを今までやられていないスタイルの話を作りたいなと思って作ったコントです。

今回も、読む方の想像力に委ねるコントになりました。

 

【上演メモ】

人数:4人

桃太郎

刑事

おばあさん

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★★★☆☆
備考:桃に入ったり出たり、身を乗り出したり、割と動きで魅せるコントなので、準備が大変だと思います。

コント内では高速で移動し続けますが、舞台では定点なので、どう表現するか、難しいところです。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】訪問者
【コント】ターミネーター
【コント】小人たちの同窓会
【コント】面接
【コント】お主もワルよのぉ#2

 

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

・内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。

・お題をいただいてから、公開までに数か月かかることがあります。

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