☆採卵の前周期のカウフマンは? その2 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

「採卵の前周期のカウフマン療法が良いとネットで見たのですが、正しいのでしょうか?」最近外来でよくある質問です。

 

採卵の前周期にカウフマン療法を行なっていたのは、20年以上前のことです。当時ロング法での採卵が主流であり、採卵周期の前はお休み周期になっていました。ここでピルやカウフマン療法を行うことで、日程の調整を図ったり、卵胞の大きさを揃えたりする目的で始まりました。

 

2014.6.8「Q&A369 ☆採卵の前周期のカウフマンは?」の記事でご紹介した内容を抜粋します。

ピルやカウフマン療法は、使用する薬剤や量が少し異なるだけで、基本的に同じものです。どちらも卵巣を休ませることになりますが、休ませたら良い結果になるとは限りません。卵巣を休ませると、原始卵胞からの卵胞供給を停止させることになります。たとえば、避妊目的でピルを使用した後には、ピルを中止してもすぐに妊孕性(妊娠できる力)が復活せず、3ヶ月ほど後に卵巣機能が回復します。この期間にAMHを測定すると低下しています。

 

2014.7.30「☆遅延スタート法」の記事でご紹介した内容を抜粋します。

ピルやカウフマン療法はE2(エストロゲン)とP4(黄体ホルモン)を含んでいます。FSHの高い方にはピルあるいはカウフマンを使用するという考えがかつての常識でしたが、卵巣予備能低下(卵巣反応不良)の方のFSHの強い抑制は卵巣機能を低下させてしまいます。卵胞が育つ範囲でのFSH抑制作戦として、E2製剤単独(あるいはアンタゴニスト製剤)の使用が望ましい治療です。

 

また、卵胞の大きさが揃った方が良い卵子が採れると考えられていましたが、その考えは最新の研究で否定されています。(2014.1.17「☆☆「良い卵子」とは?」を参照してください)

 

なお、「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編」によると、挙児希望のない月経周期異常に対してはカウフマン 療法(あるいはホルムストルム療法)を行うことを推奨しています。しかし、挙示希望のある方には推奨していません

 

以上を踏まえ、賢明な読者であれば、何が正しいかお判り頂けると思います。

論文などの根拠を示さない医師の発言(ネットや外来)に惑わされないようご注意ください。

 

下記の記事も参照してください。
2013.4.22「☆ホルモン剤(ピル)の使い方でAMHが半減?」
2013.5.14「☆体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その1」
2013.5.21「☆☆ピルのメリット」
2013.6.1「体外受精前周期のピル(OC)のメリット•デメリット その2」