☆刺激周期採卵の採卵後のホルモン動態 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、刺激周期採卵の採卵後のホルモン動態について検討したものです。

 

Hum Reprod 2020; 35: 157(デンマーク)doi: 10.1093/humrep/dez235

要約:2016〜2017年に採卵し、全胚凍結を実施する方160名(18〜42歳、BMI<28)を対象に、アンタゴニスト法による刺激周期とし、トリガーにオビドレルを用いて採卵を行いました。トリガー直前、トリガー後12、24、38時間(=採卵後2時間)、採卵後1、2、3、4、5、6日目にホルモン採血(LH、hCG、E2、P4)を実施しました。なお、AMH>1.25、AFC 6個以上で開始し、卵胞3個以下と14mm以上の卵胞21個以上を除外しました。P4は採卵後1日目から上昇し、採卵後4日目をピーク(平均114 ng/mL)として減少しました。トリガー直前のP4値は、トリガー後12時間のP4値と有意な相関を認め、採卵後4日目のP4値とも有意に相関しました。一方、 LHはトリガー後12時間をピークに低下しトリガー後24時間までは検出されますが、その後基礎値に戻りました。また、E2のピークはトリガー後24時間と採卵後4日目の2箇所に認められ、hCGのピークはトリガー後24時間(平均130 IU/L)でした。

 

解説:採卵周期のP4は採卵前から出始め(Early P)短期間で消失するため、通常の生理周期より2〜3日短くなります。そのため、新鮮胚移植ではP4補充が必須になります。一方、自然周期でのP4値のピークは排卵後6〜8日目ですので、採卵周期では子宮内膜のスピードと胚のスピードが合わなくなる可能性があります。しかし、これまで刺激周期採卵の採卵後のホルモン動態についての検討はありませんでした。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、刺激周期採卵の採卵後のホルモン動態について検討したものです。P4は採卵後1日目から上昇し、採卵後4日目をピークとして減少するため、少なくとも採卵後7日目以降はP4補充が必須となりますが、個人差も大きいため、個別対応が望まれるとしています。