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「リアルフェイス」 知念美希人 実業の日本社文庫

2019-05-16 | 日日是好日



新聞広告などであまりによく見かける作者なので、手近なところでこの本に手を出した。これが大失敗で、早い所でストーリーが読めてしまった。ま、旬な作家なので読んでおいてよかったかもしれないけれど。


題名から整形もの(?)だと判る。こういうテーマは多いだけにどう料理するのかお手並み拝見で、いつも後先考えないで買ってくると言われる自分に少しへこみながら、それでも最後まで見届けなくてはと読み切った。乗り掛かった舟だ。

主人公は形成外科医で柊貴之、クリニックの整形美人看護師の一色早苗、天然自然な美人の麻酔医朝霧明日香。この人たちがはやりのネーミングでないのはいい。朝霧はちょっとキラッと引っかかるけれど。

柊は天才的に腕がいい、金になる仕事なのでいい服にいい車、いいビルにいいクリニックを構えているが中身は変人。
「芸術を刻む外科医」ということで、整形外科とは一線を画す形成外科医であるという、なるほどなーな一家言がある。

そして物語は進む。

苦労を掛けた亡き妻に生き写しの顔にしてほしいという依頼に、今の妻はなぜか顔を捨ててもいいという。財産が目当てか。と周りは言うが最後はちょっといい話。

やくざの組長が、孫娘可愛さに、横領で追われている出来の悪い息子の顔を変えてほしいという、二千万で引き受け、死亡診断書も書く。

顔を変えることに執念を燃やす女優のゆがんだ心理にメスを入れる。

美しすぎる看護師の早苗は夫のDVから逃げて顔を変えていた、ちょっと愉快な復讐譚もある。

というエピソードを挟みながら、さぁとミステリの核心が幕を開け、4年前の連続殺人犯を追う刑事が登場する。
新たに起きた殺人事件が、4年前に逃亡した犯人の手口だと確信する捜査一課殺人班の黒川刑事が事件を追っていく。

一方こちらでもニュースキャスターが今も事件の不審な点を解明しようとしている。彼は情報を得る目的で明日香に接触してくる。

明日香は犯人が柊の「弟子」だったということを聞かされ彼の過去に疑問を持つ。

タイに逃げた犯人とは知り合いだったらしい。顔を変えて逃がしたのか。

優秀な形成外科医だった犯人の神楽誠一郎は4年前、交通事故にあった女児に、すでに手遅れだと言われていたにもかかわらず違法な開腹手術をしていた。手術は上手くいって血管もつながり神業を披露したがやはり手遅れで子供が死んだ。
彼が務めていた病院は爆破されて当時の資料は消失してしまった。神楽は逃亡した。

殺人課の刑事とリポーターが柊と出会うときからストーリーにミステリアスな顔があらわれ、この物語が佳境に入るが、整形外科ということからも想像がつくように、どんでん返しというほどでない終盤にたどり着くのはあまり難しくない。

ただ、今風の会話や表現で、ちょっと感動的なエピソードもあって読みやすく、人気があるのもわかるような気がした。

いくつかシリーズになっているものがあるので、そちらから読めばもっと面白かったのではないかと少し残念な気がする。



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