(ポツンと証明写真機が置かれている)


写真家(心の声)
「私は元々写真家でした。
 撮影中の事故で亡くなり、
 今ではこの証明写真機の地縛霊になっています。」

就活生
「(やってくる)履歴書の写真、履歴書の写真・・・!」

写真家(心の声)
「なんとかこの証明写真機から解放されて、
 天に召されたいのですが・・・。
 っていうか、写真家が証明写真機の地縛霊になるってなんだよ!」

就活生
「えーと、お金を入れて、このボタンを押して・・・と。」

写真家(心の声)
「なんとか、生きている人に気づいてもらおうと努力しています。
 そうすれば、解放する方法を知っている人がなんとかしてくれるかもしれないので。」

シャッター音
「カシャ。」

就活生
「(出てくる)30秒後に写真が出てくるのね・・・。」

写真が出てくる音
「コトン。」

就活生
「あ、出てきた(できた写真を見る)」

写真家(心の声)
「例えば、証明写真に映り込んだりしてみます。」

就活生
「え・・・、なにこれ・・・。」

写真家(心の声)
「気づいてもらえたかな。」

就活生
「・・・もう一人写ってる。
 もしかして・・・幽霊?」

写真家(心の声)
「お、いいぞ!」

就活生
「・・・プッ!
 なにこれ!変な顔!!」

写真家(心の声)
「・・・え?」

就活生
「なんで真顔なのよ!!
 真顔の幽霊なんて初めてみた!」

写真家(心の声)
「いや、証明写真ってどうしても真顔になっちゃうんです!
 あるでしょ。
 自撮りの時は綺麗に撮れるのに、
 証明写真だと持てるポテンシャルの七割も出せないこと!」

就活生
「あはははは!何これ!
 真顔!あはははは!」

写真家(心の声)
「うん、笑わないで。
 こっちは真剣だから。」

就活生
「あはははは!
 あはははは!!」

写真家(心の声)
「うん。やめて。
 そんなに笑わないで。」

就活生
「ヤバい!お腹いたい!
 ホント、お腹いたい!」

写真家(心の声)
「やめろぉ!!」

就活生
「・・・でも、これ証明写真としては使えないわね。」

写真家(心の声)
「・・・まぁ確かにね。」

就活生
「心霊写真としてテレビに送ろうかしら。
 知り合いのディレクターやってる人に。」

写真家(心の声)
「あ、送ります?」

就活生
「メールで送ってみよう。
 送信。」

写真家(心の声)
「テレビに出れば知名度が上がる!
 いいんじゃないですか?!」

バイブ音
「ウィーン。」

就活生
「あ、返信きた。」

写真家(心の声)
「なんだって?」

就活生
「・・・『面白いけど、意図がブレる。』」

写真家(心の声)
「まぁ、確かに。」

就活生
「『笑わせにかかっているのか、怖がらせようとしているのかわからない。』」

写真家(心の声)
「いや、気づいて欲しいだけ!
 幽霊がみんな怖がらせようと思ってるわけじゃないよ!
 偏見だから!」

就活生
「『証明写真としても、心霊写真としても使えない。ボツ。』」

写真家(心の声)
「いや、もう、ただただ辛辣な言葉が返ってきた・・・。」

就活生
「(証明写真機に)使えないなぁ!!(帰っていく)」

写真家(心の声)
「えー・・・。写真家としても、霊としても傷つくんですけど・・・。」

証明写真機
「使えないって言われた・・・。」

写真家(心の声)
「うわぁ!ビックリした!
 え、私、写真機から音声出せるの?
 え、今、どうやった?」

シャッター音
「カシャ。」

写真家(心の声)
「いや、違う。
 写真撮っちゃった。
 こうか?」

写真が出てくる音
「(写真が出てくる)コトン。」

写真家(心の声)
「違う違う違う。
 誰も写ってない写真出てきちゃった。
 こうかな?」

お釣りが出てくる音
「(釣り銭口から硬貨が出てくる)ジャラジャラジャラジャラ!」

写真家(心の声)
「待って!今日の売り上げが!!
 違う違う違う!
 止まれ止まれ止まれ!」


(硬貨が止まる)


