最近読んでよかった本 その87 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった3冊を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

 

「法月綸太郎の冒険」法月綸太郎

名探偵「法月綸太郎」に挑戦するかのように起こる難事件が7つ。後半の4つは図書館シリーズです。どの作品にも個性があり、ミステリの醍醐味あふれた法月綸太郎にとって初めての短篇集です。

 

 

「向日葵の咲かない夏」道尾秀介

ミチオは小学四年生。両親と三歳の妹・ミカと一緒に住んでいる。夏休みを迎える終業式の後、欠席したS君にプリントと宿題を届けに家を訪れたミチオはそこでS君が首を吊って死んでいる姿を目撃する。すぐに担任の岩村先生に知らせに行き、先生と刑事がS君の家に駆けつけたところ、死体は忽然と消えていたのだ。その後、S君は蜘蛛に姿を変えてミチオの前に現れる。S君は「僕は殺された」と言い、ミチオとミカに「僕の身体を見つけて欲しい」と願い出る。S君の無念を晴らすため、ミチオは妹と共に事件を追い始める。サスペンス?ホラー?のようでいて、最後は全てにおいて覆されます。しかし、読む人によって何通りもの解釈が出来る不思議な話です。

 

 

「魔王」伊坂幸太郎

会社員の安藤は、国会議員の犬養が強烈な言葉で日本を掌握していくことに不安を覚えていた。ある時安藤は、自分の言葉を他人に喋らせる「腹話術」という能力が備わったことを自覚する。その力の可能性にかけ、安藤は犬養の演説の際に不適切な発言をさせ犬養の信頼を失墜させようとする。しかし、敵の妨害に遭いあえなく死んでしまう。安藤の弟、潤也はある時、当たりを引く能力が備わっていることに気づく。その力を武器に競馬を連戦連勝、その結果莫大な富を築く。そのお金を使って兄ができなかったこと、人の救いになることをしようと決心する。政治色が強い本作品は、明らかに小泉純一郎さんをモデルにしたと思われますが、実は小泉さんが総理になる前に書かれた作品であり、その姿を予見したものとして驚かされます。時代の預言者なのか、時代は繰り返すのか、伊坂さんらしくない不思議な小説です。