☆シフト制勤務や夜更かしで精子数が減少 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、シフト制勤務や夜更かしで精子数が減少することを示しています。

 

Hum Reprod 2020; 35: 1515(中国)doi: 10.1093/humrep/deaa101

要約:①2007年20〜41歳の男性1346名を対象に、シフト制勤務の有無と精液所見の関連について、横断研究を実施しました。②2013〜2014年に大学生の男性796名を対象に、休日と平日の睡眠時間の違いと精液所見の関連について、コホート研究(1年)を実施しました(MARHCSスタディ)。③8〜10週齢C57BL/6オスマウスをランダムに2群に分け(ライト照射を昼夜で分ける:8AM〜8PM群、8PM〜8AM群)、精子および精巣の状態を比較しました。①シフト制勤務の男性は、精子数が有意に減少していました(精子数12000万未満の方が1.26倍に有意に増加)。②休日と平日の睡眠時間の違いは0〜9.6時間で、時間の差があるほど精子数が有意に減少しました(1時間増えると精子数12000万未満の方が1.16倍に有意に増加)。また、睡眠習慣を一定にさせると精子数が回復しました。③夜型のマウスは昼型のマウスと比べ精子数が有意に減少しましたが、昼型に戻すと精子数も回復しました。夜型のマウスの精巣は、精細管のアポトーシスが有意に増加し、精子形成に関与する遺伝子が有意に低下していました。

 

解説:現代のライフスタイルでは、睡眠時間の変化が顕著にあります。シフト制勤務が増加しており、欧州や中国では10%以上の方がシフト制勤務に従事しています。また、携帯電話やインターネットの普及により、夜更かしをすることが多くなり、60%の方で休日と平日の睡眠時間の違い(遅寝遅起き)があるとされています。睡眠と女性不妊の関連は多数報告されていますが、睡眠と男性不妊の関連に関する報告はほとんどありません。本論文はこのような背景の元に行われた研究であり、シフト制勤務や夜更かしで精子数が減少することを示しています。動物実験も同時に行って検証しており、非常にエレガントな素晴らしい研究です。

 

下記の記事を参照してください。

2019.6.25「不眠と不妊:女性の睡眠障害は良くない

2019.3.23「夜勤で閉経が早まる!?

2018.4.12「男性は毎日8時間睡眠がお勧め

2015.6.6「職業や健康状態と精液所見の関連

2014.3.7「☆親の睡眠障害による子どもの性機能への影響