写真家(心の声)
「え、何、どうなってるの?」

証明写真機
「こうかな?
 あ、出た出た出た。声出た。」

就活生2
「(やってくる)証明写真・・・証明写真・・・。」

証明写真機
「いらっしゃいませ。
 お金をお入れください。」

就活生2
「600円か・・・。
 小銭ないから1000円で。」

写真家(心の声)
「400円、お釣りお釣り・・・。
 あぁ、さっき小銭出ちゃったから出せない・・・。
 仕方ない・・・。」

証明写真機
「お釣りはそこに落ちている中からお拾いください。」

就活生2
「何、そのシステム!
 ガバガバ通り越してるんだけど!
 盗られないのかしら・・・。
 田舎の無人野菜販売所みたいなもの?」

証明写真機
「赤枠に顔が入るように調整してください。」

就活生2
「こうかな。」

証明写真機
「あ、もうちょっと右。」

就活生2
「もうちょっと右。」

証明写真機
「ちょっと顔を上げてもらって。」

就活生2
「顔を上げて。」

証明写真機
「ごめんなさい。少し下げて。」

就活生2
「上げすぎ・・・って、なにこの証明写真機!」

証明写真機
「いや、もともと風景写真家だから、人を撮り慣れてないんです!」

就活生2
「証明写真機が風景写真撮るって何?!
 大自然の中にポツンと証明写真機がある画が浮かぶんだけど!」

証明写真機
「はい、撮りますよー。」

就活生2
「いや、無理無理無理!
 怖い怖い怖い!
 違うところにする!」

証明写真機
「あぁ、行かないで!」

就活生2
「返金!」

証明写真機
「そこからお取りください。」

就活生2
「ガバガバ!!(お金をとって帰っていく)」

写真家(心の声)
「行っちゃった・・・。

 接客慣れてないからなー・・・。」

女子高生1
「あ、バイトの履歴書の写真撮っていい?」

女子高生2
「いいよー。」

写真家(心の声)
「あ、新しいお客さんだ。」

女子高生1
「えーと、ここに座って・・・。」

写真家(心の声)
「ん・・・?」

女子高生1
「600円か。
 高いけど、仕方ないか。」

写真家(心の声)
「・・・み、美羽!
 ひょっとして美羽じゃないか?!
 私だよ!父さんだよ!!」

美羽
「お金を入れて・・・。」

写真家(心の声)
「あれ、音声出なくなってる・・・!
 娘が目の前にいるのに・・・!!
 こうなったらせめて映り込みたい!」

シャッター音
「カシャ!」

美羽の友だち
「撮れたー?」

美羽
「撮れたー。」

写真が出てくる音
「コトン!」

美羽
「出てきた出てきた。」

美羽の友だち
「見せて見せて!」

美羽
「やめて、素の顔してるから。(写真を見る)」

写真家(心の声)
「美羽。父さんだよ!」

美羽
「・・・あれ?」

美羽の友だち
「どうしたの?」

美羽
「もう一人写ってる。」

美羽の友だち
「もう一人?」

写真家(心の声)
「美羽。覚えているかい、父さんの顔。」

美羽
「これ・・・、草刈正雄じゃない?!」

写真家(心の声)
「ん?」

美羽の友だち
「マジ?!
 草刈正雄と写真撮れるの?この証明写真機!」

写真家(心の声)
「違う違う!
 父さんのこと、草刈正雄って呼んでくれるのは嬉しいけど。」

美羽の友だち
「・・・え、でも、これ草刈正雄じゃなくない?」

美羽
「じゃあ、役所広司?」

美羽の友だち
「んー。」

美羽
「中井貴一?」

美羽の友だち
「んんー。」

美羽
「市村正親?」

写真家(心の声)
「そのラインナップに父さん並ぶんだ。
 美羽、父さん嬉しいよ。
 今から、この写真機から出て行けそうな気がする。
 成仏しまーす!」


(写真機から父の霊が抜ける)


美羽の友だち
「・・・でも、これ美羽のお父さんに似てない?」

美羽
「お父さんに・・・?」

美羽の友だち
「そう。」

美羽
(写真をまじまじと見る)

美羽の友だち
「・・・どう?」

美羽
「似てないよ。
 行こ。(走り出す)」

美羽の友だち
「似てないか。(走り出す)」


(ポツンと取り残される証明写真機)


美羽
(立ち止まり、改めて写真を見る)
 
山になった小銭が崩れる音
「チャリン・・・」

美羽
(振り返り、証明写真機を見る)


(ポツンと証明写真機が置かれている)


美羽の友だち
「美羽ー!行くよー!!」

美羽
「・・・うん!!(走り出す)」

 

 
 
 
 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

「迎え火」「自由研究」「心霊写真」と、8月は図らずも夏らしいコントが並んでいます。

今回は心霊写真と結びつかないようなものをくっつけてみようと考え、証明写真機とくっつけてみました。

 

明確にオチとわかるもので終わらず、余韻を残して終わる感じ。

数年前に一度やりましたが、たまーにこういうのをやっていきたいと思います。

 

【上演メモ】

人数:5人

写真家

美羽

美羽の友だち

就活生

就活生2

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★★★☆☆
備考:主役のお父さんは影マイクで演じることになりますが、証明写真機から声を出しているか、心の声なのか、お客さんから明確にわかるような仕組みが必要です。

あと、シャッター音や証明写真が出てくる音、小銭の音などのSEも必要です。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】三者面談#2
【コント】大名行列
【コント】ペットショップ
【コント】面接
【コント】居酒屋

 

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

・内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。

・お題をいただいてから、公開までに数か月かかることがあります。

・公開までにアメブロを退会された場合、公開を見送る場合があります。

 

↓こちらでも面白いブログがきっと見つかる!はず。
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